日本電気(NEC)は10月4日、OCC、住友電気工業と共同で、非結合型マルチコアファイバーを収容した海底ケーブルを、世界で初めて開発したと発表した。これは、ファイバーケーブルの外径を変えずに伝送容量を拡大する空間分割多重技術のひとつ。1本のファイバーケーブルに複数の光伝送路を設けることができるというもの。5Gの普及や各国での相次ぐデータセンターの建設に伴い、国際的なデータ流通量の継続的な増大が予想される。そんな中、この技術による国際データ通信網の拡充が期待されている。
光ファイバーは、光の通り道となるコアの周りを屈折率の違うクラッドという被膜で覆うことで、ファイバーを曲げても光が外に漏れずに効率的に伝わる二重構造になっている。通常、コアは1本(シングルコアファイバー)だが、今回開発されたマルチコアファイバーは、4本のコアがクラッドの中に収められている。ケーブルには、この非結合型4コアファイバーが32本収められるため、最大128コアによる伝送が可能となる。
使用される海底ケーブルは、OCCが製造するOCC-SC500シリーズのLWケーブルと呼ばれるもので、水深8000mに対応する直径17mmの小径ケーブルだ。シングルコアの場合、伝送容量を大きくするにはケーブルを太くしてファイバー収容数を増やすことになるが、今回開発された技術を用いることで、17mmの直径のままで容量が4倍になる。外径が細くて荷重も小さいため、コストが削減でき、敷設の際にはより長いケーブルを船に積み込めるなど、効率が上がる。
NECは、実際の利用を想定した水中の長距離伝送試験を行ったところ、ファイバー単体の試験結果と比較して、光信号パワーの減衰量と、コア間クロストーク(隣接するコア同士の光の漏れ)の光学的特性に大きな変化はなかったとのこと。
今回の開発では、NECは長距離伝送試験の実施、OCCは海底ケーブルの製造、住友電気工業は非結合型4コアファイバーの製造をそれぞれ担当している。このプロジェクトは、総務省の「ICT重点技術の研究開発プロジェクト」における研究開発課題「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」の技術課題「マルチコア大容量光伝送システム技術」の取り組みの一環として行われている。