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菅義偉(すが・よしひで)首相(自民党総裁)が不出馬を表明した次期総裁選(17日告示、29日投開票)をめぐり、党内第2派閥である麻生派(志公会、53人)の対応が焦点になっている。

 派内では立候補の意向を示した同派の河野太郎ワクチン担当相に期待が高まる一方、言動を危ぶむ向きもある。また、新型コロナウイルス対策に失敗すれば「河野内閣」は短命に終わりかねず、河野氏の出馬に慎重な領袖(りょうしゅう)の麻生太郎副総理兼財務相のかじ取りが注目される。

3日午後、東京・霞が関の財務省大臣室。総裁選出馬に傾く河野氏と向き合った麻生氏がこう言葉を投げかけた。「最後は自分で判断しな」

かねて、河野氏は総裁選出馬に意欲を示してきた。会員制交流サイト(SNS)を駆使した発信などで国民的な人気があり、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査における「次の首相にふさわしい政治家」との設問では、4カ月連続でトップに立った。

首相が不出馬を表明した3日、河野氏は早速、衆院議員会館で複数の議員と面会し、総裁選への対応について意見を交わした。新型コロナへの対応をめぐり、菅内閣の支持率は低迷。総裁選後に控える衆院選への影響も懸念される中、麻生派若手には「状況を打破するなら河野氏が首相になるべきだ」との意見が多い。

ただ、新型コロナへの対応は容易ではない。政権批判で「河野内閣」が短命に終わらぬよう、派内からは「火中の栗」を拾うべきではないとの声も漏れる。一方、河野氏が昨年、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を根回しなしで発表するなど、過去の言動を不安視する意見も少なくない。「派として河野氏でまとまる雰囲気はない」(麻生派ベテラン)として、立候補を表明している岸田文雄前政調会長を推す声もある。

数々の政局を経験した麻生氏は、決選投票となった場合などを念頭に置きつつ、派にとっての「最適解」を導こうとしているとみられ、周囲には「河野は自分が置かれている状況が分かっていない」ともつぶやいているという。

(今仲信博)