コーラと言えば、「コカ・コーラ」もしくは「ペプシコーラ」のどちらかを思い浮かべる人がほとんどでしょう。
そして、これら2大コーラ会社のマーケティング競争は、「コーラ戦争」と言われるまで激しいものとなってきました。
それぞれに熱烈なファンがいることで有名ですが、実際のところ、味にはどれほどの違いがあるのでしょうか?
ここでは好みの実態を暴く研究を紹介します。
アメリカ・ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)神経科学科に所属するリード・モンタギュー氏ら研究チームは、味ではなく感情や記憶がコーラを飲む人の脳に影響を与えていたと発表したのです。
研究の詳細は2004年10月14日付の科学誌『Neuron』に掲載されました。
目次
- コーラのブランド名が好みに大きな影響を与えていた
- 印象的なコーラのCMが、脳に味以外の幸福感を与えていた
コーラのブランド名が好みに大きな影響を与えていた
コーラ好きの人は大抵、コカ・コーラとペプシコーラで好みがはっきりしています。
皆さんも「○○コーラの方が好き」とすぐに答えらえるのではないでしょうか。
ところが実は、論文でも明言されているように、コカ・コーラとペプシコーラの化学組成はほぼ同じです。
では、どうしてここまではっきりと好みの差がでるのでしょうか?
ほとんどの人が、微妙な味や香りの差から判断しているのでしょうか?それとも他に理由があるのでしょうか?
これらの疑問を明らかにするために、モンタギュー氏ら研究チームはある研究を実施。
実験には67名が参加し、コカ・コーラとペプシコーラを飲み比べてもらいました。
最初は、参加者たちにコーラのブランド名を知らせませんでした。
その結果、参加者たちの好みはちょうど半分に分かれたようです。
ところが次にブランド名を教えてから飲んでもらうと、半数以上の人が「コカ・コーラの方が好きだ」と答えました。
ブランド名を知っただけで、好みが大きく変化したのです。
なぜ、このような結果になるのでしょうか?
研究チームは、ブランド名が脳に与える影響も調査することにしました。
印象的なコーラのCMが、脳に味以外の幸福感を与えていた
研究チームは、参加者たちがブランド名を知らずに飲んでいるときと、ブランド名を知って飲んでいるときの脳の状態をfMRIで調べることにしました。
その結果、それぞれの条件で反応する脳の領域が異なっていると判明。
参加者がブランド名を知らないときは、脳の前頭前皮質と呼ばれる特定の快感中枢が反応していました。
この脳の領域は、私たちが美味しい食べ物や飲み物を楽しんでいるときに、特に反応する部分です。
つまり味から快感を得ていると分かります。
一方、参加者がブランド名を知っている場合に反応した脳領域は、感情や記憶に関係する部位でした。
つまり参加者たちは、ブランド名を知っていることで感情が動き、ペプシコーラよりもコカ・コーラを好むようになったのです。
研究チームは、コカ・コーラの広告キャンペーンが参加者たちの記憶に大きな影響を与えた、と結論付けています。
当時放映されたコカ・コーラのCMのインパクトがあまりにも強かったので、人々はコカ・コーラを飲んだときに幸福感を得るようになったのです。
この研究から、コーラ戦争の勝者を決めるのは、僅かな味の差ではなくマーケティング力であるとはっきり分かります。
実際、多くの企業はマーケティングに力を注ぎ、現在進行形で私たちの好みを獲得しています。
もし純粋な味だけで評価したいと思うなら、友人と一緒に今回のような実験を試してみてください。
目隠しをしてどっちのコーラが好みか選んでみるのです。
きっと「どっちも同じくらい美味しい」と感じることでしょう。
参考文献
The Cola Wars: Is There Actually Any Difference Between How Coca-Cola And Pepsi Taste?
The Cola Wars: Is There Actually Any Difference Between How Coca-Cola And Pepsi Taste?
元論文
Neural Correlates of Behavioral Preference for Culturally Familiar Drinks
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(04)00612-9#%20