さまざまなゲームに登場するボスキャラクターたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕らのボスキャラ列伝」。第1回は、1997年に初代PlayStationで発売された『ファイナルファンタジーVII』のセフィロスを紹介します。
時代の流れと共に、際限なく濃くなり続けているラスボス。
『ファイナルファンタジーVII』のセフィロスをひと言で表すと、そんな印象を抱くのではないでしょうか。
ファミコン全盛期から今日にいたるまでシリーズを展開し続けているRPGというと『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』シリーズが挙げられますが、『DQ』シリーズと比べると初期~中期『FF』シリーズのボスは人、もしくは人に極めて近い種族や姿であることが多く「歯車が狂わなければ、人と共に生きる道もありえたのではないか」とすら思わされるキャラクターが目立ちます。
『FFVII』のセフィロスはそんなボスキャラたちの中でも、”強きをくじき弱きをたすく“を地でいく英雄然とした人物で、さらに主人公・クラウドの憧れでもあったわけですから、狂気にかられたあとの姿とそれ以前の姿とのギャップはシリーズ随一といえるでしょう。
そんな内面や物語における立ち位置だけでもインパクト抜群ですが、クラウドとセフィロスの関係は宮本武蔵と佐々木小次郎がモチーフであるとされています。佐々木小次郎が持つイメージにヒントを得たのであろうセフィロスの「長髪の美男子+武器は極端な長刀」というルックスは、彼の”濃さ”にさらなる拍車をかけました。
世界中に熱狂をもって受け入れられた『FFVII』は発売後も数々のスピンオフ作品が制作され、セフィロスは英雄然としていたかつての姿が描かれたり、時代の変遷にともなって3Dモデルの質が劇的に向上したり、キアヌ・リーブスやトム・クルーズの吹替でも知られる実力派声優・森川智之さんの熱演でより一層偏執的になったりと(※心からほめています)、時代と共にその魅力を増し続けています。
2020年にPS4でリリースされた『ファイナルファンタジーVII リメイク』での描写や、まさかの『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』参戦などで「さらに濃くなったな、このキャラは…」と感じた方も多いのではないでしょうか。
また、セフィロスのデザインは実在の伝説や伝承に登場するダンピール(人と吸血鬼の混血)にも通ずるところがあるのが、個人的にはさらなる加点ポイントだと感じています。
たとえば、初代PSで『FFVII』が発売された翌年の1998年には、ウェズリー・スナイプス主演の映画『ブレイド』が大きな話題となりました。ダンピールである主人公ブレイドは黒のロングコートにサングラス姿で、武器は刀といういでたちでした。
『ブレイド』は1973年から続いているマーベルコミックのシリーズを原作としているので、セフィロスに先んじていたといえます。刊行当初の表紙イラストではロングコートは着ておらず刀も持っていませんでしたが、90年代頃には黒のレザーに刀を合わせるようになっています。
また、菊池秀行氏の著、『FF』シリーズでもおなじみ天野喜孝氏の絵による1983年刊行の小説『吸血鬼ハンター”D”』シリーズも、主人公であるダンピールの青年・Dはトラベラーズハットを目深に被る黒衣の美青年で、やはり長い刀を得物としていました。
日本の剣豪・佐々木小次郎と、海外の伝説に登場するダンピール。その二者のイメージをいいところ取りして生まれたのがセフィロス……のデザインなのかもしれないと思うと、なんだかさらに味わい深くなりますね。筆者は『FFVIIリメイク』を再プレイしたくなりました。