Facebookという名前だった企業は、米国時間11月3日、Apple(アップル)の悪名高いプラットフォーム料金を回避する計画を発表した。このところ有力なソフトウェア企業とiOSを開発した企業との間で戦争が続いているが、これはその最新の戦いとなる。Facebookの11月3日の投稿でMetaのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、同社プラットフォーム上の特定のクリエイターに対して、支払いを直接受けとることができるリンクを提供し、議論の多いAppleによる30%の手数料を迂回できるようにすると述べた。
「メタバースの構築のために、クリエイターが自分の仕事からお金を稼ぐ機会をクリエイターの手に開放することに注力したい。Appleが取引に際して徴収する30%の料金は、その開放を困難にしているため、この度、私たちのサブスクリプションプロダクトをアップデートして、クリエイターがもっと多くを得られるようにしたい」とザッカーバーグ氏はいう。
サブスクリプションの対象となるFacebookページを運営しているクリエイターは、テキストやeメールで新しいプロモリンクを共有し、独自の決済システム「Facebook Pay」で運営される決済ポータルにファンを誘導することができる。また、このクリエイター向けの投稿の中で、Facebookは、以前発表した10億ドル(約1142億1000万円)規模のクリエイタープログラムの一環として、年末までにクリエイターが新規購読者を獲得するごとに、5〜20ドル(約570〜2280)を支給するという新しいボーナスプログラムを発表している。
FacebookのPatreonに似たサブスクリプションプロダクトは、人気のあるFacebookページを持つ人々に、毎月の定期的な支払いで特別な収益化ツールを提供するものだ。現在の申込資格は、1万人のフォロワーまたは250人以上のリターンビューワーに加え、5万件の投稿エンゲージメントまたは18万分間の視聴があることになる。
Facebookは、2023年まではFacebook自身がクリエイターの決済から料金を徴収することはない斗述べているが、この分野に最近熱心になってきた同社としては、導入期の数年間無料にした後、ブームとなっているクリエイターエコノミーで自らも稼ぐ計画をきっと持っているだろう。そもそも同社自身が以前は、30%の手数料徴収を計画していたのだ。少なくとも現在のところ、その計画を引っ込めているようだが。
Appleはこれまで、iOSで提供されるすべての有料アプリとアプリ内課金から、標準で30%の手数料を徴収してきた。この手数料は、Appleにとって莫大な収益をもたらしてきた。しかし2020年末、同社は小規模なアプリメーカーに救いの手を差し伸べ、年100万ドル(約1億1000万円)未満の開発者の手数料を15%に引き下げている。
AppleのApp Store手数料は、多くの大手ソフトウェア開発者にとって大きな悩みの種となっている。2020年「Fortnite」のメーカーであるEpic Gamesは、自らを開発者のために闘う小さな会社と位置づけ、派手なキャンペーンでアプリ内課金をめぐってAppleを裁判で訴えた。本稿執筆時点で9230億ドル(約105兆4241億円)の価値があるMetaは、Appleとの間で行われたクリエイターへの支払いをめぐる新たな戦いにおいても、同様の位置づけをしている。
2021年9月、カリフォルニア州のEpic Games対Appleの訴訟の判事は、Appleが開発者に対して、同社による多額の手数料を回避する外部の支払い方法をユーザーに紹介することはもはや阻止できないという判決を下した。この判決により、Facebookの新たな回避策の道が開かれた。Appleはこの判決を不服とし、2021年10月に、判事の差し止め命令の停止を要求している。
クリエイターへの支払いに関する新たな回避策は、FacebookにとってAppleとの初めての大きな衝突ではなく、Facebookがユーザーの味方に回った初めての例でもない。Facebookは、ユーザーのプライバシーを強化するためにiOS 14に搭載された新しいトラッキング防止機能に脅威を感じ、すべての主要な全国紙に変更に抗議する全面広告を掲載した。表向きにこの行動は、自社ではなく影響を受ける中小企業を代表してのものだった。
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画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images
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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)