近年、世界的に人気が高まっているe-Bikeと呼ばれるスポーツタイプの電動アシスト自転車。特に注目度が高いのが、通勤・通学など街乗りに向いたクロスバイクタイプのモデルですが、価格もそれなりに高いのが、これから乗ろうとしている人たちにとってはハードルでした。今回取り上げるイタリアブランド、ベネリの「MANTUS(マンタス)27 TRK」というモデルは、価格を15万6000円(税込)と抑えたものにしているのが魅力です。
フレーム内蔵のバッテリーなどトレンドを押さえた装備
MANTUS 27 TRKは2021年11月初旬から発売がスタートしました。本自転車は一見しただけで、e-Bikeだと気付けるのはちょっと自転車に詳しい人でしょう。バッテリーをフレームに内蔵したインチューブ式としているため、パッと見ではフレームの太いクロスバイクのように見えます。モーターがリアの車軸と一体となったハブモーターとなっていることも、電動アシストっぽくない見た目に貢献しています。
ホイール径は27インチ。クロスバイクには700Cと呼ばれるロードバイクなどと同じサイズのホイールが採用されていることが多いですが、それよりも少し小さいサイズです。ホイール径を小さくしていることと、フレームのサドル側を低く抑えた設計で、適応身長が151cm~と小柄な人でも乗れるようになっています。
変速ギアは後ろのみで7段となっています。前後に段数の多いギアを装備しているクロスバイクに比べると見劣りする数値かもしれませんが、アシストのあるe-Bikeではあまり多くの変速ギアは必要ないので、それを踏まえたセレクトと言えます。
ブレーキは前後ともにディスクですが、油圧式ではなくワイヤーで引く機械式。この辺りも価格を抑えるための工夫の1つです。ブレーキレバーは大きめのしっかりと握るタイプで、手が小さい人にも握りやすくなっています。
e-Bikeならではの軽快な走りを味わえる
MANTUS 27 TRKはクロスバイクタイプのe-Bikeですが、採用されているホイールなどの細部を見ると、随所に一般的な自転車のパーツを採用していることがわかります。これによって価格を抑えつつ、スポーツタイプの自転車に不慣れな人にも乗りやすく仕上げるという意図が感じられます。
例えば、ブレーキレバーはスポーツ性を重視したクロスバイクでは2本の指で握るタイプとなっていることが多いのですが、このモデルでは4本の指で握るタイプなのでママチャリから乗り換えた人でも違和感なく握ることができます。
逆に言うと、クロスバイクタイプのe-Bikeならではの軽快な走りをどこまで実現できているのか? という点が懸念されますが、実際に走ってみるとその心配は杞憂に終わりました。漕ぎ出しからスムーズなアシスト感で、自分がペダルを踏んだ力にきれいにアシストが上乗せされていくのが味わえます。
スムーズな加速には22kg(バッテリー含む)という車体の軽さも一役買っている印象。700Cに比べて径の小さいホイールは、高い速度を維持するうえではマイナスとなる要素ですが、e-Bikeの場合、アシストの切れる24km/h以下で走るのならデメリットはあまり感じません。登り坂でも試乗してみましたが、アシストも十分強力で車重も軽いので、結構な斜度のある坂道もスイスイ登ることができました。
筆者はクロスバイクタイプのe-Bikeにもずいぶん試乗していますが、MANTUS 27 TRKはそれらと同じように軽快な乗り心地を味わうことができます。スポーツバイクに乗り慣れた人は、ブレーキなどの操作感に違和感を覚えることもあるかもしれませんが、このモデルがターゲットとしているのはおそらく初めてスポーツバイクに乗るようなユーザー。24km/h以上の速度で巡航したい本気度の高い乗り手は、もう少し価格が高めのモデルを選んだほうが満足できるかもしれません。とはいえ、ブレーキやシフトのフィーリングなどはパーツを交換することでも対応できる範囲。アシストのフィーリングなど、性能の根幹部分は十分な完成度に仕上がっていますので、これからe-Bikeデビューを考えている人は安心して選べるモデルです。
撮影/松川 忍
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