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毎年、11月の感謝祭翌日の金曜日に開催される大規模セール「ブラックフライデー」は、欧米(西ヨーロッパ諸国)だけでなく、いまやロシアでも大きなイベントとなっています。ただ、ロシアのブラックフライデーは店舗やサイトによって開催日や開催期間がそれぞれ異なり、フライデーの意味は完全に失われている模様。消費者にとっては情報収集にも一苦労ですが、ロシアのブラックフライデーはどういった仕組みになっているのでしょうか?

↑モスクワのショッピングセンターにおけるブラックフライデーの様子(2020年撮影)

 

ロシアのブラックフライデーは、2013年にオンラインイベントとして初めて導入されたようです。今日では欧米と同様に実店舗でも開催されていますが、国民の間ではオンラインイベントとしての認識が高い様子。それもあってか、ロシアのブラックフライデーではショッピングセンターなどの店先で行列を見かけることはありません。

 

ロシアのブラックフライデーの大きな特徴は、開催日が決まっていないこと。店舗やオンラインショップは10月から11月にかけて、それぞれ異なる日付に開催します。さらに、開催期間が長いこともロシア版ブラックフライデーの特徴。本来であれば感謝祭の翌日だけのはずですが、ロシアではその前後1週間から1か月間も開催されているのです。

 

2021年のブラックフライデーの場合、例えば、家電量販店のエムビデオは10月22日から11月29日、化粧品店のレトゥアーリは10月30日から11月30日、通信サービスのビーラインは11月2日から11月29日までを開催期間に設定しました。これらは一例ですが、各企業によって開催日や期間が異なっているのが見てとれます。

 

開催日がさまざまなロシアのブラックフライデーを攻略するためには、事前準備が必要です。最重要事項は、異なる開催日時と開催期間を把握すること。これらの情報は「ブラックフライデーセール・ドットル」というECサイトで一覧できるようになっており、比較的簡単に確認できます。また、メール購読の登録をすると会員専用のニュースレターが届き、参加店舗の最新セールリストをはじめ、販売される商品や割引のプレビューなど、役立つ情報を受け取ることができます。

 

ロシアにおけるブラックフライデーの落とし穴

欲しいものが安く買えるという消費者に有利であるはずのブラックフライデーですが、ロシアでは注意すべき点がいくつかあります。日刊メディアのコムソモリスカヤ・プラウダ新聞のブラックフライデーに関する記事によれば、一部の企業はブラックフライデー前に商品価格を上げておき、開催当日に元の価格に戻すことで、あたかもセールのように見せかけることがあるとのこと。消費者は夏の終わりから秋にかけて欲しい商品の通常価格を確認しておくことで「騙される」のを防ぐことができる、と同記事は述べています。

 

さらに、ブラックフライデーが在庫処理に使われることや、悪徳な企業の場合は不良品や賞味期限切れの商品を出していることもあるそう。購入後は、食品ならば賞味期限を、電化製品ならば作動状態を速やかに確認することが重要といえます。

 

また、セール時は返品規定も通常時とは異なる場合があるので、事前に確認しなくてはなりません。ロシアの消費者にとっては、購入前の事前情報収集から購入後の確認までがブラックフライデーと言っても過言ではないでしょう。

↑ブラックフライデーだからといって本当に安いとは限らない

 

ロシア版サイバーマンデーは1月末の開催

欧米ではブラックフライデーの後に来る月曜日が「サイバーマンデー」になっていますが、ロシアではこのイベントも1月末に開催されるうえ、3日間も続きます。

 

ロシアのサイバーマンデーが1月末に開催される理由は、ロシアの消費マーケットの動きに関係しています。ロシアではブラックフライデーが11月末に一通り終わると、年末年始のセールが始まります。そういったセールが終わり、消費需要が最も低くなるのが1月末以降なのです。同じような光景は日本の百貨店でも見られますね。

 

また、ロシアの正月休みは通常1月10日までで、年末年始の休暇が終わったころには事前に用意した食料品や飲み物も食べきり飲みきってしまいます。そこで「ちょうど冷蔵庫に何もなくなる1月下旬に消費需要を生み出そう!」とマーケターたちが閃いた結果、ロシアのサイバーマンデーは1月末に開催されるようになりました。この一見強引ながら現実的な考え方は、日本の小売業界にとっても参考になるかもしれません。

 

コロナ禍でオンラインショッピングの需要が高まり、2021年は選択肢がより一層広がりました。広告会社のクリテオロシアは、2021年のブラックフライデーと来年のサイバーマンデーは、コロナ禍で売上が落ちた企業にとって大きなチャンスなので、かつてないほど盛り上がるだろうと予測。ロシアの消費者は、長期間にわたってセールを楽しめそうです。