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Volvo Cars(ボルボ・カーズ)は米国時間1月5日、LiDAR企業のLuminar(ルミナー)および自律走行(AD)ソフトウェア子会社のZenseact(ゼンセアクト)と協力して、次世代の完全電気自動車にAD機能を導入するとCESで発表した。「Ride Pilot(ライドパイロット)」と命名したこの機能を、2022年後半に公開予定の電動SUVにアドオンサブスクリプションとして導入することを目指す。

Volvoによると、Ride PilotはVolvoが「監視なし」のAD機能と呼んでいるもので、クルマが自分で運転できるようになるため、乗車する人は「読書、執筆、仕事、社交などの二次的活動」を楽しむ時間がたっぷり取れるようになるという。Volvoが株式の過半数を保有するLuminarとZenseactは、少なくとも2021年3月からこうした機能の構築に取り組んでおり、両社は技術を組み合わせて、他の自動車メーカーに提供できる「全体的な自律走行車スタック」を構築する計画を共有していた。NVIDIA(エヌビディア)のシステムオンチップが、Volvoの基幹計算システムを動かす。

Volvoは、自律走行機能を備えた商用車の市場投入に向けた戦略を策定した最新の自動車メーカーだ。Tesla(テスラ)は、誤解を招くような名前の「Autopilot(オートパイロット)」と「完全自動運転」ソフトウェアを世に送り出した。これらは、カメラとコンピュータービジョン技術のみに依存し、はっきりと確認できる車線内での自動操縦、交通状況認識クルーズコントロール、自動車線変更、自動駐車、車呼び出し、交通および停止信号制御といったタスクを処理できる高度な運転支援機能を提供するものだ。中国の自動車メーカーXpeng(エックスペン)も、LiDAR、レーダー、カメラに依存し、ドライバーが設定したルートに基づいて地点から地点への自動運転を支援する次世代ADASである「Xpilot」を展開している

Volvoのデジタルビジネス担当副社長Martin Kristensson(マーティン・クリステンソン)氏は「Ride Pilotで重要なのは、実際に自動運転ができることです」とTechCrunchに語った。「ハンドルにずっと手を置いている必要はありません。前方を見る必要もありません。実際にクルマの中で朝食を食べたり、本を読んだり、映画を観たりでき、その間、クルマが勝手に運転します。私たちは、クルマが自動運転しているときに責任を負います。そういう意味で、今の市場にはない提案だと思います」。

Ride Pilotが市場に出る前に、このソフトウェアは、多くの条件下で高速道路で安全に使用できる技術の検証を含む、厳格な検証およびテストプロトコルを受けるとVolvoは話す。当初、Ride Pilotは限られた運用設計領域で利用できるようになる予定だ。具体的には、 Volvoが検証した高速道路での低速走行に限定される。

カリフォルニア州の顧客が最初にRide Pilotを体験し、その後、他の市場に徐々に展開する予定だが、カリフォルニア州が自律走行試験に対して良好な規制環境にあること、晴天が多い気候、そして高速道路を利用するクルマが多いことを考えれば、これは理に適っている。ロサンゼルスの通勤者は平均年119時間も渋滞に巻き込まれており、その時間をもっと有効に使えるとVolvoは考えている。

Volvoはカリフォルニア州の公道で車両をテストするための許可を確保する必要があるが、クリステンソン氏は、同社が「カリフォルニア州陸運局を含む関連規制機関と対話し、必要なすべての承認を確保している 」と話す。今のところ、同社はスウェーデンでZenseactとRide Pilotのテストを行っているだけだが、2022年半ばまでにはカリフォルニアの公道でのテスト開始に必要な許可を得られる見込みだ。Volvoがこの技術を実際に商業展開するために必要となる規制は、業界が提供するものに対してまだ追いついていない。例えば、カリフォルニア州には現在、運転中のドライバーの電話使用を禁止する法律がある。これは、自動運転中にTwitterをスクロールしたり、電子メールに返信したりできるとうたってドライバーをRide Pilotに加入させるVolvoの計画にとって障害になるかもしれない。

TechCrunchの情報提供要請に対するカリフォルニア州自動車局からの回答は間に合わなかった。

Volvoは、Ride Pilotサブスク料金や、SUVがいくらで販売される可能性があるかについては情報共有しなかったが、クリステンソン氏によると2022年のVolvo XC90の価格とほぼ同じで、5万ドル(約580万円)程度からになるとのことだ。顧客がソフトウェアを追加するかどうかにかかわらず、車両にはADとADAS機能を実現するために必要なすべてのセンサーを搭載する。その中でも、LuminarのLiDARセンサーIrisは、光る宝石のようにルーフトップに取り付けられるのではなく、よりシームレスに車両のルーフラインに統合されるようになっている。さらに、新型SUVには5つのレーダー、8つのカメラ、16の超音波センサーが搭載される予定だ。

「Volvoは、ハードウェアの標準化を決定しました。つまり、人々がRide Pilotをサブスクするかどうかにかかわらず、すべての車両がこのソフトウェアを起動することができ、また、監視して安全で起動できることを確認するために必要なデータを収集することができるハードウェアを備えます」とZenseactのCEOであるÖdgärd Andersson(オッドガード・アンダーソン)氏はTechCrunchに語った。「すべての車両に、急ブレーキや急ハンドルの操作をサポートするような、基本的な安全機能が標準装備されます。この新しいレベルの技術とLiDARによって実際にまったく新しいレベルに到達し、その上、より優れたセンシングと計算が可能になったため、運転中にアシストするクルーズ機能が新しいレベルに到達したのです」。

テスラのFSDと同様に、継続的に冗長性を確保するために、新しい市場のユーザーと既存のユーザーの両方に、ソフトウェアそのものとアップデートを無線で送信することができる。

Volvoは今後展開する電動SUVのデザインの詳細をまだ明らかにしていないが、フラットフロア、ガラス天井、後ろヒンジのスイング式後部ドアを備えたクロスオーバーに少し似ている、7月に公開したコンセプトEV「Concept Recharge(コンセプト・リチャージ)」は「実際のクルマがどのように見えるかをよく示しています」とクリステンソン氏は述べた。Volvoは、EVバッテリーを製造するNorthvolt(ノースボルト)、Google(グーグル)、Luminarといった企業と提携し、このEVや将来の車両を作る。

CESの期間中、VolvoはQualcomm(クアルコム)のSnapdragonデジタルコックピットインフォテインメントセンターを新しい電動SUVに実装する計画も明らかにした。また、Volvoは1月5日にGoogleとの提携の詳細も発表した。Googleアシスタント対応デバイスとの統合により、ユーザーはGoogleにクルマのウォームアップを頼んだり、YouTubeをクルマにダウンロードしたりすることができるようになる。

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「電気自動車の充電を待っている間、あるいは自律走行車内で運転というより乗ってくつろいでいる状況で、ドライバーが運転以外の時間を車内で過ごすことが増えるとみています。ですので、車内でもっとデジタルサービスを可能にしたいのです」とクリステンソン氏は述べた。

Volvoが戦略的パートナーシップを通じて構築している一連のデジタルサービスは、同社がサブスクリプションモデルを構築し、顧客がこれらの新製品とどのように接したがっているかを学ぶ機会を与える。

デジタルコンシューマープロダクト責任者のAnne-Mette Nygaard(アンネ・メッテ・ナイガード)氏はTechCrunchに次のように語った。「2023年には、前もって購入するのではなく、実際にサブスクできるサービスや体験が消費者に提供されるでしょう。ですから、より柔軟なオーナーシップ、そして消費者への透明性を高めることが進むべき道なのです」。

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi