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ナレッジワーカーが職場のコラボレーションアプリに求めているものの基準を、さまざまな意味で打ち立ててきたのがSlack(スラック)だが、現場の作業員に関してはこれまであらゆるものが見過ごされてきた。このような最前線で働く人々が会話に参加できるような人気アプリを開発したソフトウェア企業の1つが今日、より多くの機能を提供するための資金調達ラウンドを発表した。

最前線で働く人やサービス業に従事する人たちがタスクを管理したり、お互いや経営陣とコミュニケーションをとったり、さらにはトレーニングや育成などのeラーニングを行うためのアプリを提供するYoobic(ユービック)が5000万ドル(約55億円)を調達した。

Highland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)がリードした、シリーズCとなる同ラウンドには、以前からの投資家であるFelix Capital(フェリックス・キャピタル)、Insight Partners(インサイト・パートナー)や、BNF Capital Limited(BNFキャピタル・リミテッド)がアドバイザーを務めるファミリーオフィスも参加(FelixはYoobicのシリーズAを主導し、Insight Partnersは2019年のシリーズBを主導した)。Yoobicは評価額について公開していないものの、信頼できる情報源から聞いたところによると、現在は3億ドル(約330億円)から4億ドル(約441億円)の間だそうだ。

今回の資金調達は、同社が飛躍的な成長を遂げる最中に実現した。

世界80か国の大手ブランド約300社と取引のあるYoobic。小売業、接客業、流通業、製造業などの分野で33万5000もの拠点をカバーしている。顧客には薬局チェーンBoots(ブーツ)、スーパーマーケットのCarrefour(カルフール)の他、Lancôme(ランコム)、Lacoste(ラコステ)、Logitech(ロジテック)、Peloton(ペロトン)、Puma(プーマ)、Vans(ヴァンズ )、VF Corp(VFコーポレーション)、Sanofi(サノフィ)、Untuckit(アンタックイット)、Roots(ルーツ)、Canada Goose(カナダグース)、Longchamp(ロンシャン)、Lidl(リドル)、Zadig & Voltaire(ザディグ・エ・ヴォルテール)、Athletico(アスレチコ)などが名を連ねている。

しかしこれは氷山の一角にすぎない。世界には27億人の「デスクレス」(現場およびサービス)ワーカーがいると言われており、世界の労働力の80%以上を占めている。しかし驚くべきことに、IT予算のうちデスクレスワーカーのために使われているのは、わずか1%にすぎないというのだ。これはスタートアップにとって、この分野に進出する大きなチャンスがあることを意味している。ただし、スタートアップ(またはデスクレスワーカー自身)が、財布の紐を握っている人々にその投資価値を納得させることができればの話である。

そのため今回の資金調達は、人材の採用、地理的な拡大(同社はロンドンで設立され、現在はニューヨークに本社を置く)、製品の拡大に充てられる予定だ。具体的にはより高い予測分析機能を構築して応答性を向上させ、企業の使用状況についてより多くの情報を提供し、また製造業、物流、輸送など、最前線での仕事の世界における特定の分野に対応するツールをさらに構築しようと計画していると、YoobicのCEOで共同創業者のFabrice Haiat(ファブリス・ハイアット)氏はTechCrunchのインタビューで話している。

Yoobicは数年前、小売業に特化する事業として開始した。この分野は前回の2019年のラウンドの時点でも集中的に取り組んでおり、マーチャンダイジングや店舗間の在庫に関するコミュニケーションなどを支援するツールを提供していた。今でも小売業は同社のビジネスの大部分を占めているが、小売業と同じようなニーズを持つ、フロントラインやサービス関連の従業員を抱えるより幅広い業種に進出するきっかけを同社は見出したのだ。

これはパンデミック渦にはなんとも幸運な方向転換となった。

「新型コロナウイルス(COVID-19)は我々に多大な影響を与えました」と、兄弟のAviとGillesと共同で会社を設立したハイアット氏は振り返る。「最初の2カ月間はパニック状態でした。しかし、現場の従業員が業務の成功に不可欠であることに企業が気づいたのです」。

新型コロナウイルスが到来して以来、プラットフォーム上のアクティビティは200%増加し、2021年初めにはプラットフォーム上での月間アクティビティ数が100万を超えたという。「狂ったように成長している」とはハイアット氏の言葉である。

フロントラインワーカーのためのソフトウェア開発が重要である理由はいくらでもある。最前線で働く人々は固定デスクを持たずに動き回り、スクリーンを睨んだり会議に出る代わりに顧客と長時間接し、また全般的に優先事項や慣習が異なるため、デスクワーカー向けに作られたソフトウェアが必ずしも彼らにフィットしないというのは当然のことである。

実際、この隙間を埋めるためのサービスを構築しようと試みる企業は何年も前から存在する。そして現場の人々のための優れたツールを開発している企業の中には、市場を統合しようとする興味深い動きが複数ある。Crew(クルー)最近Square(スクエア)に買収されServiceMax(サービスマックス)はZinc(ジンク)を買収。また、Facebook(フェイスブック)のWorkplace(ワークプレイス)は現場で働く人々のための強力なコミュニケーションプラットフォームとして、世界の大企業を顧客として獲得しようと性を出している

これらはいずれもすばらしい動きではあるものの、現場が本当に必要としているツールの全容を理解しているとは言えないとハイアット氏は主張する。そのツールとは、実用的な機能(在庫管理など)から、従業員に簡単に提供することができるなら欲しいと企業が思うような機能(専門的な育成やトレーニングなど)までさまざまだ。そういった意味では、現在のフロントラインワーカー向けアプリが提供する基本的なコミュニケーションツールは、ほんの駆け出しのようなものである。

市場のギャップとそれを解決するために何が必要かをよく理解することができたため、同社は投資家の関心を集め、大きな成長へとつなげることができたのだろう。

Highland EuropeのパートナーであるJean Tardy-Joubert(ジャン・タルディ=ジュベール)氏は次のように話している。「Fabrice、Avi、Gillesが率いるすばらしいチームのおかげで、Yoobicはデジタルワークプレイス分野のリーダーとしての地位を確立し、市場けん引力を発揮して目覚ましい成長を遂げています。そのため彼らと提携できることを非常にうれしく思っています。企業はこれまで、デスクワークをする従業員のためのデジタル投資に注力してきましたが、世界は今、分散化、非集中化にシフトしつつあります。私たちは巨大なリソース、テクノロジー、資本が現場チームに向けてシフトするような、劇的な変化が起こると予測しています」。タルディ=ジュベール氏は今回のラウンドでYoobicの取締役に就任する予定である。

画像クレジット:Thomas Barwick

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)