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ある大学医学部付属病院で、無保険のフィリピン人男性に出された請求書。皮膚がんの検査などで通常の300%に当たる約17万円を請求され、支援団体が負担。治療のめどは立っていないという。(画像の一部を加工しています)=支援者提供
ある大学医学部付属病院で、無保険のフィリピン人男性に出された請求書。皮膚がんの検査などで通常の300%に当たる約17万円を請求され、支援団体が負担。治療のめどは立っていないという。(画像の一部を加工しています)=支援者提供

 今年3月、名古屋出入国在留管理局の施設内でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が病死し、ずさんな医療体制が問題となった。しかし、在留資格がない外国人は、入管施設の外でも命の危険にさらされている。健康保険に加入できないため、重病になると医療費(100%負担)が高額になり、支払えないケースもあるためだ。近年は医療費を200~300%負担させられる例も増えているという。「国籍や在留資格の有無で、命を区別していいのか」。今、全国の外国人支援団体や医療関係者たちが抗議の声を上げている。【鵜塚健】

死後に届いた在留資格

 今年1月23日早朝、東京都内の病院でカメルーン出身の女性レリンディス・マイさんが静かに息を引き取った。まだ42歳。乳がんが全身に転移していた。

 婚約者の暴力や女性器切除の習慣から逃れようと、2004年に短期在留資格で来日。その後、母国の治安が不安定になり帰国ができなくなった。難民認定を申請したが認められず、入管施設に2度にわたり収容された。当時から支援者に「胸が痛い」と訴えていたが、施設では十分な治療が受けられなかった。

 18年に2度目の仮放免(条件付きの一時解放)となり、その後乳がんと診断された。在留資格がなく健康保険に入れないため、医療費は高額になる。それでも支援者らが仲介し、理解ある病院で治療を受けた。有効な治療法がなくなり退院したが、収入もないため一時ホームレスの状態に陥った。支援者らの援助で衣食住を確保し、別の病院で治療を続けた。

 医療費を軽減しようと、支援者や弁護士が治療目的の在留資格を出すよう、国に再三要請。在留(1年)を認めるカードが病院に届いたのは、マイさんが亡くなって約3時間後だった。亡くなる数日前まで病床で「病気を治したい。漢字をもっと勉強したい」と話していたという。

 最初に治療を受けた病院にはマイさんの未払いの医療費計約700万円が残った。…