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Lamborghini Huracán(ランボルギーニ・ウラカン)。ランンボルギーニで最大の販売台数を誇るスーパースポーツカーは、ガソリンエンジン車としての時代を終えようとしている。

2014年にHuracánが登場して以来、同社は全世界で1万7500台を販売したという。しかし、顧客がどれほど望んでいても、V10エンジンを救うには十分ではなかった。ランンボルギーニのラインナップに加わる最新のスーパースポーツカー、新型Huracán STO(ウラカン スーパートロフェオ・オモラガータ)は、ランボルギーニの未来を垣間見せてくれると同時に、轟音を放ちながら、激しくパワフルなガソリンエンジンの終焉を称えている。

「Huracán STOはガソリンエンジンの最後の祭典です」。Willow Springs Raceway(ウィロー・スプリングス・レースウェイ)でのプレスイベントで、トラックサイドに座りこんだランンボルギーニの新しい北米CEO、Andrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏はTechCrunchにこのように語る。このスーパースポーツカーの価格は32万7838ドル(約3600万円、税金と配送料を除く)から。公道からサーキットまで対応する。

画像クレジット:Lamborghini

ランンボルギーニの最高技術責任者、Maurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏は、その後筆者に「エンジンは単なるエンジンではなく、音楽であり、ランンボルギーニブランドのDNAの一部です」と語ってくれた。

このDNAは、印象的なデザイン、パワー、そして2人の経営者が「感情」と呼ぶもの、すなわち富裕層がランボルギーニに惹かれる排他性と喜びの感覚を体現する抽象的な概念に強く結びついている。

熟練したプロのレーシングカー・ドライバーを気取るつもりはない。筆者はトリッキーで起伏のあるビッグ・ウィロー・トラックを先導されながら走行しただけだが、ランンボルギーニが最後に発表するガソリンエンジン車に何か特別なものを取り入れたことは明らかだ(次回は、公道を走るHuracán STOを見てみたい)。

街乗りできるレーシングカーとしての親しみやすさ

新型Huracán STOは、ランボルギーニが世界各地で開催しているSuper Trofeo EVOシリーズやGT3 EVOシリーズなどのワンメイクレースで成功を収めていることから学び、それに「快適性、実用性」と「公道走行」を融合させている。Huracán STOは、高度な空気力学と素材、ブレーキ、テレメトリ(車両の状態の遠隔監視)を備えた、競技団体が規定する規格を公道に降ろしたとも言える公道仕様のレーシングカーであり、サーキットで高速走行することもできるし、Huracán STOで人目を引きつけながらデートを楽しむこともできる。

Huracánは後輪駆動で、巨大な5.2リッターV10エンジンは631馬力。7速デュアルクラッチ・ギアボックスと組み合わせることで、ビッグ・ウィローのストレートでは一瞬で時速200kmに加速した。STOの最高時速は300km/hなので、まったくもって余裕である。ANIMA(アダプティブネットワークインテリジェンスマネジメント)の設定が最も緩いストリート(STO)モードであっても、アクセルを踏んだ途端に走り出す。このSTOモードは、Lamborghini Dinamica Veicolo Integrata(LDVI、ランボルギーニ・ディナミカヴェイコロインテグラータ)システムによってサスペンションとダイナミクスが管理され、他のモードよりも反応が良く、より緩やかな走りになっている。

コーナーでのスライドをもう少し高めにして、ラップタイムを上げたければ、ANIMAボタンをもう一度押すと、Trofeoモードに切り替わる。このTrofeo(トロフェオ)モードでは、LDVIによって管理されるトルクベクタリングが変更され、テールの動きが良くなる。Piaggio(ピアッジオ)モードは雨天用のモードで、ウィロー・スプリングスのあるカリフォルニア州ローズミード周辺の砂漠地帯では久しく見られなかったものだ。

Huracán STOは、ビッグ・ウィロー周辺の険しいオフ・キャンバーやダブル・エイペックスの急カーブでも、コース上と同じ乗りやすさを感じることができる。シャークフィンと手動で調整可能な巨大なウイングが代表する、この車両の高度な空気力学がその理由だろう。後部のウイングは3つのポジショニングが可能で、重心を最大13%変化させ、ダウンフォースを90kg以上増減することができる。

最先進の素材とブレーキ

また、ランンボルギーニは、ボディ剛性と重量の最小化を両立させるために軽量のカーボンファイバーを採用している。Huracán STOのボディは75%以上がカーボンファイバーで構成され、Miuraにヒントを得たクラムシェル型のフロント「コファンゴ」(イタリア語のボンネットとフェンダーを組み合わせた造語)もその1つだ。ボンネットの下には小さな収納スペースがあり、その日のドライブプランに合わせて、レーシングヘルメットやバッグを入れるのに十分な大きさである。ベースとなったPerformanteに比べ、STOはカーボンファイバーの採用やインテリアの軽量化などにより、約45kg軽量化されている。

レース上で重要なのは、高速走行ではなく、ブレーキが甘くなく、何度でもすばやく止まれることだ。STOには、F1用に開発されたBrembo(ブレンボ)製CCM-R(Carbon-ceramic Resin Matrix)ブレーキが、民生車としては初めて採用されている。この技術は、ブレーキの温度を下げ、長時間の走行時のフェード現象を防ぐことができる。また、フェンダーに設けられた通気孔により、キャリパーやディスクに空気を送り込み、熱がこもらないように工夫されている。ブレーキの温度はインストルメントパネルで確認でき、LDVIもフェード現象をチェックする。

速く走るためのテクノロジー

Lamborghinは、サーキットでのタイムの向上を実感したいオーナーのために、サーキットでのタイムやパフォーマンスを記録し、比較するためのテレメトリシステムを提供する。プロが使用するVBOXと同じようなものだ。

このシステムは、ブレーキやスロットルの入力からステアリングの角度まですべてを分析し、オーナーやドライバーが馴染みのサーキットでより速く走行できるように支援する。記録されたデータと動画はランンボルギーニ独自のソーシャルネットワークにアップロードされ、オーナーはスマートフォンのUNICAアプリでアクセスすることができる。自分のトラックタイムを他のオーナーや友人、コーチと共有することも可能だ。

画像クレジット:Lamborghini

(ランンボルギーニのブレーキはいうに及ばず、)自分の車に装着されていた特注のブリジストン製ポテンザでさえも限界まで走行した訳ではない筆者だが、Huracán STOは、筆者が経験した中で最も自分に自信を与えてくれて、コミュニケーションを取りやすく、親しみやすい車両の1つであるとは言えるだろう。ステアリングはダイレクトかつリニアで、私がサーキット内外で運転したことのある他のランンボルギーニ車とは異なり、STOは車の能力ギリギリまで使っても、動きが乱れたり、操作性が悪くなったりすることはない。高速走行時でもコントロールされ、洗練された走り……これは従来の、サーキット志向のランンボルギーニとは結びつかなかった言葉だ。

富裕層にとっては、Huracán STOの生産の制約となるのはSant’Agata Bolognese(サンタガタ・ボロニェーゼ、イタリアの自治体)の工場の生産能力だけだ、というのは良いニュースだろう。バルディ氏によれば、Huracán STOは生産量は年間2500台程度で、すでに2022年の分まで完売しているとのことだ。「制約となるのは私たちの生産能力です。生産能力には限界があります。私たちは2024年までにHuracánをハイブリッド化して、既存のガソリンエンジンバージョンを廃止する予定です」とバルディ氏。

ランンボルギーニによれば、STOは3秒以内で時速100kmまで加速するという。プロのレースドライバー、Richard Antinucci(リチャード・アンティヌッチ)に先導されてサーキットを回ったのはほんの数周だったが、Huracán STOが、レース仕様の車を限界まで走らせるだけの資金と度胸のある人に、何か特別なものを届けてくれるのは間違いない。

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)