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米国時間11月4日、Google Cloudが、世界最大のデリバティブ取引所CME Groupとの大きな契約を発表し、今後10年間をかけて、CMEの先物取引とオプションのマーケットをクラウドへ移すことになった。Googleは契約金の額を発表していない。

Google Cloudの戦略的産業担当副社長であるPhilip Moyer(フィリップ・モイヤー)氏によると、これは顧客がワークロードをクラウドへ移してGoogleがそれを助けるという、一般的な契約ではない。「むしろこれは、GoogleとCMEによるデモンストレーションであり、金融サービス産業における最も困難な部分をクラウドへ移行させることに、我々が真剣にコミットしていることを示すものです」とモイヤー氏はいう。

モイヤー氏によると、本契約が難しい点は、CMEのような企業にもなるとセキュリティとレイテンシーと冗長性、リカバリーの要求がとても厳しいことだ。両社は契約の構成や費用条件を明言していないが、計画ではそれを複数のフェーズで実装していくという。最初は、レイテンシーの要求がもっとも低い容易なワークロード、その次がデータ分析のツールとなる。

「この2番目のフェーズでは、本当のイノベーションに注力しなければなりません。データとその分析をよりリアルタイムにし、新しいプロダクトを作り、マーケットをもっと効率的にしなければなりません」とフィリップ・モイヤー氏はいう。一方、最後のフェーズでは、ワークロードのレイテンシーに最も敏感な部分をクラウドへ移す。

モイヤー氏にとってもこれは巨大な契約であり、10年間ですべてがうまくいけば、CMEのような金融サービス企業の業態を変えてしまう。「まさしく段階的なアプローチです。世界最大で、扱う内容も世界で最も多様な取引所を、クラウドへ移すのですから。そしてその間、Googleとしてはグローバルなネットワークと強度と、AIやML、データ技術、グローバルなアクセシビリティなどをフルに活かして、CMEの強さとアクセス性を全世界レベルで強化するつもりです」とモイヤー氏は語る。

契約が大規模であることに加えて、10億ドル(約1137億円)という投資額の構成も問題になる。モイヤー氏によると、リスクはCME自身も負うことになる。投資には、無議決権株式も含まれる。Googleから取締役が出ることはなく、投資の使い方を決めるのはあくまでもCMEの現取締役会だ。モイヤー氏によるとこの投資は、Googleが関係の長期的な成功に対するものでもある。

「お話したいことの1つとして、その関係が従来的なベンダー関係ではないことがあります。従来の、RFPやRFIをもらって成約という関係ではなく、私たち自身も、ゴールラインを超えるために必要なエンジニアリングにコミットすることになります。しかもそれは、数年後にスタートする話ではありません。今日から始まることであり、3つのフェーズのすべてを成し遂げる道のりなのです」とモイヤー氏はいう。

未知数も多いが、巨大な事業になるだろうし、成功すればより広大な金融サービス市場がGoogle Cloudに対して開くことになる。Googleはこの事業の一環として大規模なクラウドサービスを動かしているアドバンテージがある。その専門技術を活かして他の大規模クラウドサービスを顧客にできれば、クラウドサービスにおけるGoogle Cloudのマーケットシェアの針が、もっと目立つ大きさで動くだろう。

2021年の第3四半期ではGoogleのマーケットシェアは10%、売上は45億ドル(約5116億円)だった。Synergy Researchによると、マーケットリーダーのAWSは売上が160億ドル(約1兆8185億円)超、マーケットシェアは33%だった。同じく第3四半期で市場全体の規模は450億ドル(約5兆1147億円)だった。

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画像クレジット:Michael Short/Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)