「他の製品と混ぜて使わないでください」――。自社製品をめぐり誤った言説が広まっているとして、ニベア花王が注意喚起している。他社のネット広告で、スキンケア用品「ニベアクリーム」に特定の製品を混ぜて使うとシミが消えると宣伝されているという。
J-CASTニュースが関係企業に見解を質すと、意図せず出稿されていたとして「お詫び申し上げます」と謝罪した。
「広告はかなり前から…」
「『ニベアクリームと●●を混ぜるとシミが消える』という類の広告にニベア花王は一切関与しておりません。ニベアクリームを、他の製品と混ぜて使わないでください」
ニベア花王は2021年12月3日、ニベアクリーム(通称「青缶」)に関する不適切なネット広告が出稿されているとして、ツイッターで注意喚起した。他の製品と混ぜると、本来の特長や成分の働きなどが失われる恐れがあるという。
投稿は2万以上リツイート(拡散)されて注目を集めた。目にした人は少なくなかったようで、「しょっちゅう広告流れて忌々しく思っておりました」「わたしも試しちゃいました もちろん効果なく…でした」といった書き込みが寄せられている。
ニベア花王広報は6日、J-CASTニュースの取材に「広告はかなり前から存在していて、(生活者からの)問い合わせもたまに受けます」と話す。
以前から商品サイトなどで同様の注意喚起をしてきたものの、ここ数年は増加傾向だという。広告を配信していたグーグル社に停止依頼をしたこともあったが「おそらくいたちごっこになっていたようです」と声を落とす。
広告には「【ほぼ全員が短期間で実感!】」
J-CASTニュースが12月4〜5日にかけて調べたところ、大手ニュースサイトで該当するとみられるグーグル広告を確認した。
宣伝されていたのは、通販事業などを手がける健康美人研究所(東京都渋谷区)が販売する化粧品「ヴィオテラスCセラム」だ。
民間調査会社によると、同社は14年4月設立で従業員は35人。2021年2月期の売上高は約87億円で、前期と比べて3倍増となっている。
広告は、男性がニベアとCセラムを持って「必見、青缶にコレを混ぜるだけ」と訴求するものや、女性の顔写真とともに「『青缶にコレで』シミは消える」と宣伝するものなど8種類見つかった。
広告を押下すると、「※この記事限定※1000円OFFクーポン配布中! 【ほぼ全員が短期間で実感!】皮膚科医の母親が娘のシミを気にしてイタズラな調合!?その方法が『神掛かってる!』と注文殺到!」と題した記事ページに遷移した。
いわゆる「アフィリエイト広告(成果報酬型広告)」として制作されたとみられる。アフィリエイターと呼ばれる広告制作者が、代理店の依頼を受けるなどして、広告主の商品を記事などで宣伝する。販売サイトへの送客数や契約数に応じて、制作者は報酬を得る。生活者を欺くような内容も少なくなく、消費者庁が注意を呼びかけている。
記事では、34歳の会社員を名乗る女性の体験談が紹介されていた。女性は顔と手のシミに悩んでいたところ、ネットで「もはや整形レベル」「悪魔の一滴」「レーザー治療、乙!」と絶賛されていたというCセラムに興味を持つ。
通販サイトでは売り切れのため諦めかけたところ、あるサイトから運よく購入できた。早速使うと顔のシミが「短期間でここまで変わった」。使用前後とみられる写真を掲載しており、目立っていたシミはすべてなくなっている。同一人物の写真かは定かでない。
手のシミはあまり改善が見られなかったようだ。皮膚科医だという母親に報告すると、ニベアと混ぜて使うよう推奨された。実践すると手のシミも消えたようで、「『Cセラム+ニベア』はとっても相性のいい調合だったのね!」と総括している。
健康美人研究所の見解は
記事の筆者やページの作成者は明かされておらず、責任の所在は不明だ。6日現在、ページは閲覧できなくなっている。
健康美人研究所は6日、J-CASTニュースの取材に、上記の広告制作には関与しておらず「弊社製品への誤ったイメージを与えるものとなり、現在、該当の記事広告や訴求内容に関しまして広告代理店様ならびにメディア様へ事実確認を行っております」と回答した。
Cセラムとニベアの相乗効果は「花王社様(原文ママ)のニベアでしたり他メーカー様との商品と混ぜるといった使用方法は推奨はしておりません」とする。
「今回の件でお客様ならびに関係者の皆様に多大なるご迷惑をお掛けすることを重ねてお詫び申し上げますと共に、誠心誠意対応して参る所存でございます。今後も何卒ご愛顧いただけますよう、宜しくお願い申し上げます」
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)
ネット広告をめぐる問題について、引き続き取材を進めていきます。情報をお持ちでしたら、https://secure.j-cast.com/form/post.htmlまでご連絡ください。