この記事は Kristen Richards による The Firebase Blog の記事 ” What’s new at Firebase Summit 2021 “を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
私たち Firebase チームは、人々が学び、生活を向上させ、行くべき場所に行き、ビジネスを成長させるうえで、デベロッパーの皆さんが重要な役割を果たしていると考えています。私たちが、使いやすく拡張可能な統合ツールを提供しようと懸命になっているのは、そのためです。そうすることによって、たくさんの人々が必要不可欠と感じ、かつ気に入ってもらえるエクスペリエンスを、継続的に皆さんが作成できるようにしたいと考えています。
スタートアップ企業からグローバル企業まで、あらゆる規模の企業が作った数百万個のアプリが、毎月 Firebase を積極的に活用しています。皆さんの信頼こそが、私たちが Firebase をさらによいものにしたいと考える動機です。 先日、Firebase Summit がバーチャル イベントとして復活しました。このプラットフォームのアップデートをお披露目できて光栄です。いずれのアップデートも、アプリ開発を加速させ、自信をもってアプリを運営し、簡単にスケールアップを実現するうえで役立ちます。ここでは、それぞれの新機能を詳しく紹介しますので、ぜひお読みください。イベントのウェブサイト (英語) には、Summit で紹介したたくさんのすばらしいコンテンツ(テクニカル セッション、デモ、Pathway など)がありますので、そちらも忘れずにチェックしておきましょう!
お時間がない方は、特定のセクションにジャンプできます。お時間のある方は、ぜひ記事全体をお読みください。
新しいビルディング ブロックでアプリ開発を加速
自信をもってアプリを運営するために実用的な知見を獲得
強力なエンゲージメント ツールによる容易なスケーリング
新しいビルディング ブロックでアプリ開発を加速
Firebase は効率的に操作できるフルマネージドなインフラストラクチャを提供するので、皆さんは一番重要なことに集中してアプリを開発、運営できます。
重要な e コマース機能を短時間で追加する新しい拡張機能
Firebase Extensions は、あらかじめパッケージ化されたコードバンドルにより一般的な開発タスクを自動化する仕組みです。これを使うと、わずかな手順でアプリに機能を追加できます。私たちは、皆さんが信頼するおなじみの企業と連携し、新しい API を学ぶことなくさまざまなサービスを組み込めるようにしています。先日、Stripe の仲間たちが、Run Payments with Stripe (英語) 拡張機能にワンタイム支払い機能と SDK (英語) を追加してくれました。ウォレット、銀行へのリダイレクト、後払い決済など、アプリで 15 種類以上の支払い方法に対応できる新機能もリリースしたばかりです。
さらに、アプリに短時間で重要な e コマース機能を追加できる新しい拡張機能も複数発表しました。これらの拡張機能を使うと、ShipEngine で商品の出荷や追跡を行ったり、SendGrid のメールや Twilio の SMS メッセージを使ってショッピング カートを放置しているユーザーに働きかけたり、Elastic による Cloud Firestore 検索を実装したりできます。Google Pay を通じて、1 つのインターフェースで複数のプロバイダからの支払いを受け付けることもできます。複数の国でアプリをリリースする場合、この仕組みは特に便利です。詳しくは、Firebase Extensions のページにアクセスし、早速インストールしてみてください。始めるにあたってアイデアがほしいという方は、17 種類以上の拡張機能を使っている GitHub のサンプルアプリのコードをご覧ください。デプロイされたバージョンは、https://karas-coffee.web.app/ (英語) でご覧いただけます。
私たちのパートナーが Firebase とコラボレーションして作り上げた、これらの新しい拡張機能を活用すると、短時間でアプリに e コマース機能を追加できます
Apple プラットフォーム、ゲームエンジン、Flutter のサポート強化
うれしいお知らせです。Firebase が tvOS と macOS に対してベータ版レベルのサポートを提供するようになりました!つまり、お気に入りの Firebase プロダクトを使って Apple TV や Macbook 互換のアプリを開発し、運営することができます。コードベースは 1 つなので、手間を減らしつつ、優れたクロスデバイス エクスペリエンスをユーザーに提供できます。たとえば Crashlytics SDK を追加すれば、致命的なクラッシュを特定したり、Firebase Crashlytics コンソールで Apple デバイスの種類やオペレーティング システムでクラッシュを絞り込んだりできます。
Apple プラットフォームのサポート強化により、スムーズなクロスデバイス エクスペリエンスの提供が可能になります
ゲーム デベロッパーの皆さんは、Google の C++ SDK の多くが Apple TV をサポートしたと聞けば喜ぶことでしょう。あの Apple Arcade ゲームを、Firebase を使って開発できるからです。また、その機能をベースに、Cloud Firestore を Unity と C++ に対応させることで、ゲーム フレームワークとゲームエンジンのサポートを強化します。これによって強力な Cloud Firestore をすぐにゲームで利用できるようになり、ゲームのデータをほぼリアルタイムに格納したり同期したりできます。さらに、オフラインをサポートすることも、数千人以上のプレーヤーをサポートするようにゲームをスケールアップすることもできます。
Cloud Firestore が Unity と C++ に対応し、リアルタイム データ同期機能やオフライン サポートを提供します
また、Crashlytics の Unity SDK と NDK SDK に多数の大幅な改善を加え、ゲームのコードベースを簡単にデバッグできるようにしました。現在、Crashlytics により、ネイティブ コードでのクラッシュをより広範囲に追跡できるようになっています。Unity ゲームの IL2CPP もサポートされ、C# コードにマッピングできるシンボル化した C++ フレームが増えています。
最後に、Flutter のオンライン エディタである Dartpad の最新リリースにより、Flutter (英語) と Firebase を併用することで、お使いのブラウザだけでプラットフォームを超えてユーザーを獲得するアプリを開発できるようになっています。Flutter は Google のオープンソース フレームワークであり、1 つのコードベースから、ネイティブ コンパイルが可能な美しいマルチプラットフォーム アプリを構築できます。これは、Firebase のクロスプラットフォーム バックエンド サービスを自然に補完するものです。また Dartpad が Cloud Firestore と Firebase Authentication をサポートしました。これ以外の Firebase プロダクトも、近日中にサポートする予定です。dartpad.dev を開き、Firebase パッケージをインポートすると、実際に試してみることができます。サンプルアプリもご覧ください。
Flutter のオンライン エディタである Dartpad が、細かい設定なしに Firebase をサポートするようになりました
App Check によるアプリのセキュリティ強化
App Check を皆さんに紹介したのは数か月前のことでした。App Check は、バックエンド インフラストラクチャに強力なセキュリティ レイヤーを提供します。これは、着信するトラフィックが正規のデバイスにインストールされたアプリから来ていることを証明し、有効な認証情報を持たないトラフィックをブロックすることで実現しています。今回の 3 つの大きなアップデートによって、App Check で行えることがさらに増えました。
1 つ目は、App Check を使って、以前お知らせした Cloud Storage for Firebase、Realtime Database、Cloud Functions for Firebase に加えて、Cloud Firestore へのアクセスを保護できるようになったことです(Firestore Web SDK も近日中にサポートします)。2 つ目は、App Check を任意のカスタム バックエンド リソースで使えるようにするために、カスタム サーバー保護を追加したことです。この機能には、Apigee などの API 管理プラットフォームや、CloudFlare などの CDN とも統合されています。3 つ目は、App Check がサポートする証明書プロバイダの数を追加し、Apple のアプリ証明書プロバイダである App Attest や reCAPTCHA Enterprise をサポートしたことです。早速 App Check にアプリを登録し、Firebase コンソールから保護を適用してみましょう。App Check の詳細については、ドキュメントをご覧ください。
App Check がアプリとユーザーデータを保護します
導入予定の Google Play のセーフティ ポリシーについての詳細ドキュメント
各 Firebase プロダクトが収集および共有するデータを明示した詳細ドキュメントを公開しました。これは、Google Play に導入予定のセーフティ ポリシー (英語) に準拠するうえで役立ちます。私たちの目標は、プライバシーと透過性に対する Google の取り組みを土台として、Google Play の新しいデータ セーフティ セクションの準備をいち早く行ってもらえるようにすることです。このセクションは、来年にはアプリのユーザーに公開される予定です。
これらの画像は方向性を示すものであり、変更される場合があります。
自信をもってアプリを運営するために実用的な知見を獲得
Firebase を使うと、アプリのパフォーマンスや安定性を監視したり、変更点をテストしたり、問題を解決する方法についての知見を得たりできるので、可能な限り最高のエクスペリエンスを提供できます。
Performance Monitoring の新しいリアルタイム アラート
Firebase Performance Monitoring はアプリのパフォーマンスについてのデータを収集して提示してくれるので、アプリで厳密に何が起きているのかや、アプリが遅いとユーザーが感じたタイミングをユーザー視点で把握することができます。しかし、ローカルマシンでどれほど徹底的にアプリをテストしたとしても、ユーザーは異なるデバイス、異なる国、異なるネットワーク スピードでアクセスしているため、アプリに遅延の問題が発生する可能性が残ります。そこで、皆さんに情報を提供し続けることができるように、パフォーマンス アラートという新機能をベータ版としてリリースします。この新しいパフォーマンス アラートは、遅延の問題が発生したときに即座に調査や修正ができるように、アプリの起動時間が一定のしきい値を超えるとメールを送信してくれます。パフォーマンス アラートはコンソールから設定できます。その他のパフォーマンス指標のアラートも、近日中に追加する予定です。
Performance Monitoring の新しいリアルタイム アラートを使うと、アプリの起動時間が遅くなったときに通知を受け取ることができます
Crashlytics に ANR(応答しないアプリ)レポートとシグナルを追加
Firebase Crashlytics を使うと、アプリの安定性を完全に把握することができるので、バグによりたくさんのユーザーに影響がでる前に、バグの追跡や優先順位付け、解消を行うことができます。また、Crashlytics で Apple のプラットフォームやゲームのレポートのサポートが強化された結果、Crashlytics が ANR(応答しないアプリ)エラーを報告できるようになりました。私たちの調査によると、ANR は Android のすべての意図しないアプリ終了のほぼ 50% を占めています。つまり、アプリの品質にとって、クラッシュよりも ANR の方が有害である可能性があります。そこで、アプリの安定性の問題を完全に把握できるように、Crashlytics は ANR と影響を受けたスレッドのコンテキスト情報を報告するようになります。そのため、ANR が起きる理由をピンポイントで特定できます。
Crashlytics が応答しないアプリによるエラーを報告するようになったため、アプリの安定性を包括的に把握できます
また、Crashlytics の新しいコンセプトであるシグナルも導入しました。このシグナルは、クラッシュを分析してトラブルシューティングに役立ちそうな共通点や特徴を見つけます。今回、早期クラッシュ、新しい問題、繰り返しの問題を表す 3 つのシグナルをリリースしました。早期クラッシュは、ユーザーがアプリを起動してすぐに発生したクラッシュを指します。新しい問題は直近 7 日以内の新しい問題を、繰り返しの問題はユーザーが何度も繰り返し遭遇している問題を指します。シグナルは、Apple と Android の両方のアプリ デベロッパーが利用できます。次にアプリをリリースするときに、ぜひ確認してみてください!
Crashlytics のシグナルは、トラブルシューティングに役立つ可能性があるクラッシュの共通点や特徴を明らかにします
強力なエンゲージメント ツールによる容易なスケーリング
Firebase は、エンゲージメントや収益の増加など、皆さんが望むビジネスの成果を実現するために必要な制御や自動化、柔軟性を、アプリの拡大に合わせて提供します。
Cloud Messaging と In-App Messaging のキャンペーン管理機能の統合
Firebase Cloud Messaging を使うと、異なるプラットフォームのユーザーを対象に、ターゲットを絞ってカスタマイズしたプッシュ通知を自動で簡単に送信できます。そのため、 積極的にアプリを使っていないユーザーにアプローチできます。Firebase In-App Messaging を使うと、コンテキストに合わせたメッセージを 積極的にアプリを使っているユーザーに送れます。そのため、重要なアプリ内アクションを行ってもらうように促すことができます。この 2 つのプロダクトは、連動してユーザーのエンゲージメントを維持します。今回、コンソールによる操作を再設計し、この 2 つの機能を統合しました。この統合ダッシュボードを使うと、メッセージング キャンペーン全体を包括的に確認できるので、異なるユーザーを対象に洗練されたマルチタッチ キャンペーンを行い、その反応を 1 か所で確認できます。たとえば、Cloud Messaging と In-App Messaging の両方が Google アナリティクスの新しい予測オーディエンスとシームレスに連携するので、離脱しそうなユーザーにクーポンコードを送信してつなぎ止めることができます。新しい統合ダッシュボードを使ってみるには、コンソールを開いて [Preview now] ボタンをクリックしてください。
Cloud Messaging と In-App Messaging の統合ダッシュボードでは、1 か所でキャンペーンの確認と管理が行えます
Remote Config コアの改善とパーソナライゼーション機能のベータ版リリース
ユーザーを維持して喜ばせるためのもう 1 つの方法は、ユーザーのニーズや嗜好に合わせてアプリをパーソナライズすることです。Firebase Remote Config を使うと、新しいバージョンをリリースすることなく、アプリの外観や動作を動的に制御して変更できます。今回、パーソナライゼーションと呼ばれる新しい Remote Config の機能がベータ版としてリリースされたことをお知らせします。パーソナライゼーション機能は、皆さんが重視する目標を最大化できるように、機械学習の力を利用して個々のユーザー エクスペリエンスを 自動的に 最適化してくれます。最初にシンプルな設定さえしておけば、それぞれのユーザーの成果が最高になるようなアプリの設定を継続的に見つけて適用してくれるので、皆さんの負担を軽減できます。
ジェットパック・ジョイライド、ダン・ザ・マン、そして人気作 Fruit Ninja などのタイトルを手がけているゲームスタジオ Halfbrick は、既にパーソナライゼーションを使って収益を 16% (英語)、アプリストアでの肯定的な評価を 15% アップさせています。別の早期ユーザーである Ahoy Games は、たくさんのゲームでパーソナライゼーションを試し、チームの作業をほとんど、あるいはまったく行うことなく、アプリ内購入を 12~13% 増加 (英語) させています。
Remote Config のパーソナライゼーションは、目標を達成するために機械学習を使ってユーザー エクスペリエンスを最適化します
Remote Config のコア機能にも、いくつかの改善を加えました。たとえば、パラメータの編集フローをアップデートしてターゲッティング条件やデフォルト値の変更を簡単にしたことや、データタイプのサポートの追加によってデータの検証を強化し、不適切な値をユーザーに配信してしまうリスクを軽減したことなどです。さらに、変更履歴を刷新し、最後のパラメータの変更がいつどのように行われたのかがはっきりわかるようにしました。これにより、主な指標の変化と相関性があるのはどの設定の変更なのかが理解しやすくなります。Remote Config のコンソールを開くと、これらのアップデートを確認できます。早速パーソナライゼーションをお試しください。
Remote Config のターゲッティングとデータ検証の改善
皆さんのアプリ体験をサポートするパートナー
私たちは、アプリの開発から最適化まで、すべての行程をサポートするパートナーです。私たちが目指すのは、アプリ開発を簡単かつ高速にし、皆さんが効率的に成功を収められるようにすることです。ユーザーやビジネスにとって最適なアプリにするため、ぜひ Firebase をご活用ください。今回お知らせした内容についてさらに詳しく知りたい方は、Firebase Summit のテクニカル セッションや Codelab、デモをご覧ください (英語)。2022 年にリリースされる予定の機能を一足先に見てみたい方は、アルファ版プログラムにご参加ください (英語)。
Reviewed by Tamao Imura – Developer Marketing Manager, Google Play