もっと詳しく


2020年3月3日から4日にかけて、にじさんじ界隈でちょっとした事件が起きました。
あの御伽原江良さんがメンバー限定配信にてにじさんじ卒業を発表したとの切り抜きがニコニコ動画に投稿され、ランキング上位に乗りました(現在は削除済)
そしてネットニュースサイトであるPANORAがそれを記事にした後、「*いちからの要請により記事を削除いたしました。」とツイートして該当記事を削除しました。記事中にはいちからに確認済だと書かれていながら後から削除されたという奇妙な話になっています。

一連の出来事に対してにじさんじファンの怒りが爆発して、PANORA記事を執筆したライターは炎上状態となり鍵垢となっていました。

これについてちょっと書いておきたい。

まず前置きしておきますが、(もう広まり切ってしまったので秘匿する意味はないかと思うのでここでも書きますが)御伽原江良さんがメン限でにじさんじ卒業を発表したというのは事実です。ニコニコ動画に投稿されていた切り抜きも一部編集されてはいましたが虚偽ではありません。

第1に、ニコニコ動画にメン限の該当箇所の切り抜きが投稿されたのは論外でしょう。メン限というのは有料のコンテンツであって、それを第3者がそのまま公開することはいくら切り抜き文化の浸透しているVTuberとはいえ許されるはずもありません。

ですが、コンテンツそのものを転載するのと、その中で発信された情報を報道することはまるで違うことです。

クローズドな場で発表されたこととはいえニュース性・公益性があることにはメディアの報道の自由が及びます。
御伽原江良さんはメジャーデビュー済の歌手であり、登録者50万人を超える人気VTuberであって、つまりは芸能人であるわけです。

例えばジャニーズのアイドルがファンクラブで結婚を発表したとして、
あるいは西野がオンラインサロンで問題発言したとして、
言論人がメルマガで意見を発信したとして、
それをメディアが報道したところで一切問題になるはずもありません。
それらもクローズドな場における有料の情報発信ですが、だからといって発信された情報にはニュース性や公益性があるとみなされるからです。そうでなければ、芸能人がファンクラブやメルマガやオンラインサロンだけで活動し続ける限り、結婚しても引退しても活動再開しても問題発言をしても永久にメディアは報道できないことになります。

週刊誌などでは芸能人を対象にして「〇〇引退か?」なんて報道は普通に流れています。それは有料情報どころか完全な企業秘密のはずですが、事実である限りはメディアが社会的に責められることはありません。
また、芸能人の不倫報道なんてもはや単なるプライバシーの暴露でしかありませんが、それでも大々的に報道されることも認められているわけです。

それに比べればメンバー限定配信での卒業発表なんてのはプライペートに属することでもなく、芸能活動の核心に関わることであり、ニュース性が認められないとは言い難いことです。

もちろん、ファンを信じてクローズドな場で発信したことが漏洩することに対して嫌悪感を感じるのは当然でしょうが、それは外部に漏らしたファン(かどうかは分かりませんが)の問題であってメディアの報道の是非の問題ではありません。

PANORAはいちからからの要請に応じて記事を削除するべきではなかったし、削除するくらいなら最初から投稿するべきでもなかったでしょう。
記事をいちからに確認したとの記述が事実かどうかなど不明点も残りますが、記事を執筆したライターを個人攻撃することなどは報道の自由に対する侵害とも言えます。

PANORAがレベルの高いメディアかといえばそうではないでしょう。
好きなVTuberがメディアの好奇心の対象にされることに嫌悪感を抱くのは当然です。
ですが、基本的にメディアには報道の自由が保障されているということを忘れてはいけないと思いますね。

これからVTuberの登録者数が100万人を超えるのが当然になっていくにつれて、もうちょっとレベルの高い、ある程度ちゃんとしたメディアからも報道の対象にされることも増えるかもしれません。
そのときにはもっと酷い報道もなされるかもしれませんし、ファンとマスコミの対立も増加するかもしれませんが、その時にそんな基本も抑えられていない議論をしていては戦うこともできないでしょう。