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 近年、女性用風俗の存在は広く認知されはじめた。「女性がココロとカラダを満たす場所」として利用が一般的にも認められつつあると同時に、セラピスト市場も拡大し、店舗が乱立し、しのぎを削っている。AV女優や現役風俗嬢と酒が飲める「SODランド」にもAV男優兼セラピストが出勤するようになる他、女性用風俗で働くキャストが接客する「女風バー」も出現し始めた。

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 しかし、市場の拡大とともに価格崩壊、過剰サービス、セラピストからの搾取など根深い問題も露呈してきた。今回は女性用風俗で働くセラピストにスポットライトを当て、彼らのリアルに迫る。

女性用風俗のサービスと客層

 そもそも、女性用風俗のサービス内容とはどのようなものなのか。男性向けの風俗にはメンエス、ピンサロ、ヘルス、ソープと多業種が存在するが、女性用風俗は基本的には「オイルマッサージ+性感マッサージ」の施術がサービス内容となる。メンズエステとヘルスの融合のようなサービス内容で、基本的には本番行為(挿入行為)は禁止されている。店舗によってはデートコースや電話コースも存在し、女性のちょっとした心の隙間を埋められるようなサービスを展開していることが見て取れる。価格は相場として120分で2万〜2万5000円程度である。ホテル代や交通費を考えても、3万円あれば足りる価格帯だ。


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 セラピストのバックは4割〜6割が基本で、時給換算すると5000円前後となる。男性向け風俗で働く風俗嬢の平均給与はヘルスで60分1万円前後で普通の女の子が来ることを考えると、女性用風俗の平均相場の低さとセラピストのバックの安さが分かるだろう。男性向けの風俗で風俗嬢のバックが5000円の店舗は、いわゆる「激安店」と呼ばれ高齢の女性や指名の入りづらい女性が働いていることが多い。その点、女性用風俗のセラピストは容姿のレベルも比較的高く、平均値が高い割に料金も安いものとなっている。

 女性用風俗の客層は主に40代前後がボリューム層だ。V系寄りのセラピストの客層は「4割は主婦や普通のOL、4割は夜の仕事をしている女の子、残りの2割が何をしているかわからない人。お嬢様や芸能系もいる」とのことだった。この割合はセラピストの系統によっても変わってくるので正確な割合はわからないが、どのセラピストに聞いても共通することは「ボリューム層は容姿にややコンプレックスを抱いている中年女性」であるという。

夫とずっとセックスレスで…

「私は夫とずっとセックスレスで。もう一生女としての瞬間はないのかな…と思っていた矢先、女風というものを知って沢山調べました。今では女風専用のTwitterアカウントも作って、日々情報を集めています。秘密の趣味って感じですね」そう語るのは女性用風俗利用歴半年のヒトミさん(43)。

「初めて予約したときは本当にドキドキしてて。何度もキャンセルしようかな…って悩みました。普段見せてない裸を、年下の男の子に見せるなんて。相手も嫌なんだろうなとか気にしてしまって。そして遂にセラピストさんとご対面。最初から『今日の洋服可愛いね』とか、『ヒトミちゃんタイプだよ』ってほめてくれて。冬だったので、温かいお茶と普通のお水をサービスで買ってきてくれていて感動しました。施術もじっくりほぐしてくれて、気持ちよくて満たされました。久々に女としての自分を感じました」

 初回の利用から今では月に1、2回120分〜180分でセラピストを呼ぶというヒトミさん。「まだ私は『沼』って言えるほど入れ込みたいセラピストさんがいなくて、いろんな人を指名しています。でも、今後ハマってしまうかも…」

 こうした女性客の要望を、セラピスト側はどう受け止めているのか。某名門大学を卒業後、専業セラピストとして1年近く働いているナツキさん(26)はこう語る。

「女風での接客ってこちらが性器を出す必要性は必ずしもなくて。僕は基本パンツを穿いたまま施術します。舐めたい、触りたいっていうお客さんも中にはいるけど、そういう人は少数なので。けど、こちらが攻めている時に僕が勃起しているかを気にする女性は多いですね。『私、まだ女としてイケる?』ってところを、相手が興奮しているか、勃起しているかで確かめようとしている感じです。こちらとしても営業で『可愛いよ』『興奮した』とかいうんですけど、勃起してないとやっぱり信憑性がないので。連続の時は勃起薬飲んだり、挿入しなくてもそういう気づかいは必要です」

女性用風俗は男性向け風俗以上に心を消費される

「僕は人間関係をうまく作るのがとにかく苦手で、就活をしたけど会社で働いていける気がしなくて。とりあえず生活のために夜の仕事、って考えたときにホストと違ってセラピストなら1対1だし、施術中は喋らなくていいかな…と思って面接を受けました」

 大手の女性用風俗店に面接を受けに行ったナツキさん。講習費という名目で適当なアドバイスと、実際に50代の大柄な女性への施術を行い、講習料として7万円を支払ったのちにセラピストとしてデビューした。

「施術自体は作業みたいなものなので嫌悪感はありません。高齢の方だと肌の水分がなくて、マッサージしていくときに手が削られるくらい。女体もだんだんただの『肉』みたいな感覚になるので、ムラムラしたりはほとんどありません。現役のAV女優が来た時も勃起すらしませんでした」

 そんな彼が施術以上に辛いと零すのが、女性客の「心のケア」だという。

「今はセラピストが増えすぎていて、自分からTwitterのDMとかで営業をかけたり、写メ日記を更新しないと客が全くつかない。指名してくれてからも連絡を毎日取ったり定期的にケアしないとリピートにはつながらない。時間外労働が多すぎるし、中には時間外に電話をかけてくる人もいる。それだけ頑張っても時給は5000円以下って考えると、本当に安い仕事だと思います」

 男性客でも風俗嬢のことを「風俗嬢のくせに」と見下している発言を見かけるが、女性向け風俗でもそうしたわずかな差別意識は見て取れる。掲示板やSNSでは、「所詮女に買われている男」「将来性ゼロ」「バター犬」などの言葉を見かけることもある。ホストクラブと違いセラピストが女性客に徹底的に尽くし、エスコートを求められる女尊男卑のシステムが出来上がっているのだ。

基本サービス以外の『特別感』

「とにかく、女性は基本サービス以外の『特別感』に固執します。マニュアルで店側に指示されるのですが、毎回初指名のお客さんにはドリンクを自費で購入して持っていくんです。その数百円を2回目、3回目と指名してもらった時に止めただけでめちゃくちゃ怒られたり。時間が終わってもなかなかホテルから出させてくれなかったり、本番行為を求めたり。『私だけ』って思いたいんだと思いますが、給料考えたら本当に過剰サービスすぎてキツいです。特にホテルの外だと『女の子』扱いされたくて、恥ずかしいから自分が財布を出したくないというお客さんが多い。そういう場合は全部一時的に立て替えて、後で回収します。けどその時になって、『あれは私が特別だから奢ってくれたと思ってた』とか言い出す人もいて…。正直めちゃくちゃしんどいですよ。それで下手に出ないといけないので。自分と一緒にいる時間が僕にとって癒しだと思ってるのはやめてほしいです」

 ネットに書いてあるようなサービス内容以上のホスピタリティを求められる女性用風俗。一見高収入の仕事に見えるが、果たして本当に割に合うといえるのだろうか。

(佐々木 チワワ)