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共同通信社

自民党の岸田文雄総裁(64)は4日午後、国会で指名を受け、憲政史上の節目となる第100代目の首相に就任した。首相は同日夕に組閣を終え、岸田内閣が発足した。

岸田首相は首相官邸で開いた会見で自らの内閣を「新時代を共につくる新時代共創内閣」と表現し、喫緊の課題と捉える新型コロナウイルス対策、経済政策に取り組む考えを示した。

会見では、ポスト・コロナ時代を見据えながら、経済政策に力を入れる考えを強調。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うデジタル化の加速と言った社会変革を引き合いに、経済・社会ビジョンを策定し具体的な政策を作り上げる「新しい資本主義実現会議」を立ち上げると説明した。

外交面では、北朝鮮による拉致問題について最重要課題との認識を示した上で「条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う覚悟」と語った。また、「核兵器のない世界に向けて全力を尽くす」と述べ、被爆地・広島出身の総理大臣として核廃絶への思いを明らかにした。

会見の最後、政府の進行役の男性が報道陣に会見の終了を告げる中、フリーランスの男性記者が「すみません」と大きな声を出し追加の質問を投げかけようとすると、岸田首相が「はい。どうぞ」と応じる一幕もあった。岸田首相は先月29日の自民党総裁への就任会見で、「記者の皆さんの後ろには国民の皆さんがいる」と報道対応への心構えを述べていた。

今回の組閣では、全閣僚20人のうち初入閣が13人を占めた。女性は3人で、総裁選を争った野田聖子衆院議員を地方創生や少子化、男女共同参画、子ども庁の担当相に起用した。

岸田首相は、歴代最長の7年9ヶ月在職した安倍晋三・元首相に続く菅義偉・前首相の後継で、首相としては64人目の就任となる。会見では、臨時国会の会期末にあたる今月14日に衆議院を解散し、19日公示、31日投開票の日程で衆院選を行う意向を明言した。

閣僚名簿は次の通り。

役職 名前
内閣総理大臣 岸田文雄
総務大臣 金子恭之 初入閣
法務大臣 古川禎久 初入閣
外務大臣 茂木敏充 再任
財務・金融大臣 鈴木俊一
文部科学大臣 末松信介=参院 初入閣
厚生労働大臣 後藤茂之 初入閣
農林水産大臣 金子原二郎=参院 初入閣
経済産業大臣 萩生田光一
国土交通大臣 斉藤鉄夫(公明)
環境大臣 山口壮 初入閣
防衛大臣 岸信夫 再任
官房長官 松野博一
復興大臣 西銘恒三郎 初入閣
国家公安委員長 二之湯智=参院 初入閣
少子化担当大臣 野田聖子
経済財政担当大臣 山際大志郎 初入閣
デジタル大臣 牧島かれん 初入閣
ワクチン・五輪担当大臣 堀内詔子 初入閣
万博担当大臣 若宮健嗣 初入閣
経済安保担当大臣 小林鷹之 初入閣

【会見全文】

冒頭発言

第100代内閣総理大臣に指名されました岸田文雄です。自由民主党と公明党の連立による新たな内閣が発足いたしました。職責を果たせるよう全身全霊で取り組んでまいります。

まず、新型コロナウイルスにより亡くなられた方とご家族の皆様に心からお悔やみ申し上げますとともに、厳しい闘病生活を送っておられる多くの方にお見舞いを申し上げせていただきたいと思います。また、医療、保険、あるいは介護、こうした現場の最前線で奮闘されている方々や、感染対策に取り組んでいる事業者の方々、国民の皆様に深く感謝を申し上げさせていただきます。

新型コロナとの戦いは続いています。私の内閣ではまず、喫緊かつ最優先の課題であります新型コロナ対策に万全を期してまいります。国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、そして、常に最悪な事態を想定して対応することを基本としてまいります。新型コロナによって大きな影響を受けている方々を支援するために、速やかに経済対策を策定してまいります。

新しい資本主義の実現で経済・社会のビジョン示す

その上で私が目指すのは新しい資本主義の実現です。我が国の未来を切り開くための新しい経済・社会のビジョンを示していきたいと思います。また、若者も、高齢者も、障害のある方も女性も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会を目指してまいります。これらを実現するためには、ひとりひとりの国民の皆さんの声に寄り添い、そして多様な声を真摯に受け止め、形にする、こうした信頼と共感が得られる政治が必要であります。そのため国民の皆さんとの丁寧な対話を大切にしてまいります。

まず、新型コロナ対応です。足元では感染者は落ち着き、緊急事態宣言、及びまん延防止等重点措置は全て解除されました。しかしながら、今落ち着いていてもまた感染が増えていくのではないか、また、感染が大きく増えた場合、しっかり医療を受けることができるのか。こういった不安を抱えた方が大勢いらっしゃいます。そうした国民の不安に応えるために、ワクチン接種、医療体制の確保、検査の拡充、こうした取り組みの強化について、様々な事態を想定した対応策の全体像を早急に国民の皆様にお示しすることができるよう、山際大臣、後藤大臣、堀内大臣の3大臣に指示を出しました。

合わせて国民の協力を得られるよう、経済支援をしっかりと行い、通常に近い経済、社会活動を1日も早く取り戻すことを目指してまいります。またここまでの対応を徹底的に分析し、何が危機対応のボトルネックになっていたのかを検証してまいります。その内容を踏まえ、緊急時における人流抑制や、病床確保のための法整備、また、危機管理の司令塔機能の強化など、危機対応を抜本的に強化してまいります。

次に私の経済政策について申し上げさせていただきます。私が目指すのは新しい資本主義の実現です。成長と分配の好循環、コロナ後の新しい社会の開拓、これがコンセプトです。成長は引き続き極めて重要なテーマです、しかし、成長だけでその果実が分配されなければ消費や需要は盛り上がらず、次の成長も望めません。「分配なくして次の成長はなし」です。私は成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げていきます。

また、新型コロナというピンチをチャンスに変え、希望のある未来を切り開いていくことが重要です。なかなか進まなかったデジタル化の加速など、新型コロナは社会変革の芽ももたらしました。この芽を大きく育て、コロナ後の新しい社会の開拓を実現してまいります。そのためにも、新しい資本主義実現会議を立ち上げ、ポストコロナ時代の経済・社会ビジョンを策定し、具体的な政策を作り上げていきます。

成長戦略と分配戦略が経済政策の両輪

新しい資本主義を実現していく車の両輪は、成長戦略と分配戦略です。

成長戦略の第1は、科学技術立国の実現です。科学技術とイノベーションを政策の中心に据え、グリーン、人工知能、量子、バイオなど先端技術の研究開発に大胆な投資を行います。第2に、デジタル田園都市国家構想です。地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めます。第3は経済安全保障です。新たに設けた担当大臣のもと、戦略技術や物資の確保、技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現していきます。第4は人生100年時代の不安解消です。働き方に中立的な社会保障や税制を整備し、勤労者皆保険の実現に向けて取り組んでまいります。

次に、分配戦略です。分配戦略の第1は働く人への分配機能の強化です。企業で働く人や下請け企業に対して、成長の果実がしっかり分配されるよう環境の整備を進めてまいります。第2に中間層の拡大、そして少子化政策です。中間層の所得拡大に向け、国による分配機能を強化いたします。

第3に公的価格のあり方の抜本的な見直しです。医師、看護師、介護士、さらには幼稚園教諭、保育士、こうした方々など社会の基盤を支える現場で働く方々の所得向上に向け、公的価格のあり方の抜本的見直しを行います。第4の柱は財政の単年度主義の弊害是正です。科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家的な課題に計画的に取り組んでまいります。

3つの覚悟で毅然とした外交安全保障を展開

外交安全保障は第3の重点政策です。日米同盟を基軸にし、世界の我が国への信頼のもと、3つの覚悟を持って毅然とした外交安全保障を展開してまいります。

第1に、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値を守り抜く覚悟です。同盟国、同志国と連携し、自由で開かれたインド太平洋を強力に推進してまいります。第2に、我が国の平和と安定を守り抜く覚悟です。我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命、財産。断固として守るために、ミサイル防衛能力を含む、防衛力や海上保安能力の強化に取り組んでまいります。拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく、総力をあげて取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う覚悟です。

第3に、地球規模の課題に向き合い、人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟です。被爆地・広島出身の総理大臣として、核兵器のない世界に向けて、全力を尽くしてまいります。また、地球温暖化対策の推進や、信頼性あるデータ流通、DFFTなど新たなルールづくりに向けて、世界をリードしていきます。

今申し上げた以外にも、我が国においては、デジタル技術を活用した個別教育の推進、地球によりそった多様で豊かな農林水産業の成長戦略化、地球に寄り添った多様で豊かな農林水産業の構築、災害に強い地域づくり、観光立国の実現など課題が山積しています。また、東北の復興なくして、日本の再生はありません。この強い思いの下で、東日本大震災の被災地、中でも福島の復興再生に全力を注いでまいります。

私の内閣は新時代を共につくる、新時代共創内閣です。

新しい時代をみなさんと共に作ってまいります。

「岸田にお任せいただけるのか」国民に判断してもらう

そして最後に、衆議院議員任期と今後の選挙日程について申し上げます。10月21日に衆議院議員の任期は満了いたします。可及的速やかに総選挙を行い、国民から最新のご信任をいただいて、国政を担っていく必要があります。また、コロナ感染の状況は現在落ち着きを見せているとはいえ、先行きについては不透明です。多くの国民の皆さんが未だ大きな不安をお持ちです。一刻も早く、大型で思い切ったコロナ対策、そして経済対策、実現してまいりたいと思います。

そのためには、いの一番に国民の皆様に、この岸田にお任せいただけるのかどうか。このご判断をいただき、可能であるならば、国民の信任を背景に、信頼と共感の政治を全面的に動かしていきたいと考えます。

以上のように考え、私は可能な限り早い時期に、総選挙を行うことを決意いたしました。所信表明、代表質問を行ったのち、今国会の会期末、10月14日に衆議院を解散し、10月19日に公示、10月31日に総選挙を行うことといたします。選挙事務の準備期間が非常に短いため、コロナウイルスの(ワクチン)接種にご尽力いただいている自治体の皆様にはご負担をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いをしたいと思います。未だコロナ禍による国難が続いております。総選挙期間中も政府としてはコロナと経済、両面への対応、万全を期すことをお誓いして、冒頭発言とさせていただきます。