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10月1日が「国際コーヒーの日」ということもあって、本格的な秋の到来とともにコーヒー業界がザワついている今日このごろ。コーヒーといえば、今年は家電業界もかなりアツいのです。なぜなら、あのバルミューダがコーヒーメーカーを発表したから。その名も「BALMUDA The Brew(バルミューダ ザ・ブリュー)」! 価格は5万9400円(税込)で、2021年9月8日からバルミューダのオンラインストアで予約受付が開始されています(※)。

※10月2日時点では11月中旬出荷予定

↑「BALMUDA The Brew」のサイズは幅140×奥行297mm×高さ379mm(取っ手含む)、質量は約3.4kg。サーバー容量は約500ml、水タンク容量は約490ml

 

新製品体験会では、密を避けるためにテーブルに分かれて説明がなされました。GetNavi/GetNavi webチームを担当してくれたのは、開発のリーダー・太田剛平(たけひら)さん。根掘り葉掘り聞いたことを中心に、味わいのレビューなどもお届けします!

↑「BALMUDA The Brew」の開発リーダーはこの方。バルミューダの商品設計部、ソフトウェア設計チームマネージャーの太田剛平さんです

 

濃く淹れたコーヒーにあとからお湯を注ぐ手法を採用

BALMUDA The Brewが目指した味は「ストロング&クリア」。コーヒー豆が持つ香ばしさ、苦み、華やかさを引き出しつつ透明感のある余韻を生み出せるのが特徴とのこと。この味わいを実現するのが「Clear Brewing Method(クリア ブリューイング メソッド)」という独自の抽出法です。

↑ブランドロゴはあえて側面などには表記せず、注湯口の部分に

 

蒸気で包み込んで焼くトースターなど、これまでもバルミューダは既成概念にとらわれない斬新なプロダクトを世に送り出してきましたが、「Clear Brewing Method」もまさにそれ。特に、3/4ほどの湯量でコーヒーを抽出したあと、「バイパス注湯」という手法でコーヒーサーバーに残り1/4ぶんのお湯を注ぐ点がきわめてユニークです。

↑指を指している部分が「バイパス注湯」の経路

 

「ストロング&クリア」という言葉通りの味わいだった

抽出について、より具体的に見ていきしょう。「Clear Brewing Method」は3つのテクノロジーから成り立っています。1つは先述の「バイパス注湯」。もう1つは注湯温度の緻密な温度制御。そして、コーヒー豆の個性を引き出す0.2ml単位の正確なドリップです。

↑コーヒーの種類は、レギュラー、ストロング、アイスと3つのモードから選べます。1回の抽出における量は1~3杯

 

操作はシンプルで、ペーパーフィルター、挽いたコーヒー豆、水などをセットしたら電源を入れてモードと杯数を選びスタートボタンを押すだけ。前回の設定は記録しているので、同じでいいならよりスムーズです。電源を入れると同時に加熱が始まり、60~90秒で適正温度に。注湯口には5つの孔があり、そこからシャワーのようにお湯が噴出します。最初は杯数に応じて25~40秒蒸らし、その後じっくりと本抽出。

↑抽出中は古時計の振り子をイメージした「チックタック」という動作音が。抽出中はオレンジ色のランプが灯るのも特徴です。お湯はプロのハンドドリップのように少しずつ、インターバルをおいて注がれます

 

3/4が注がれると「バイパス注湯」の出番。こちらは真空二重構造のステンレス製コーヒーサーバーに対して注湯されます。

↑「バイパス注湯」を行っているところ。なお、「バイパス注湯」はレギュラーモードのみに適用され、ストロングは4/4すべてが濃いコーヒーの味に。さらにアイスは氷で満たしたグラスに抽出するため、より濃い味となります

 

抽出時間は杯数などによりますが、4~7分で終了。完了音が鳴って自動的に電源が切れますが、同時に内部の水分を飛ばすためのヒーター加熱なども行われます。この一連の流れのなかで細かい温度制御がなされ、注湯口では93℃から82℃まで徐々に温度を下げて抽出。ラストの「バイパス注湯」では86℃のお湯で仕上げていきます。

↑温度制御の一例。太田さんによると「従来のコーヒーメーカーの常識を覆す緻密な温度制御」とのこと

 

レギュラーで抽出した一杯を飲んでみると、ボディはこっくりしていて余韻はスムーズ。華やかな香りもしっかり感じられます。確かに「ストロング&クリア」というのも納得。今回使用した豆はスターバックスコーヒーの「TOKYO ロースト」とのこと。この豆はコクやまろやかさに特徴があるタイプで、「BALMUDA The Brew」はその個性をまっすぐ届けてくれたのではないかと思います。

↑浅すぎず、深すぎずのミディアムロースト。ビター感と華やかな香りをしっかり感じられます

 

おいしい部分を抽出し、雑味を排除するので豆の種類は選ばない

その後、開発のリーダー・太田さんがわが取材班のテーブルに来てくれたので、いろいろとお話をうかがいました。まずはドリッパーの話から。

 

「ドリッパーの形は、一般的に台形か円錐形の2つ。前者はお湯を溜めつつ出すのでゆっくり、後者は溜めずに出すので速いという特徴があり、『BALMUDA The Brew』は後者ですね。遅いか速いかは一長一短で、台形は雑味が出にくいのですが、豆本来のおいしさも出にくいんです。一方、円錐形はおいしさをダイレクトに出しやすいぶん、雑味も出てしまいがち。

 

この雑味を防ぐために、適切な湯量を適切なタイミングでコーヒー豆に注げるよう、ソフトウェア制御でしっかりコントロールしています。温度管理もそうですね。いかにコーヒー豆のおいしい部分だけを抽出できるかを考えて、ネガティブな風味が出る温度までは上がらないようにしているんです」(太田さん)

 

このほか、味の劣化につながるためにサーバーを保温する機能をカット。そのぶん真空二重構造のステンレスを採用し、事前にスチームで温めることで温度の低下を抑えたことも隠れたポイントなのだとか。

↑円錐型のドリッパーを手にする太田さん。ちなみに、ぺーパーフィルターの端のほうにお湯がかかると、そこからお湯が抜けてしまうため注意が必要。その点、「BALMUDA The Brew」では、端にお湯がかからないようしっかり制御されています

 

筆者が気になったのは、豆の個性をどう生かすのか? というところ。例えば、今回のスターバックスの豆より酸味が豊かで、フルーティな豆を使った場合はどうなるのでしょうか?

 

「『BALMUDA The Brew』は豆の種類も焙煎の浅深も選びません。なぜなら、コーヒー豆のおいしい部分を抽出し、ネガティブなえぐみや雑味を排除するのが『Clear Brewing Method』だからです。酸味の豊かな浅煎りのタイプは、より繊細かつエレガントな味で抽出してくれますよ」(太田さん)

 

開発者はもともと筋金入りのコーヒーマニアだった!

ところで太田さんは、本機を開発するにあたってコーヒーについて勉強したのでしょうか?

 

「私がもともとコーヒー好きなんです。ハマり始めたのは中学生ごろからで、この10年ぐらいで焙煎もやるようになりました。個人所有は家庭用のロースターですが、プロ用の焙煎機を持っている友人がいまして、それを使ってロックフェスでコーヒーショップを出店したこともあります。海外のコーヒーの産地も訪れましたし、あくまでアマチュアですが、実はカッピング(コーヒーの香りや味を評価すること)の資格を持っているんですよ」(太田さん)

↑「BALMUDA The Brew」の目指す味として、どこかの喫茶店をベンチマークはしていないと太田さん。むしろさまざまな店を飲み歩いて、よりコーヒーの奥深さを学んだと言います

 

なるほど、プロジェクトが始まるはるか前から筋金入りのコーヒーマニアだったんですね! コーヒーメーカーの開発には、この上ない適任だというのがよくわかりました。

 

「もともとコーヒーメーカーの構想は2015年発売の『BALMUDA The Toaster』のときにはすでにありましたが、難航をきわめて時間がかかりました。ということで、コーヒー関連では先に『BALMUDA The Pot』が世に出たんです。今回の『BALMUDA The Brew』が本格始動したのは2019年ごろ。約2年半かかりました」(太田さん)

↑こちらはアイスで抽出。水出しで淹れたかのようにスムースで、深みがありながらもゴクゴク飲める軽快さがありました

 

外観やサイズ感のこだわりについては、まず抽出の所作を目で直接楽しめるようオープンスタイルにしているとのこと。また、キッチンなどにもすっきり置けるよう、横幅はスリムな14cmに収め、そこから抽出量を計算していまの高さにしているといいます。

 

いろいろ話を聞くと、やっぱりバルミューダのプロダクトは見どころが多くて面白い! 10月7日からは、バルミューダ製品の正規販売店にて順次販売を開始するとのことなので、ぜひチェックしてみてください。