Windows 11は最小要件が厳しいため多くのパソコンがアップグレードできません。ただし、クリーンインストールする場合は最小要件による制限はかからないとのことですが、稼働しているシステムで試すのはリスクが高いでしょう。
USBメディアから起動することで、稼働中のWindows 10マシンでWindows 11を試す方法について説明します。
Windows to Go
WindowsにおいてUSBメディアから起動する手段として「Windows to Go」というものがありました。
- Windows to Go(Microsoft)
「Windows to Go」はWindows 10 EnterpriseとWindows 10 Educationで提供されていた機能です。稼働しているWindows 10システムをUSBメディアに入れて持ち出し、出先のパソコンで利用できるというものです。
業務用途に作られていたようで高価な専用USBメディアが必要で、企業や教育関係者しか使えないエディションにしか提供されていない機能でした。そのためWindows 10 Pro/Homeを使う一般ユーザーには馴染みがないものです。
「Windows to Go」はWindows 10 バージョン2004で廃止されました。多くの専用USBメディアが販売終了しているという点もありますが、大きな理由は作成した「Windows to Go」システムを更新できないため、セキュリティの問題があるためと思われます。
「Windows to Go」メディアで起動したパソコンでは、パソコンに接続されたストレージはアクセスできなくなります。また、稼働しているWindows 10パソコンに「Windows to Go」メディアを接続しても「Windows to Go」メディアにはアクセスできません。これは接続したパソコンからのウイルスなどの感染や情報漏洩などのコンプライアンスの問題を回避するための仕様でしょう。
そのため「Windows to Go」メディアを更新するためには作成し直す必要がありました。
EaseUS OS2Go
似たようなアプローチの製品としてEaseUS OS2Goという製品があります。
説明ではWindows to Goと言っていますが別物です。
基本動作は稼働しているWindowsシステムのクローン作成です。ただし、予約パーティションや回復パーティションはコピーされず、EFIパーティションとシステムパーティションだけがコピーされます。
Windows 11にインストールすればWindows 11システムのクローンができますので、他のパソコンに接続することで、Windows 11にアップグレードしなくても起動することができます。そして外せば今まで通りWindows 10を使えます。
試しにWindows 11をインストールしたパソコンがあれば、USBメディアを作成して別のパソコンの環境を変更せずにWindows 11を試すことができます。
OS2GoでのWindows 11起動メディアの作成
OS2Goを使ってWindows 11起動メディアを作成する手順について説明します。
1.用意するもの
Windows 11起動メディアを作成するにはそれなりの準備が必要です。
- Windows 11がインストールされたパソコン
- 高速なUSBメディア
- EaseUS OS2Go
OS2Goはシステムのクローンを作成するため、稼働しているWindows 11パソコンが必要です。システムがそのままコピーされるので多くのアプリがインストールされている場合は、それだけ大きな容量のUSBメディアが必要になります。
Windows 11をインストールしたパソコンが無い場合は、知人に作成してもらうこともできます。その場合は注意点がありますので別項目で説明する注意点を参照してください。
USBメディアで起動するためには高速なUSBメディアが必要です。特にランダム書き込み速度が速いものがよいでしょう。容量はシステムの使用容量より大きな容量が必要です。
OS2Goは試用版では起動USBメディアを作成できません。ただし一度作成してしまえばWindows Updateを実行可能なので、更新のために再作成する必要はありません。
2.EaseUS OS2Goのインストール
こちらからEaseUS OS2Goの無料体験版をダウンロードします。
ダウンロードしたファイルをダブルクリックしてインストールを始めます。
言語を選択して「OK」をクリックします。
使用許諾契約書に同意する場合は「同意」をクリックします。
インストール先はデフォルトのままで「次へ」をクリックします。
追加タスクの選択で不要な項目のチェックを外して「次へ」をクリックします。
インストールが完了するのを待ちます。
インストールが完了したら「完了」をクリックします。
3.USBメディアの作成
デスクトップのアイコンまたは、スタートメニューからEaseUS OS2Goを起動します。
無料体験版として使う場合は「後で」をクリックしますが、その場合はUSBメディアを作成できません。一度作成してしまえばWindows Updateが使えますので「1ヶ月間」のライセンスでも十分でしょう。
Windows 11上で起動するとこの画面となります。作成するUSBメディアは稼働しているWindowsのクローンとなるため、Windows 11のUSBメディアを作成するにはWindows 11上で起動する必要があります。
システムの使用サイズが表示されているので、このサイズより大きな容量のUSBメディアを用意します。容量は空き容量ではなくUSBメディア全体の容量です。
この例ではWindows 11 Build 22000.132をISOでクリーンインストールしてからBuild 22000.168にアップデートした環境です。Windows 11以外にはOS2Goだけインストールした環境の使用サイズです。
USBメディアをUSBに接続したら「交換性があるUSBドライブは検出されません」という部分をクリックします。
USBメディアが確認されます。
このような表示が出た場合は容量不足なので、より大きな容量のUSBメディアを用意します。「未割り当て領域」とありますがパーティションサイズとは関係ありません。
問題が無ければ「次へ」をクリックできるようになるのでクリックします。
USBメディアはパーティションが切り直されるため、記録されているデータはすべて消えます。「確認」をクリックします。
USBメディアがSSDの場合は「ターゲットディスクがSSDな場合、オプションをチェックします」をチェックします。
それ以外はデフォルトのままで「実行」をクリックします。
USBメディアの作成が完了するのを待ちます。
USB 3.1(Gen 1)対応のUSBメディアでは作成に1時間ほどかかりました。
USB 3.0接続のポータブル2.5インチHDDでは作成に7分ほどかかりました。
作成が完了したら「完了」をクリックすると、元の画面に戻りますのでOS2Goを終了して、Windows 11パソコンをシャットダウンしてからUSBメディアを外します。
なお、作成されるUSBメディアはこのようにEFIシステムパーティションとWindows 11の本体がインストールされるパーティションの2つのパーティションしか持ちません。予約パーティションや回復パーティションを持たない点が通常のシステムと異なります。
4.ターゲットパソコンでのUSBメディアからの起動
OS2Goを実行したパソコンがシャットダウンされていることを確認します。
ターゲットとなるパソコンのUSBにUSBメディアを接続して、USBメディアから起動させます。
通常はUSBにUSBメディアを接続して起動しても、USBメディアからは起動しません。USBメディアから起動する方法はパソコンによって異なりますので、パソコンのマニュアルなどで確認してください。
起動ドライブとパーティションを選択する画面が表示された場合は、USBメディアのメーカー名などで判断してください。
同じドライブで2つのパーティションが表示される場合は番号の小さい方を選択してください。
起動するとターゲットとなるパソコンの環境に合わせてドライバーが組み替えられます。そのため、初回の起動は時間がかかります。
何度か再起動するとOS2Goを実行したパソコンと同じサインイン画面となるのでサインインします。
5.USBメディア環境の修正
このまま実行しているとOS2Goを実行したパソコンと競合してしまうので、以下の設定は変更する必要があります。
- コンピューター名
- DHCPを使っていない場合は固定IPアドレス
これでターゲットパソコンでWindows 11を試せることになります。
注意点
USBメディアの作成や利用についての幾つかの注意点があります。
ウイルス感染、情報漏洩の危険性
Windows to Goとは違い、ここで作成したUSBメディアで起動した環境では、パソコンに内蔵されたストレージにアクセスすることができます。
そのため、起動しなくなったWindowsの修復なども行えますが、反面、ウイルスに感染させたり、情報を盗み出すこともできてしまいます。内蔵されたストレージを暗号化しておくことで情報漏洩は防げますが、ランサムウェアなどで暗号化されてしまうと元に戻せなくなる危険性があります。
パソコンに内蔵されたストレージにアクセスする場合は注意してください。
更新プログラムの適用
Windows 11に限らず、Windows 10/8.1/8/7でもUSBメディアを作成できます。
そのUSBメディアを持ち歩いて本格的に使う場合は、Windows Updateを実行してUSBメディアのWindowsを更新することを忘れないでください。
Windows 11のライセンス
USBメディアにはライセンス認証された状態のWindows 11がコピーされていますが、一度でも別のパソコンで起動することでハードが変わったと認識され、ライセンス認証されていない状態となります。
そのため、いくつものUSBメディアを作成しても問題ありません。OS2Goで作成するUSBメディアの数は制限されていません。
ただし、USBメディアのWindows 11と同じエディションのWindows 10で認証されているパソコンなら、デジタルライセンスで認証された状態となります。
同様にOfficeなどもライセンスが外れるため、Microsoft 365のように無制限ライセンスでない限り使えません。
USBメディアの選定
OS2Goで作成されるUSBメディアはWindows to Goとは異なり、Windowsそのものです。そのためWindowsの起動時に大量のランダム書き込みが発生するため、ランダム書き込み速度が速いUSBメディアを使うようにしてください。
これはUSB 3.1(Gen 1)対応のBUFFALO RUF3-K64GB-WHという製品のベンチマーク結果ですが、起動後6時間ほど待っても操作できる状態になりませんでした。
こちらは東芝の2.5インチ1TB HDDをUSB 3.0のケースに入れて使った場合です。遅いですが我慢すれば使える状況です。
USB接続のSSDが一番良いのでしょうが、値段も高いので操作性なども考慮して選択してください。
Bluetooth周辺機器は使わない
USBメディアから起動した環境では、ターゲットとなるパソコンで使用しているBluetooth周辺機器は使わない方がよいでしょう。
元の環境で起動した場合にペアリングが外れてしまう場合があります。
USBメディアの作成を代行する場合
パソコンを複数台持っていて、更に、Windows 11をインストールできる手ごろなパソコンが無いと、USBメディアを作成できません。
そのため、知人に作成を依頼する場合は、作成を依頼された方は次の点に注意してください。
- できるだけWindows 11だけがインストールされた環境をコピーする
- できるだけローカルアカウントで作成する
- 渡す前にUSBメディアのサインイン・アカウントを変更しておく
- 不要なアプリは削除する
まとめ
Windows 11はアップグレードでは最小要件で跳ねられますが、ISOファイルからのクリーンインストールなら、どのパソコンでもインストールできるそうです。
最小要件を満たしていなければ高度なセキュリティ機能などは使えず、外観だけしか変わらないのですが、それでも最新Windowsを使っている気にはなれます。
今の環境を壊さず、Windows 11を試せるこの方法は、実際に何台かのパソコンで試して結構便利に思えました。
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