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Anada Lakra(アナダ・ラクラ)氏とIlya Usorov(イリヤ・ウソロフ)氏は米国に移住した当初、自分たちの声を伝えることに苦労した。彼らは英語を知っていたし、理解していた。しかし、話す時になると、アクセントがハードルになった。例えばウソロフ氏は、ロシア生まれの両親が自らを主張しようと奮闘し、そのことが仕事の機会を制限してしまうのを目にした。一方、エール大学に入学したばかりのラクラ氏は、自分の発言をもう一度と言われてしまうことが頻繁にあった。

「自分自身を明確に表現することができるだろうか?理解してもらえるだろうか?影響力を持てるようになるだろうか?」とラクラ氏は自問したことを振り返る。「自分のアクセントの発音により、完全な自分ではないように感じさせられました。そして私は、自分のパーソナリティをいくらか失ってしまいました」。

これは、米国に住む約6500万人の英語を母語としない人々の多くが、程度の差こそあれ経験した問題だろう。2人は、仕事や信頼、人間関係を築く上でアクセントが障害になると考え、共同創業者として協力してソリューションを構築した。

ラクラ氏とウソロフ氏はこのほど、英語の発音を洗練させるアクセントコーチングアプリ「BoldVoice」をローンチした。ニューヨークに拠点を置くこのスタートアップは、現在Y Combinatorの2021年夏バッチを通過中で、プレシードラウンドで約60万5000ドル(約6600万円)を同アクセラレーターとXFundから調達した。

ハリウッドがEdTechの要件に適合

BoldVoiceは特定のユーザーを念頭に置いている。紙の上で英語を学んだが、人との会話や交流に助けを必要としている非ネイティブの英語話者だ。

同スタートアップは、従来俳優を支援してきたハリウッドアクセントのコーチが指導する短編ビデオを使ってコンテンツを配信している。カリキュラムは3つの「P」を軸にした構成だ。「Posture(姿勢)」は、英語の「R」をスペイン語の「R」と比較しながら身体的な感覚をサポートする。「Phonology(音韻論)」は母音と子音。「Porosity(多孔度)」はアクセントの音楽性である。これまでのところ、プラットフォーム上には2人のハリウッドアクセントおよび方言コーチ、Ron Carlos(ロン・カルロス)氏とEliza Simpson(エリザ・シンプソン)氏が在籍している。

「俳優が新しい役のアクセントを覚えるのと同じ方法を基にこのアプリを構想しています。すぐに覚える必要があるような環境で修得する方法です」とラクラ氏。「自宅で学ぶ人に同じ統制とプロセスを提供したいと考え、音声言語と方言の訓練を受けたハリウッドアクセントのコーチや、言語学の学位を持つアドバイザーを採用しています」。

同社は短編ビデオにとどまらず、今後は製品に人工知能(AI)を組み込むことを計画している。ユーザーが音声を練習すると、BoldVoiceが音声サンプルを記録してアルゴリズムに入力し、時間の経過とともに、ユーザーの苦手な分野に合わせたエクササイズを推奨できるようになるというものだ。同社は現在、オープンソースソフトウェアを使用しているが、将来を見据えて独自のAIアルゴリズムの開発を進めている。リアルタイムのフィードバックは偉業と言えるだろう。

BoldVoiceプロダクト

サインインのプロセスはいたってシンプルだ。ユーザーは、アクセントの確実性に関する目標の設定、英語の習熟度の説明、母国語の特定の他、改善したいと思う場面(職場から社会環境まで)を指定する。また、1日10分間の発音練習をするよう求められるが、拒否することもできる。

BoldVoice(TechCrunchによるスクリーンショット)

受講者にはサブスクリプションを通じてアクセス可能なレッスンプランが提供される。料金は月額10ドル(約1100円)または年額70ドル(約7700円)で、1時間あたり200ドル(2万2000円)にもなるプライベートアクセントコーチによる個人指導よりも利用しやすいと謳われている。現在、無料の体験版は1週間の無料試用版のみとなっている。

BoldVoiceは1カ月ほど前にサービスを開始して以降、1000人のユーザーを獲得している。ユーザーの大半はインドや中国出身、あるいはスペイン語を話す人々だ。同社はこれらのコアユーザーを中心に「極めてパーソナライズされた」コンテンツの作成にフォーカスしており、それに向けて相当な仕事に取り組むことになりそうだ。インドでは、1万人以上が121の言語を使用し、憲法で22の言語が公式に認められている。

フクロウが見ている

BoldVoiceは、Edtechサブセクターにとって重要な時期に、言語学習スタートアップの混み合った市場に参入しようとしている。言語学習のユニコーン企業Duolingoが今週上場予定で、他の消費者Edtech企業に黄金の光を投じるかもしれない。同社はすでに、株式公開を控えて予想価格帯を引き上げており、自信に満ちた動きだ。BusuuやBabbelなどの企業も、言語学習の領域を切り開くことに成功している。

しかしラクラ氏は、既存の語学学習アプリがアクセント市場で勝利したとはまだ思っていない。同氏は、言語を学ぶことは語彙や文法を暗記することであり、アクセントを学ぶことは舌の訓練を通して口を鍛えることだと説明する。BoldVoiceが注力している後者は、他の企業にとってはまだ優先度が低いように思われる。

同氏の認識は正しいようだ。Duolingoは、読み書きのリテラシーに優れているが、その発音への取り組みに関する有効性の研究はまだ発表されていない。Duolingoは初期に、ユーザーが会話を練習するのを助けるチャットボットをローンチしようとした。しかしこの機能は要望が高かったものの、ユーザーの80%が使わなかったために失敗している。同社CEOのLuis von Ahn(ルイス・フォン・アン)氏はこの反応について、消費者に会話の練習をさせることの難しさを浮き彫りにしたものだと考えている。

Duolingoは現在、音声認識テクノロジーに関連するチームへの投資に加え、M&Aの機会も視野に入れている。BoldVoiceも同様にバイトサイズのコンテンツと上昇機運を有しており、Duolingoの動機づけのミッションに対して、自社の自信のプロダクトを持ち込むことになるかもしれない。

補完的ではあるが競争の激しい環境は別にして、BoldVoiceの前に立ちはだかる課題は、センシティブな分野で活動することにあるかもしれない。発声[発話]能力というのは、アイデンティティに欠かせない要素だ。BoldVoiceは人々を助けることと、人々を形作るものを消し去らないことのバランスを取る必要がある。

ラクラ氏は、バランスを取ることができると考えている。ユーザーに対する彼女の認識は絶えず進化し続けている。

「人前で話すときのヒントや、会議への参加方法、丁寧にフィードバックする方法などについて、さらに情報を得られたらすばらしいという意見がユーザーからすでに寄せられています」と同氏はいう。これらの要望はすべて、プロフェッショナルな英語環境でどのように文化的、言語的に英語を使用するかに関するものだ。そしてBoldVoiceは、コーチと協力して、発音を超えて、ケイデンス、プロジェクション、イントネーションに至るコンテンツを生み出そうとしている。

「私たちはBoldVoiceを、人々が適切な方法で話すのを助けるだけでなく、自分のいうことすべてに自信を持てるようにするツールにしたいと、強く思っています」。

BoldVoiceの共同創業者であるイリヤ・ウソロフ氏とアナダ・ラクラ氏。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)