Slackが立ち上げた未来の働き方を考えるコンソーシアム「Future Forum」において、リモートでの従業員体験に関する最新結果を紹介するメディア説明会が10月5日、オンラインで開催された。
説明会では、株式会社セールスフォース・ドットコムの水嶋ディノ氏(Slackアライアンス本部シニアディレクター)が登壇し、Slackが四半期に一度、実施している調査「Future Forum Pulse」の結果をまとめた「リモートでの従業員体験レポート」を発表した。調査期間は7月28日~8月10日、調査対象者はフルタイム雇用(週30時間以上勤務のナレッジワーカー)で、回答者数は1万569名。
国別で見ると、回答者の約半数が米国で、残り約1000人ずつが日本、オーストラリア、フランス、ドイツ、英国の5カ国という構成になっている。また、職種としては管理職(経営幹部、上級管理職、中間管理職、ラインマネージャー、チームリーダー)、非管理職(シニアスタッフ、アナリストやデザイナーなどの専門職)など多岐にわたっている。
リモートワーク/ハイブリッドワークによって仕事の満足度が向上
調査結果によると、57%の従業員が「今後1年以内に新たな仕事を探す可能性がある」と回答した。これは3カ月前の調査結果と比較して増加傾向となる。また、従業員の仕事に対する満足度については、1位の「報酬」に次いで、2位は「柔軟性」となった。柔軟性については、76%の従業員が「働く場所の柔軟性が欲しい」と回答し、それを上回る93%の従業員が「働く時間の柔軟性が欲しい」と回答した。
勤務場所について国別の回答を見ると、日本の場合は「毎日オフィスのみで勤務したい」と回答した人が31%おり、6カ国中で最も多い結果となったものの、全体で見ると約7割の従業員が「毎日オフィスで働きたくはない」と回答している。さらに、日本における勤務場所別の仕事に対する満足度を見ると、ワークライフバランスや生産性、仕事上のストレスや心配事、仕事への集中といったいずれの指標においても、リモートワークまたはハイブリッドの方がオフィス勤務をしている人よりも仕事に対する満足度が高いという結果となった。
また、現在リモートワークまたはハイブリッドを実施中の回答者のうち、女性従業員の85%、男性従業員の79%は、より柔軟かつハイブリッドな働き方を希望しており、特に子どものいる女性の場合は時間の柔軟性を重視する傾向が高かった。日本における男女別・子育ての有無別の仕事に対する満足度を見ても、ワークライフバランスや生産性などほぼ全ての指標において、女性で子育てをしている人がリモートワークまたはハイブリッドの働き方に対して満足度が高いことが分かった。
リモートワークに対する意識、経営層と従業員にズレ
このように従業員は働く時間と場所の柔軟性を重視し、リモートワークに意識が向いている一方で、リモート勤務のナレッジワーカーのうち、経営層でフルタイムのオフィス勤務を望む人は44%となり、同じことを望む従業員(17%)の3倍近くになった。また、現在リモートで働いている経営層のうち、週に3~5日はオフィスに戻りたいと考えている人の割合が75%であるのに対して、それに同意する従業員の割合は34%だった。いずれの調査結果からも、経営層と一般従業員の意識に大きなズレがあることが浮き彫りとなっている。
こうした経営層と従業員のズレが生まれている要因として、水嶋氏は「仕事に対する満足度の相違」「偏った意思決定プロセス」「透明性の欠如」の3つを挙げている。
「仕事に対する満足度の相違」については、経営層は非経営層に比べて仕事への満足度が62%も高いという結果となり、四半期ごとの比較を見ると、経営層の働く環境に対する満足度は3%上昇しているのに対して、従業員は5%低下していた。
「偏った意思決定プロセス」については、経営層の3分の2が、自社におけるコロナ後の働き方について経営層のみで意思決定を行い、従業員の声をほとんど採り入れていないと回答した。意思決定の主導者については、69%の経営層はCEOが主導し、CHRO(最高人事責任者)が主導しているケースは3%と少なく、従業員の声が届きにくいことが分かった。
「透明性の欠如」については、コロナ後のリモートワークへの方針について、66%の経営層が「透明性が非常に高い」と回答しているのに対して、これに同意する従業員は42%で半数以下という調査結果となった。
働く場所と時間に「柔軟性」を持たせることの大切さ
こうしたことから、優秀な人材を獲得して人材競争に勝つためには、このような経営層と従業員のギャップを埋めることが急務であり、そのために重要なこととして水嶋氏は「柔軟性を備える」「インクルージョンを育み奨励する」「透明性を高めてつながりを築く」の3点を挙げた。
例えば、働く「場所」が柔軟な人の方が、そうでない人に比べて、「ワークライフバランスが良い」と感じている人は2.0倍、「仕事のストレスにうまく対応できている」と感じている人は2.4倍多いという調査結果が出ている。また、働く「時間」が柔軟な人の方が、そうでない人に比べて「ワークライフバランスが良い」と感じている人は3.2倍、「仕事のストレスにうまく対応できている」と感じている人は6.6倍多いという調査結果も出ている。いずれにしても、仕事に柔軟性を持たせることによって、従業員の仕事に対する満足度が向上することが分かった。
透明性については、自社での方針が「非常に透明性が高い」と思えない従業員は、仕事への満足度が低く、職場を公平だと感じられず、「自分が尊重されている」と思えない傾向が高いことが分かった。一方、「自分の会社は透明性が高い」と回答した従業員は、そうでない人に比べて「会社の将来に期待している」と感じる割合が2倍高いことが分かった。
「デジタルファースト」を実現するためのSlackの最新機能
水嶋氏は、このような従業員の意識を経営層が真摯に受け止めて、優秀な人材を獲得して定着してもらえるような働く環境を作るためには、経営層の意識変革が大前提となることに加えて、それを具体的に実行する手段として、適切なテクノロジーとツールを活用することが重要であると語った。
Future Forum Pulseの調査結果によると、日本企業においては、新しい技術やツールを採用して活用することについて積極的な企業ほど、採用の意欲が低い企業に比べて、従業員の仕事に対する満足度が高かったという。ポストパンデミックのリモートワークやハイブリッドワークの時代においては、デジタルファーストにしていくことで従業員の生産性や満足度を高め、優秀な人材の獲得と定着に寄与できると水嶋氏は語った。
水嶋氏はさらに、このようなデジタルファーストな働き方を実現するためのSlackの新機能として、関係者と情報を1カ所に集めてほかの組織との共同作業をシンプルな方法で実現する「Slackコネクト」、短いビデオや音声など作成して共有できる「クリップ」、廊下でのカジュアルな雑談や突発的なブレストの再現を目指した音声ファーストなコミュニケーション機能「Slackハドルミーティング」の3つを紹介した。
これらの機能は、時間の柔軟性を確保するために「非同期型のコミュニケーションをいかに採り入れるか」ということを意識して開発されたという。
水嶋氏は発表の最後に、「Slackはデジタルな職場を実現するための製品であり、より柔軟で包括的で、つながりのある働き方を実現するために、さまざまな機能を提供して今後も強化していきたいと思います」と締めくくった。
一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。