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米アリゾナ大学の研究チームは、骨に直接埋め込んで生体情報を得られるデバイス「Osseosurface electronics(骨表面エレクトロニクス)」を開発した。超薄型でワイヤレス、バッテリーも不要で、骨の成長と治癒具合を長期間モニターすることができる。骨のケガや手術後のリハビリを促進し、機能を引き出すと期待される。研究結果は、2021年11月18日付けで『Nature Communications』に掲載されている。

骨粗しょう症などに起因する脆弱性骨折は、心臓発作、乳がん、前立腺がんよりも病院で過ごす時間が長いともいわれている。研究チームが開発したワイヤレス骨デバイスの臨床試験や承認はまだだが、将来、健康管理だけでなく健康改善のためにも使われる可能性がある、とPhilipp Gutruf助教授は語る。

骨の周りには筋肉があって頻繁に動くため、骨に埋め込むデバイスは周辺の細胞を刺激したり剥がしたりしないように、十分薄くする必要がある。研究チームのデバイスは、紙と同等の厚みのため、骨のカーブに沿った接合面を形成できる。大きさは1セントコイン程度だ。

また、デバイスと骨を固着するための接着剤も開発した。従来、骨に使われる接着剤は、細胞の代謝のために数カ月で剥がれてしまうという欠点があるため、研究チームの接着剤は、骨の細胞に似た原子構造を持つカルシウム粒子を含んでいる。このため「骨がデバイスを骨の一部とみなし、センサー自身に成長する」と、Gutruf助教授は説明する。

さらに、一部のスマートフォンやICカードでも使われているNFC(近距離無線通信)を採用して、ワイヤレスデータ伝送を可能とし、ワイヤレス給電によりバッテリーも不要とした。

テストでは動物の骨にデバイスを埋め込み、骨の微小なひずみやミリケルビン精度のサーモグラフィーを測定したり、骨とその周辺の細胞に光刺激を伝達できることを実証している。光刺激は、骨再生のための光線療法や、筋収縮の光遺伝的活性化といった用途につながる。

この技術を活用すれば、筋骨格システムの機能を研究したり、骨の回復と治療を補助するツールを作製できる。例えば、骨折の手術時にデバイスを骨に接着すれば、医師は患者の治癒過程を観察し、プレートやネジといったインプラントを外す時期を決定できる。骨粗しょう症の患者には、骨の再生を促し骨密度を高める薬を処方することが多いが、こうした薬には副作用もあるため、綿密に骨をモニタリングすることで薬の用量も最適化できると期待される。

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