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空間光変調器(SLM)は、ホームシアター用プロジェクターからレーザーイメージング装置、光コンピューティングまで、多くの光学装置に用いられる一般的な部品だ。SLMは、光源からの光の空間的な分布(振幅、位相、偏光など)を電気的に制御することにより、光を変調させる。現在、SLMの大半は、変調の制御を機械的な可動部分が担うため、装置が大きくなるとともに、制御が遅くなる点が課題になっている。

ハーバード大学とワシントン大学の共同研究チームは、この課題を克服するため、単純な構造のSLMを開発した。電気信号に応答して光特性が変化する電気光学材料の薄膜に覆われた金電極を使っている。イメージング、バーチャルリアリティー、量子通信、センシングなど、幅広い分野で利用できると見込まれており、よりコンパクトで高速かつ精密なSLMを開発する一助になると期待されている。

このSLMに用いられた電気光学材料は、ワシントン大学で合成されたものだ。電気信号が加えられたとき、屈折率が変化する特性がある。その材料をピクセルに分割し、それぞれのピクセルに電極を接合することで、各ピクセルが個別に駆動し、光を変調することができる。

そのため、非常に小さな電力で、デバイスは各ピクセルにおける光度を個別に大きく変えることができる。スペクトル全体にわたり効率的に光を変調することが可能となる。

研究チームは開発したSLMを、シングルピクセルイメージングにより画像投影やリモートセンシングに用いた。「今回のわれわれの研究は、イメージングやリモート制御、環境モニタリング、補償光学、レーザー測距などに広く応用できる。ハイブリッド有機ナノ構造電気光学の将来有望な分野の端緒を開くものになると思う」と研究チームのハーバード大学Federico Capasso教授は語っている。

この研究成果は、2021年10月11日付のNature Communication 誌に掲載されている。

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Bridging optics and electronics

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