【調査報道23時】コロナ補助金不正 5万円で不正に関わった理由
関東地方のある住宅地。
村瀬健介キャスター
「村瀬です。きょうはありがとうございます」
家族4人で暮らす男性。この前日、私たち「news23」の報道を見て連絡をくれた。
不正に関わった男性
「報道みて、ああって、なんとも言えない気分だったんです。これに私関わってるなって気づいたんです。ああ、これだって思って」
先週、私たちは、国のコロナ対策補助金をだまし取ろうとする大がかりなグループがあることを報じた。
不正の舞台は国の「デジタル化応援隊事業」だ。個人事業主がリモートワークを導入する際などにIT専門家からリモートなどでコンサルティングを受けると、国がそのコンサルティング費用を最大30万円まで補助する制度だ。
不正グループは、この補助金を「誰でも簡単に受け取れる」「グループに入らないか」と、SNSで盛んに勧誘。集まった個人事業主役とコンサルタント役をリモートで面会させる。
不正グループのメンバー
「コンサル自体は一切受けずに、コンサルした証明を作るための時間を、30分Zoomで使う」
リモート面会ではコンサルは行わないのに、長時間行った偽装工作をして補助金をだまし取るのだ。
私たちに連絡をくれた男性は、勧誘に乗って個人事業主役をやってしまったという。
不正に関わった男性
「これは不正だなと自分でもわかったんですよ、途中から。“ああ、よくないな”という後ろめたさもありつつ。こういうやつですけどね、こんなのをこうね、8枚くらい順番に着替えるだけです」
上半身の服を着替え、パソコンの前に座り、その姿をコンサルタント役が撮影する。それを8回繰り返し、何日もコンサルティングを行ったように装う。
不正に関わった男性
「『全く同じかっこうだと変だから』『なんか違うかっこうしてください』って言われて携帯持ってるふりしたりとか、ペン持ってるふりしたりとか、その程度のアクション付けて2回パシャパシャと」
写真を撮ってから1か月が経ったころ、国側から補助金申請を受け付けたとのメールが届いた。手続きが完了すれば、不正グループの口座に補助金が振り込まれる。その後、男性の元に分け前として5万円が届くことになる。
「こちらはデジタル化応援隊事務局です」
男性は国の事務局に電話をかけ、不正に関わったこと、補助金を辞退したいことを伝えた。
国の事務局への電話
「辞退すべきなんじゃないかと考えているんです。不正だと思われるので、申請自体を取り下げたいという趣旨です」
後ろめたさを抱えながら、なぜ5万円のために不正に手を染めたのか。
村瀬キャスター
「5万円でもこれに参加されたのはどういった事情があったんですか」
不正に関わった男性
「本当にお金苦しいんですよ。今の自宅のローンが払えない状況になると、自宅も取られちゃうんですよ。それをなんとか食い止めようとしていて」
男性はいま、前の職場とトラブルになっていることもあり、安定した収入を得られないでいる。
村瀬キャスター
「今は収入的には厳しい?」
不正に関わった男性
「厳しいですね。ゼロではないですけど、とても家族4人が暮らしていける収入ではない」
村瀬キャスター
「そういう中で5万円というのは魅力的ですか」
不正に関わった男性
「そりゃそうですよ。きちんと経済的にも満たされていたら、途中で私は抜けていたと思います」