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韓国・現代(HYUNDAI=ヒョンデ)自動車の燃料電池自動車(FCV)『NEXO(ネッソ)』に日本で乗れる!そんな話をいただいたのは11月始め。個人間カーシェアリングを展開している「Anyca(エニカ)」がディーラー車の貸出車両としてネッソを登録しており、その試乗レポートをお届けします。

 

ネッソは燃料電池車初のSUVとして誕生

私がネッソに最初に遭遇したのは2018年1月に訪れた米国・ラスベガスで開催されたCES会場です。当時はトヨタが『MIRAI(ミライ)』を発売した後、FCVについてはしばらく動きがなかった中での登場に驚きを感じたものでした。その後、ネッソは2018年3月に韓国国内で発売。そして、私は同年12月にはマレーシア・クアラルンプールで開催されたモーターショーで再び遭遇したのです。個人的にも興味を抱いていただけにこの話はまさに“渡りに船”。その場で試乗を快諾させていただいたというわけです。

↑個人間カーシェアリング「エニカ」で借りたヒョンデ自動車のFCV「ネッソ」。日本での発売は未定

 

FCVとは酸素との化学反応によって発生させた電気エネルギーでモーターを駆動して走らせるクルマのことです。水素は燃焼させても排出するのは水だけなので、走行時に限れば世界的な課題として俎上に上がっているCO2は一切発生させません。水素がある限り自分で電気を発生して走ることができるので、電気自動車(EV)のような充電は不要。その意味で環境に優しく理想に近いクルマというわけです。

↑ネッソのボディサイズは、全長4670×全幅1860×全高1640mm

 

そのFCVを採用したネッソは、FCVとして初めてグローバルで人気が高いSUVを形状に採用しました。トヨタのミライはフォーマルなスタイルの4ドアセダンであるため、スペースユーティリティでは明らかにネッソの方が有利。車内は広々とした空間が広がり、カーゴルームもフロア面はやや高めであるものの、SUVらしいスペースが確保されています。環境に優しく、クルマとしての使い勝手も高めた。ここにネッソならではの魅力があるのです。

↑カーゴルームはフロアが若干高めであるものの、SUVらしいたっぷりとした461Lの容積量を備えている

 

内装は品質が高く落ち着いた雰囲気

ネッソに試乗するためにキーで解錠ボタンを押すと、ドアの取っ手が自動的に手前に迫り出してきます。最近は空力特性を向上させるために。この手の「オートフラッシュドアハンドル」を採用するクルマが増え始めていますが、ネッソはいち早くこれを採用し、ここでもネッソは未来感に富んだコンセプトを持って開発されたことがわかります。

↑スマートキーで解錠ボタンを押すとアウタードアハンドルが自動的に迫り出してロックが解除される

 

運転席に座ると中央にビルトインされたコンソールと、正面の液晶ディスプレイに取り囲まれた先進的な雰囲気を伝えてきます。手で触れる部分は品質が高くしっとりした感触で、内装はグレー系でまとめられて落ち着いた雰囲気を醸し出しています。クルマからのインフォメーションは正面とダッシュボード中央の2か所に配置されたディスプレイが使われ、中央部の12.3インチディスプレイではエネルギーモニターやBGMとしてのイメージ映像、エアコンの作動状況などが映し出されます。

↑運転席周りは大型ディスプレイと共に近未来感にあふれている。ステアリングにはADAS系のコントローラーも備える

 

↑中央ディスプレイは12.3インチと大型でエネルギーフローやエアコンなどの動作状態がモニターできる

 

一方で、操作系では、中央コンソールにあるボタンが多すぎる気がしました。文字も小さめで、光の当たり具合ではその文字すら見えにくくなります。「HOME」ボタンがコンソール上に2つあるのも迷いがち。さらにミッションの切り替えスイッチもこのデザイン中に含まれており、少なくともこれぐらいはもっとメリハリのある別デザインにしてほしかったと思いました。

↑中央コンソールには数多くのボタンが並び、HOMEボタンも2つ。どれを操作したらいいのか迷ってしまうほど

 

↑シフトスイッチはこの4つのボタンを押して操作する。形状をもっとメリハリのあるデザインにして欲しいと感じた

 

走行可能距離は820kmと十分

さて、そのネッソを行動で走らせてみます。ヒョンデによれば水素をフル充填すると走行可能距離は820km(WLTC)ということで、これをエアコンの利用などを考慮して7割と見積もっても500kmは超えます。同じFCVであるミライは850km(グレードGの場合・WLTC)」と少し上回りますが、その差はわずかでいずれも十分に長い距離を走れるクルマと言えるでしょう。

 

電気モーターで発生するパワースペックは、最高出力120kWと最大トルク395Nm。それだけにアクセルを少し踏んだだけでモーターらしい太いトルクが伝わり、車重1870kgのボディを軽々と運んでくれました。モーターらしいフラットなトルクはどの速度域でも俊敏に反応してくれ、市街地はもちろん、高速道路の流入でも力不足は微塵も感じさせません。これは内燃機関とは大きく違う点です。

↑駆動は前輪で行い、モーターの最高出力は120kW、最大トルクは395Nm。水素タンクは3本備える

 

乗り心地もすこぶる快適でした。路面の凹凸をしっかり吸収しており、荒れた路面でもフラットな感覚で上手にいなしてくれるのです。若干、フワついた印象もありあますが、それは軽めのステアリングがそう感じさせるのかも知れません。300kmほど少し遠乗りもしてみましたが、同乗者からも乗り心地に不満は一切出ませんでした。SUVとしての走りは十分な満足度が得られそうです。

↑車内はSUVらしく広々とした空間で、車内スペースのあちこちに最高レベルの環境配慮型バイオ素材を採用。ストーングレーの内装はツートーンの組み合わせで落ち着いた雰囲気だ

 

↑後席は足を組んでもゆったり座れる広さがあり、リクライニング機構も備えているのでロングドライブも楽々

 

車外からリモコン操作で自動駐車

先進安全運転支援(ADAS)の機能も十分なものでした。センシングは単眼カメラとミリ波レーダーによる組み合わせで行う一般的なものですが、レーンキーピングではフラつくこともなく自然に進んでくれましたし、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)での先行車追従でも車間を安定して制御していました。

 

運転中のアシストとして感心したのが「ブラインドスポットビューモニター」です。一般的にこの機能はミラーにオレンジ色の警告表示が出るだけですが、ネッソではウインカーを出すと同時に、出した側の様子を映像でウインドウ風に表示するのです。この映像を通して死角をなくそうというわけです。

↑ウインカーを出すと、出した側の状態がカメラ映像を通してモニターされる。写真は右側のウインカーを出したときのもの

 

そして、自動で駐車できる「リモートスマートパーキングシステム」にも注目です。これは駐車可能なスペースを自動的に検出した後、車外からコントロールして駐車枠内に自動で収める機能です。作動中はリモコン操作で外部からコントロールするので、車内はまったくの無人。これで切り返しをしながら自動的に駐車するのだから驚きです。

 

操作手順としては、機能をONにしてゆっくり走ると、自動的に駐車できる枠を検出して停止するので、そこで並列駐車か縦列駐車するかを選びます。また、この機能は運転席に座った状態も可能で、その時はコンソールにあるリモートスマートパーキングシステムのボタンを押すだけです。まさに先進性をコンセプトにしたネッソらしい機能といえます。

↑案内に従ってクルマから下りてスマートキーの作動ボタンを押せば、切り返しながら自動的に枠内へクルマを駐車。操作ボタンを離すと停止します

 

ネッソを借りたいなら個人間カーシェアリング「エニカ」で

ではこの先進性あふれるネッソにはどうすれば日本で乗れるのでしょうか。ヒュンダイモーターコーポレーションの日本法人「ヒョンデ・ジャパン」によれば、韓国での価格は「約650万円から750万円」とのことですが、残念ながら日本での販売は今のところ未定。2010年に同社が日本市場から撤退して以降、その後、大型バスなどは展開しているものの、乗用車を再び販売するという話はまだ具体化されていないのです。

 

そんな中、唯一ネッソに乗れる方法が、冒頭でも触れた個人間カーシェアリングAnyca(エニカ)の会員になることです。エニカは個人が所有する車両を融通し合って貸し借りするカーシェアリングサービスです。多くのカーシェアリングは、レンタカーと同様の車両を貸し出すのと違い、個人が所有するオリジナリティあふれるクルマを借りられることが大きな特徴となっています。

↑エニカは会員登録費、月額費が無料です

 

↑エニカでクルマを借りるにはまず会員登録し、承認されるとスマホでクルマを選択できるようになります

 

↑クルマを借りる際は、登録した免許証をセンサー部にかざしてドアロックを解除

 

↑グローブボックス内の鍵で「貸出」にまわし、鍵を抜いて車両の電源をONにすればOK!

 

そして、もう一つの大きな特徴が自動車会社が所有するディーラー車をシェアするサービスも行っていることです。実はネッソもそのサービスの一環として展開しているものなので、これは「購入を想定したクルマを少し長めに試乗してから購入を決めたい」という声に応えて有料でサービスが始まったもの。すでに多くの自動車販売店が登録済みで、今回のネッソもヒョンデ・ジャパンが提供しているものなのです。エニカに登録して、日本ではなかなかお目にかかれないユニークなクルマに乗ってみるのも面白いと思います。

 

 

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