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もし、目の前に3000円がポーンと現れたらあなたは何に使いますか? 私なら「宝くじ買っちゃう!」と思ってしまうのですが(笑)、ふと手に取った『三千円の使いかた』(原田ひ香・著/中央公論新社・刊)を読んで、考え方が変わりました。

 

たかが3000円、されど3000円。一度で使い切ればあっという間になくなってしまう金額でもしっかり計画を立てれば人生にとっても大切な3000円になるはず。今回は、お金の価値観を優しく変えてくれる『三千円の使いかた』をご紹介します。

3000円で人生が変わる?

この『三千円の使いかた』は、自己啓発本ではありません。一人暮らしを始めた美穂ちゃん、その姉で、結婚前は証券会社に勤めて貯金も600万円近くある真帆さん、とある病気にかかったことで人生を少し見つめ直し始めた母親の智子さん、そして1000万円の貯金がある祖母の琴子さんの4人、それぞれの視点でお金の価値を語る、家族小説。そのため、冒頭はこんな言葉から始まります。

 

人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。

え? 三千円? 何言っているの?

(『三千円の使いかた』より引用)

 

私も「3000円で?」と驚いたのですが、この小説を読み進めていくと確かに3000円の使い方で人生は決まるかもしれないな……と感じました。

 

例えば、仕事前に喫茶店に立ち寄って新作のクリームたっぷりなコーヒーを頼んで700円、ランチを奮発して1200円、仕事帰りにちょっと一杯飲みに出かけて1100円使えば、1日で使い切ってしまいます。

 

けれど、雑貨屋さんでお気に入りのカップ1200円と、近所の自家焙煎コーヒー店で800円の豆を買えば1000円余るし、コーヒーも10日くらいなら飲み続けられるのではないでしょうか? どちらの価値もその人次第で変わりますが、気がついたら3000円がなくなるような暮らしかたをしていませんか? 自分のお財布事情と照らし合わせながら、主人公たちのお金の使い方・貯め方を読み進められるので、個人的にはノウハウ本を読むよりもめちゃくちゃ参考になった1冊でした。

 

8×12は魔法の数字?

小説に登場する美穂ちゃんは、貯金するなんてことも真剣に考えていないし、将来のことにあまり不安も抱えていませんでした。まるで、私のよう!しかし、あることをきっかけに「真剣にお金と向き合おう」と考え直すように。3000円で開催されていた節約セミナーに参加した美穂ちゃんは、こんなことを聞きます。

 

「今日はこれだけ。これだけ覚えて。あなたの脳裏に刻みつけて欲しいの。さあ、八×十二はいくつですか?」

九十六! という声が会場から上がる。

「はい。ご名答。毎月八万ずつ、それにボーナス時に二万ずつ貯めます。そうすると、あら不思議。一年に百万円が貯まっちゃうの! そして、一年に百万ずつ貯められれば、三十代のあなたは六十歳の定年までに三千万、二十代のあなたなら四千万貯まります。さらにそれを三%複利で運用できれば税抜きで約四千九百万と約七千七百四十万になります。もう老後は心配なし!」

(『三千円の使いかた』より引用)

 

月8万円……どうやったら貯められるのだろうか? 私はこれを読んで結構真剣に悩みました(笑)。固定費から見直してみると、無駄使いの多いこと、多いこと……我ながら「なんでこんなにサブスクに入ってるんだ!」と驚きました(笑)。

 

もし家族で家計を管理しているのであれば、8万円どうやって貯めるのか考えてみると楽しいかも。最近では色々と投資や資産運用という言葉が飛び交い、そちらに気を取られそうになりますが、まずはどうやったら固定費を貯蓄に回せるか? それを考えるだけでも大きな一歩になるはずですよ。

 

老後、働くのはありか、なしか。

この『三千円の使いかた』は、それぞれ立場の異なる4人の女性が「今」何をするべきか、悩み、向き合う話が掲載されています。私は「できることなら老後も働きたいな」と考えていたので、祖母・琴子さんの話はとても参考になりました。

 

琴子さんは、習い事が好きなお嫁さんの智子さんから「おせち教室」の講師を頼まれ、お礼にと5000円をもらいます。そこから「私も働きたい」と働く意欲が湧いてきたのですが、コンビニの面接を受けるも年齢を理由に不採用になってしまいます。

 

働きたい。

そんな琴子の小さな、いや、七十代にしては壮大な夢を、どうしたら、叶えられるのだろうか。

(『三千円の使いかた』より引用)

 

老後になってから「働くところくらいあるっしょ!」なんて簡単に考えていましたが、こんなにも厳しいとは……。結果として、琴子さんは働くことができましたが、もしかしたら現実はもっと厳しいものかもしれませんよね。

 

一人暮らしの場合、家庭を持っている場合、子どもたちが自立した場合、老後の生活……など同じ立場でもお金との関わり方は千差万別だと感じました。私も「貯金なんかなくていいや〜」と思っていましたが、『三千円の使いかた』を読んで貯金したくなったし、何より家計簿もつけたくなりました。身近なことからコツコツとに敵うものはないかもしれませんね!

 

毎日を楽しく、気持ちよく過ごすためにも一度自分自身のお財布事情を見直してみるのはいかがでしょうか? 私も宝くじを買ったり、ギャンブル好きな気質があるので(笑)3000円から使い方を見つめ直してみたいと思います。

 

【書籍紹介】

三千円の使いかた

著者:原田ひ香
刊行:中央公論新社

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

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