2021年上半期、韓国ドラマ界の話題を独り占めした『ヴィンチェンツォ』。多くの女性が主演のソン・ジュンギに骨抜きされたはず! ソン・ジュンギを好きになったあなたに韓流ナビゲーター・田代親世さんがおすすめするソン・ジュンギ作品をご紹介! 年末年始にぜひご覧ください。
悪をやっつける優男の姿にすっきりする『ヴィンチェンツォ』
◆韓国社会にはびこっている悪には、ダークヒーローでないと
悪をもって悪を制す、ダークヒーローの物語です。今まで正義のヒーローは人を殺さないという不文律のようなものがあった。でも、今回はその一線を超えちゃったね! という感じです。
主人公のヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)を、イタリアで育ったマフィアの顧問弁護士という設定にして、エクスキューズを設けた感じがします。そうでもしないと、今、韓国社会にはびこっている悪は排除できないという気分なのかもしれません。ドラマの悪もほんとに悪い奴。それがやっつけられたのを見てみんなが溜飲をさげました。
◆正義だけでは勝てない時代のヒロイン。父役はあの人
ヴィンチェンツォのキャラクターは、軽妙洒脱。ちょっとおしゃれで、センスもテンポもよくて余裕をかまして冗談を言ったりしてるんだけど、やるときはやる。容赦ないのが、観ていて快感なんです。彼も、ヒロインの女性弁護士ホン・チャヨン(チョン・ヨビン)も、言いたいことを言ってやりたいことやる。
ヒロインの父のホン弁護士が言うんですよ。時代は変わった。正義だけでは勝てなくなった。厳しく、強く、ずるがしこく戦うべきだ。それにうってつけなのが俺の娘なんだと。純粋なだけじゃなくて、したたかでもある。そうじゃないと、この世は戦えないという新しいヒーローヒロイン像が小気味いいんです。
ちなみに、ヒロインのお父さんを演じているのは、ユ・ジェミン。『梨泰院クラス』主人公の敵である巨大企業会長役の怪演でおなじみですね。今回は真逆のキャラ。どこまでも弱者の味方をする弁護士役としていい味を出しています。
◆じんわりくるところも、ラブラインも
取り壊されそうなビルに居座り、後にヴィンチェンツォの仲間となっていく個性豊かな住民の活躍も見逃せません。回を追うごとに、ヴィンチェンツォと住民たちの心が繋がり、チームとなって悪と戦っていくのが面白い。制作は『愛の不時着』をはじめ、ヒット作を連発しているスタジオドラゴン。不時着でおなじみのメンバーも活躍しています。実の親とのシーンなど、じんわりくる人間ドラマ要素も、ラブ要素もしっかり入っていますよ。
『トキメキ☆成均館スキャンダル』から『私のオオカミ少年』『優しい男』まで
ソン・ジュンギといえば2010年の『トキメキ☆成均館スキャンダル』。このドラマで、パク・ユチョン、『地獄が呼んでいる』のユ・アインとともに大人気になりました。成均館でのソン・ジュンギは、他の二人に比べて線が細くてちょっとシニカルという、彼のビジュアルから納得できる役どころでした。
2012年に、ソン・ジュンギは再びブームになります。映画『私のオオカミ少年』では、いたいけな無垢な少年らしさがぴったりでした。ドラマ『優しい男』は復讐していく役で、クールに抑えた表情の中に愛蔵がうごめく心情をにじませて、見事なイメージチェンジを図っていきました。
『太陽の末裔』で3度目のブーム
◆軍人役のふたを開けてみたら、美しい豹みたい
ソン・ジュンギの次のブームが、2016年『太陽の末裔』。兵役後の初作品です。最初、特殊部隊の軍人役だと聞いたときには、線が細いイメージがあったので、彼に合うのかなと思いました。でもふたを開けてみたら、すごく素敵に演じていて。
『太陽の末裔』は架空の異国の土地を舞台に、そこに派遣された軍人と女医が極限状態の中でお互いの使命を果たしながら愛をはぐくんでいくというヒューマン・ラブストーリー。どんな危険からも助ける。飄々としながらも守ってくれる。外柔内剛みたいなところが、あのきれいな顔だからこそ際立って。
このドラマは、ソン・ジュンギがいかに素敵だったかというのにつきます。それまではミルクボーイみたいな感じだったのが、しなやかな美しい豹みたいになったんですよね。
能面のような顔が、底知れぬ恐ろしさを
ソン・ジュンギは、顔のいい二枚目俳優が年齢を経てどうなっていくかという課題の成功例になりました。しわなんかなくて、つるんと白くて、年輪が出ない公家顔。それを能面のように感じさせて、底知れぬ恐ろしさが出たヴィンチェンツォにはハマっちゃいました。ギャップがいいんです。あのやわな優男っぽい顔をしていながら、爆破テロだったり脅迫だったり。ソン・ジュンギの清潔感で薄まるさじ加減も絶妙です。
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『ヴィンチェンツォ』は2021年上半期最大の話題作となりました。田代さんが、ここまで来たか、また来たかという、ブームのソン・ジュンギ。飄々とした優男の外柔内剛をたっぷり楽しめます。
取材・文/新田由紀子