果物の転売ビジネスに投資することで、毎月配当がもらえるという詐欺事件が起きました。被害者は約1500人、集めたお金はトータルで約134億円に上ります。
昔から、投資すると大きく儲かると持ち掛け、お金を集める詐欺の手口があります。最初は本当に配当を渡して一気に顧客を増やし、集めたお金でさらに配当を出しますが、最終的には自転車操業になり破綻します。当然、最後には顧客の投資金は配当どころか元金も返ってきません。
今回の事件は、SNSで集客してLINEでコミュニケーションを取り、契約したタレントにはInstagramなどのSNSで告知してもらうなど、ネットマーケティングにも力を入れていたのが特徴的でした。
資金移動にはクレジットカードが使われました。現金を受け取ろうとすると、どうしても人の手がかかりますし、そもそも貯金がない若者もいます。そこでクレジットカードで果物を購入したというかたちを取ってもらい、引き落とし日までに配当を上乗せした金額を戻す、という仕組みです。もちろん、果物は送られてきません。
最大3%上乗せされるので、クレジットカードに100万円の枠があれば3万円ゲットできます。本当に入金された人は喜んでしまいました。カードをさらに作り、知人にも紹介してしまいます。
犯人達の会社の売上は激増します。本当は果物の転売などしていないのですが、凄まじい額が毎月入金されるので見た目は儲かっているように見えます。銀行も騙されて、多額の融資をしてしまったようです。
クレジットカード会社は、入金されるとはいえ、明らかに怪しい取引が連続するので不正取引ではないか、と顧客に連絡し始めました。しかし、犯人達は、自分たちで食べるための果物をまとめ買いしたと答えるように通達を出しました。
それでもクレジットカード会社は怪しいと判断した取引を却下するようになります。すると犯人達は配当の支払いを止め、引き落とし金額のみを振り込むようになりました。しかし、それでもカードの利用ポイントが利用者には入るので、自転車操業は続けられます。
最後には利用者にリボ払いをお願いして引き落としを先延ばしするといった綱渡りを続けましたが、入金が滞るようになり、2019年10月に破産手続きを開始しました。
2021年10月17日、犯人達が逮捕されました。首謀者は海外に逃亡し、逮捕状が出ています。
従来、この手の詐欺は、時間とお金のある高齢者が狙われていたのですが、今回の事件はネットを利用することで、20代、30代の若者が被害に遭いました。そのため、限度額いっぱいまで果物を購入した被害者の中には、支払いができずに自己破産した人もいます。
「今時、そんな怪しい話に騙される人がいるんだ」と言う人がいます。しかし、当事者にとっては魅力的な話に映るのです。もちろん、最初は疑っていろいろ疑問を持つと思いますが、全て明確に回答してくれます。そういう勧誘マニュアルがあるのです。詐欺ではないかと詰め寄る人に対しては「確定申告をしていないそちらこそ警察に捕まるぞ」とLINEで脅したそうです。
経済状況が悪い中、少しでも収入を増やそうと副業や投資といった話が飛び交っています。堅実な話ほど利益が低く、リスキーなほど儲けが大きくなるのは世の常です。そして、あり得ないくらい儲かる話は、ほとんど詐欺です。
自分のお金をつぎ込むのであれば、徹底的に調べ、少しでも怪しいのであれば手を出さないようにしましょう。自分で理解できないのに、人の話を鵜呑みにするのであれば、それは詐欺師にとって格好の獲物となってしまいます。
定期的にこの手の事件は起きます。あり得ないくらいおいしい話はあり得ない、という基本を肝に銘じておきましょう。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「support@dlis.info」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと