人間にとって最も身近なペットといえば、それはネコかイヌです。
そして私たちは大抵ネコ派かイヌ派のどちらかに属しており、昔から「どちらをペットにしたいか」という議論がなされてきました。
論点の1つとして「どちらが賢いのか?」といった疑問について考えたこともあるでしょう。
そこで今回は、アメリカのバーナード・カレッジ(Barnard College)で、イヌの認知を研究している専門家アレクサンドラ・ホロウィッツ氏の見解を紹介します。
専門家はネコとイヌのどちらが賢いと考えているのでしょうか?
目次
- ネコとイヌを比較した研究は少ない
- ネコとイヌの知能を比較する意味はない
ネコとイヌを比較した研究は少ない
「ネコとイヌの賢さを比較する」と言っても、知能に該当する能力は様々であり、一様に数値化して比較できるわけではありません。
アメリカ・メイン州のユニティカレッジ(Unity College)に所属する動物行動学者クリスティン・ヴィタール氏によると、動物の知能は通常、問題解決能力、概念形成(ある経験から一般概念を形成する能力)、社会的知能の3つに分類できるそうです。
そしてヴィタール氏は主にネコの社会的知能を研究しており、「その能力の高さはしばしばイヌと同レベル」だと語っています。
実際、2017年の研究により、ネコは食べ物やおもちゃよりも人間との交友を好むと判明しています。
また2019年の研究では、人がネコに関心を向けると、ネコはその人とより多くの時間を過ごそうとすることが分かっています。
ネコもイヌのように高い社交性をもっているのです。
さらに2005年の研究では、人間が与えるヒントを頼りに隠された食べ物を見つける能力が調査・比較されました。
その結果、ネコとイヌの能力に大きな違いはなかったようです。
さて、こうした能力の違い以外にも、脳の大きさから知能を比較できるかもしれません。
2014年の研究では、認知特性の1つである自制心がさまざまな動物で比較されました。
その結果、動物の脳が大きければ大きいほど、より強い自制心を示せると判明。
つまり脳の大きさも知能を比較するうえで1つの指標となるわけです。
とはいえ、この実験にはネコが含まれておらず、イヌとネコの知能の比較に関しては推測の域を出ません。
さて、これらの研究からすると、一部の人は「ネコとイヌは同じくらいか、ややイヌの方が賢いのかもしれない」と考えるかもしれません。
しかしほとんどの人は、「これらの結果だけでは、知能に優劣をつけることはできない」と感じるでしょう。
それもそのはずで、そもそもネコとイヌを比較した研究は非常に少ないのです。
ではなぜ、世界の2大ペット種を比較する研究が少ないのでしょうか?
その理由は、ホロウィッツ氏の言葉に集約されるでしょう。次項で紹介します。
ネコとイヌの知能を比較する意味はない
ホロウィッツ氏は、そもそも種を越えて知能を比較することに疑問を呈しており、次のように述べました。
「ネコはネコにとって必要な分野で非常に賢く、イヌはイヌにとって必要な分野で非常に賢いのです。
そのため種の相対的な賢さについての議論は、まったく意味のないことだと思います」
アメリカ・ノースカロライナ州のデューク大学(Duke University)に所属する進化人類学者のブライアン・ヘアー氏もこの意見に同意しており、次のように述べました。
「イヌがネコより賢いかどうかを問うことは、ハンマーがドライバーよりも優れた道具かを問うようなものです」
このように、専門家たちの意見はおおむね一致しているようです。
ネコとイヌを直接比較した研究が少ないのも、「その研究に意味を見いだせない」からなのかもしれませんね。
さて、冒頭で掲げた疑問「専門家はネコとイヌのどちらが賢いと考えているか?」に対する答えは明白でした。
「どちらかが賢いとは考えていない」のです。
私たちも専門家たちと同じ見方をもつなら、いっそうペットを愛せるはずです。
あなたのペットは、その種が必要とする分野で「とても賢い」生き物なのです。
参考文献
Are cats or dogs smarter?
https://www.livescience.com/cats-dogs-intelligence