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昔、自転車のようにペダルが付いている“モペッド”と呼ばれるバイクがあったのをご存じでしょうか? 今回紹介するFANTIC(ファンティック)の「ISSIMO(イッシモ)」は同ブランドで過去に生産していたモペッドの名前を復活させたe-Bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)です。イタリア生まれらしい個性的なスタイルが魅力ですが、どんな走行性能なのか確かめてきました。

↑バイクとも自転車とも違う独特のデザインが目を引く「ISSIMO」。価格は39万6000円(税込)、カラー全4色展開

 

ヨーロッパで人気のオシャレなe-Bike

FANTICはイタリアに本拠を置くバイクメーカー。近年はe-Bikeの生産にも力を入れており、本格的な走破性を持つe-MTB(電動アシスト付きのマウンテンバイク)もリリースしています。「ISSIMO」はそんなブランドが都市でのモビリティとして開発したモデル。太いタイヤに負けないインパクトのあるデザインのフレームや、幅の広いハンドルなど、e-Bikeの中でも個性の強い1台です。

 

特にユニークなのがフレームの設計。跨ぎやすいステップスルーと呼ばれる形状ですが、横から見ると井桁状のトラス構造になっていて、剛性を確保するとともに個性的な見た目にも一役買っています。

↑アルミ製のフレームは幅も広く、井桁構造にすることで剛性を確保しています

 

↑フロントにはバッテリーから給電されるライトを装備。フレームに埋め込まれたようなデザイン

 

↑リアにはボックス状のキャリアを装備していて小物を入れられます。この部分のないモデルもラインナップされています

 

e-Bikeの心臓部であるモーター(ドライブユニット)はBAFANG製。車体の中央に搭載するセンタータイプで、e-MTBなどにも採用されるグレードの高いユニットが装備されています。バッテリーも車体中央に近い位置に搭載され、フル充電でのアシスト可能な距離は70〜120kmとなっています。

↑ドライブユニットは「M500」というスポーツモデルにも採用される上位グレード

 

↑フレームと一体でデザインされたバッテリー。630Whと容量はかなり大きい

 

↑ハンドル中央部にディスプレイを装備。アシストは5段階に切り替えられる。USB端子も標準装備

 

変速ギアやハンドルなどの操作系もユニークなパーツセレクトになっています。変速ギアは5速ですが、シマノの内装式で一般的な外装式と違って停車中の変速操作もできるのが特徴です。シティサイクル的なフレーム形状ながら、ハンドルはマウンテンバイク並みに幅広で、前後に制動力の高い油圧ディスクブレーキを装備しているところも興味深いところです。

↑シマノ製「NEXUS」の内装5段変速を採用。メンテナンス頻度が少ないのもメリットです

 

↑ブレーキは前後とも油圧式で、ディスク径も大きい180mmとマウンテンバイク並みのスペック

 

↑フロントにはサスペンション式のフロントフォークを採用。ストロークは短いながらも作動はスムーズ

 

↑ハンドルの形状はシティサイクルっぽいですが、幅はマウンテンバイク並みに広い

 

↑グリップはエルゴノミック形状で、シフトやコントローラーの操作も右手側で行う

 

↑街乗り向けの車種なので、安定性に優れたサイドスタンドも標準で装備

 

似たものはないが作り込まれた乗り味

低く跨ぎやすいフレームに、幅広でお尻をしっかり受け止めるシート、それにアップライトなハンドルは街乗りにフォーカスしたモデルであることを感じさせます。ただ、実際に乗ってみると幅の広いハンドルによく効くブレーキの組み合わせは、マウンテンバイクに乗っているような感覚で、ママチャリタイプの電動アシスト自転車とは明らかに異なる上質さです。車重は33.5kgとかなり重いのですが、ペダルを回すと軽々と進むので、その点も普通の自転車とは異なり、新しい乗り物に乗っている感覚。バイクとも自転車とも違うe-Bikeならではの乗り味と言えるでしょう。

↑のんびり走っているようですが、軽々と進んで行く感覚はe-Bike独特のもの

 

重量級の車体ながら軽快に進むのは、BAFANG製の「M500」ユニットが80Nmとスポーツモデル並みのトルクを発揮できる性能を持っているから。ペダルを踏み込むというより回すような感覚ですが、これにはセットされているクランクが短いことも効いていると感じました。少ない動きでペダルを回せるので、脚の筋肉をほとんど使わずに進んでいくような気分です。

↑高トルクを発揮する「M500」ユニットに、短いクランクの組み合わせが独特の乗り味に貢献

 

力を使わずにスムーズに進む感覚は、登り坂でも同様で、ペダルを回しているだけでスイスイと登っていくことができます。坂道でも太ももの筋肉はほとんど使いません。

↑ペダルを踏み込まずに回しているだけで登って行く不思議な感覚

 

車体自体の設計も優れているようで、荒れた道を走ってもハンドルを取られることはありませんし、コーナーリングも太いタイヤと高剛性のフレームのおかげでバイクのような安定感です。今までにない新しい感覚の乗り物に仕上がっている「ISSIMO」。さらに、さまざまなカラーやデザインのサイドカバーの追加も可能で、ユーザー好みのカスタマイズも楽しめます。従来のバイクや自転車に物足りなさを感じている新しもの好きな人は、ぜひ一度乗ってもらいたい完成度です。

 

撮影/松川 忍

 

 

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