新型コロナの影響で長引く経済不況。スリランカでは、国を出て海外就労を目指す若者が増えているという。10月22日付けのスリランカの英字紙デイリーニューズは、この問題を社説で採り上げた。
パスポート発行所に長い列
社説によれば、国外での就労を希望する若者が急増しているという。
「パスポート発行所には、連日、長蛇の列ができている。その多くが、より明るい未来を求めて国を出て、海外での就労を希望する若者たちだ。出入国管理局の担当官によると、以前は1日あたり1000件程度だったパスポートの申請件数が、最近は1日あたり1500件程度に増えているという。首都コロンボのパスポート発行所でも、この10日間で1万2158人がパスポートを受け取り、1万1242人が発行を待っている状態だという」
長年におよぶ民族紛争の影響から、スリランカでは、医療関係者、建築家、エンジニアなどの技術者が国外に流出した。社説は、「彼らが祖国に残って力を発揮してくれていたら、この国はもっと発展した、豊かな国になっていただろう」と、嘆く。さらに社説は、スリランカ政府が国外に流出した人々に「祖国に戻って能力を発揮してほしい」と呼びかけ、さまざまなインセンティブを提案していると伝える。
「こうした呼びかけにどの程度の反応があったのかは分からないが、現在のところ、さまざまな分野で退化やアマチュアリズムが横行しているのを見れば、効果はなかったと思われる」
新型コロナが追い打ち
こうした人材流出に加え、新型コロナによる経済低迷が追い打ちをかけた。社説は、欧米諸国が奨学金を提供して高学歴の若者を招いていることによって問題が複雑化していると指摘した上で、危機感を隠すことなく次のように述べる。
「創造的な考えやイノベーティブな技術を持ち合わせない高齢者が国に残り、才能ある若者たちは外国へと出て行くという状況が続けば、今後、この国の未来に何が待ち受けているか考えてほしい。政府は、今こそ本気で対策を考えるべきだ。何よりもまず、才能ある若者たちに適切な環境と機会を与えることが必要だ」
さらに社説は、ボートに乗って海外に逃れようとした違法移民についても触れ、「国内経済が回復しなければ、前述のような留学や就労を希望する若者だけでなく、こうした違法移民も増える恐れがある」と指摘。経済の回復に最優先で取り組むべきだと訴える。
新型コロナの感染拡大を受けた行動制限が緩和され始めた今、人はまず、「最も必要」だと思うことから行動し始める。それは、仕事と、それにつながる教育だ。しかし、少子高齢化の進む先進国ですら人材不足は深刻で、奨学金を提供してでも途上国の優秀な人材を迎え入れようと躍起になっている。多くの場合、それは「援助」ではなく、「真剣なお願い」だ。途上国の人材流出は、先進国における人材不足と裏表の関係にある。
(原文https://www.dailynews.lk/2021/10/22/editorial/262554/cause-concern)
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