Power Apps や関連の Power Platform のサービスをより手軽に始めるための新たな方法を発表します。本日より、プレビュー機能として月額のライセンスを購入する代わりに、Azure サブスクリプションを利用し、実際の Power Apps や Dataverse の利用量に対して支払う、従量課金型で使えるようになりました。
従来、ローコードのプラットフォームは事前に利用者の要件に合わせてライセンスの必要性を検討する必要があり、実際に購入できるまでに開発者やアプリ作成者、IT担当との間で発注を調整する必要がありました。ユーザー単位でのライセンスの方がよりスケールした利用ではメリットもありますが、従量課金型へ対応し、利用状況に応じた課金へのシナリオへの対応も必要でした。マイクロソフトでは Microsoft 365 の形態も Azure の形態もあり、Power Platform は今回どちらの形態も提供します。
今回新しく発表された従量課金プランにより、実際の利用量に合わせて課金されるため、ローコードを始めるにあたってより少ないリスクで手軽に始められ、その後利用状況が分かってから本格的に検討できるようになりました。
Azure サービスを活用する開発者にとっては便利なプラン
すでに開発するクラウドサービスのためにAzureサブスクリプションを持っている開発者にとっては便利なプランです。例えば Power Apps のモバイルアプリを作成し、それが Dataverse と Azure 上のAPIを利用していたとします。従来はMicrosoft またはパートナー会社からライセンスを購入し開発したアプリのためにライセンスを割り当ててもらう必要もあり、さらに別途Azure のサブスクリプションを別々で支払う必要がありました。この新しい Power Apps 従量課金プランであれば、すでにお持ちの Azure サブスクリプションを利用して、Azure のサービスも Power Apps も併せて支払うことができます。
お試しが気軽にできる
アプリを作る際にどれぐらい利用されるのかを事前に予測することは困難で、どれぐらいライセンスが必要か把握するのは非常に難しいことでした。この新しい従量課金プランにより、まずはお試しでどれぐらい利用されるのかのパターンを把握してから、月額課金プランに切り替えた方が良いかを判断することができます。
アプリ利用者が利用したときのみに支払う
例えば作られたアプリが組織全体で必要ではあるものの、たまにしか利用されないようなアプリがあったとします。人事評価アプリなどが良い例ですね。このような場合にはPower Apps の従量課金プランの方が、組織全員分に月額課金型を契約するよりも安く済むかと思われます。
組織でコストを共有
多くの組織では、ライセンスコストを特定の部署やチームにコストを負担させたいような要望があります。Power Apps 従量課金プランであれば、特定のチームに紐づいた Azure サブスクリプションを利用sることで、部門別のコストを分けたりなど、Azure コスト管理機能やタグ付けすることで可視化することができます。
従量課金の仕組み
Power Apps で従量課金を利用するには、アプリの入った環境に対してAzure のサブスクリプションを紐づけるだけで利用できます。その環境にある Power Apps と Dataverse は新しいAzure メーターを基に関連付けられたサブスクリプションに課金されます:
- Power Apps per app 従量課金メーター:このメーターはアプリを利用者が実行する場合に課金されます。これは特定の環境の特定のアプリの共有に対して(利用状況関係なく)事前に ライセンスを割り当てるPower Apps per app プランとは違います。
- Dataverse 従量課金メーター:このメーターはアプリによって利用されたDataverse のストレージ容量に対して課金されます。データベース容量、ファイル容量、ログ容量に分かれており、Azure へ紐づける環境1つにつき、既定で1GBのデータベース容量とログ容量がついてきます。
- Power Platform リクエスト数メーター:Power Platform における実行回数の上限はPower Platform ライセンスを対象に最近増加させました(以前APIリクエスト数上限と呼ばれていたもの)。ただし特定の利用者においてはその上限を超えるため、このPower Platform リクエスト数メーターで超過した分だけを支払うことができます。
詳細については各シナリオについてお話しているこちらのDocsをご覧ください。
Power Apps で従量課金を設定するには
従量課金を設定するにはPower Apps または Power Platform 管理センターから行えます。
始めるには以下が必要です:
- Azure のサブスクリプションへのアクセスと、そのサブスクリプションに対する新しいリソース作成への権限と、リソースプロバイダーへの登録権限。このような権限は通常「所有者」や「コントリビューター」の役割を割り当ててもらえていれば設定できます。Power Platform 従量課金を利用する前に、対象のAzure のサブスクリプションに対してPower Platform リソースプロバイダーとしての登録が必要です。
- Power Platform の環境に対する管理者権限
その後以下の手順をPower Apps またはPower Platform 管理センターから実行します。
Power Apps からの場合
Power Apps からアプリの「設定」を選択し「従量課金を設定」を選択します。画面から紐づけたいAzure のサブスクリプションを選択し、サブスクリプションの詳細を指定して「次へ」をクリックします。
Power Platform 管理センターから
Power Platform 管理センターから、管理者は課金ポリシーを作成・編集でき、複数の環境を同じAzure のサブスクリプションへ紐づけることができます。これは特定のチームの環境をそのチームのAzure のサブスクリプションへと集約する場合に便利です。Power Platform 管理センターから「ポリシー」を選び、「課金ポリシー」から「新しい課金ポリシー」を選択し、手順に沿っていくだけです。
コストの監視と管理
月額課金モデルから従量課金へ切り替える場合、どのようにコストを監視できるかが課題になります。Power Platform の従量課金を利用することで、様々な方法でコストの把握が可能です:
Azure コスト管理
Azure ポータルから、Azure コスト管理へアクセスすることで、課金状況を確認し、詳細なコストを把握することが可能です。
Azure コスト管理により、特定のメーターに対し予算を設定することができます。これらの予算はアラートを設定することができ、閾値も設けられます。また、特定の管理機能を自動実行させ、Azureの利用コストを管理することが可能です。
Azure タグ
カスタムタグをPower Platform を関連付けているサブスクリプションに追加することもできます。タグ管理はAzureでの管理をソリューション単位、部門、コストセンター単位などに分けるのに便利な機能です。
利用状況レポート
Power Platform 管理センターはダウンロード可能なレポートにより、どのユーザー、アプリ、環境がAzure のサブスクリプションへ課金したかの詳細を提供します。
月額プランと従量課金プランを合わせて利用する
従量課金は環境ごとに設定するので、組織内で場合によっては月額プランにした方がいい場合としない方がいい場合が出てきます。以下の例では組織は人事部に対しては従量課金で利用し、マーケティング部では月額プランを利用しています。
更に、従量課金環境では、特定のアプリに対してPower Apps per app 従量課金メーターの利用を無効化し、ライセンスのないユーザーからの利用をブロックすることもできます。
月額プランのPower Apps per app プランは従量課金のユーザーのライセンスとして利用することはできませんが、Power Apps per user プランであれば可能です。そのため、月額のPower Apps per user プランのユーザーと、従量課金のユーザーを同じ環境で混在させることができます。
今後の計画
これから先、Azure のサブスクリプションへ紐づけられるAPIを提供し、Power Platform Center of Excellence Starter Kitとの連携を考えています。長期的にはより多くのサービスを従量課金へ対応していくことを考えています。
Power Apps をより手軽に – Azure サブスクリプションから Power Apps の従量課金が可能には吉田の備忘録で公開された投稿です。