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アップルでM1チップなどAppleシリコンの開発を主導したジェフ・ウィルコックス氏、古巣のインテルへの復帰を明かす

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アップルが「Macのプロセッサを2年かけてインテル製から自社開発のAppleシリコンに移行する」との約束を今年(2022年)6月には果たすと予想されるなか、M1チップをはじめとするAppleシリコンの開発を主導してきた人物がインテルに移籍したことが明らかとなりました。

Macシステムアーキテクチャ担当ディレクターだったジェフ・ウィルコックス(Jeff Wilcox)氏はLinkedInにて、インテルでの新たな職に就くためにアップルを去ったと述べています。ウィルコックス氏はインテルのフェロー兼デザイン・エンジニアリング・グループのCTOとして、クライアントSoCアーキテクチャ設計を担当するとのことです。

ウィルコックス氏は今月退社するまでの8年間、アップルのMacシステムアーキテクチャーチームに所属していた人物です。この期間はちょうどAppleシリコン開発が始まってから発表されるまでの時期と思われますが、実際LinkedInのプロフィールでもM1チップやT2セキュリティチップなど「すべてのMacのAppleシリコンへの移行を主導した」とアピールされています。

またウィルコックス氏はアップルでの仕事を「M1、M1 Pro、M1 MaxのSoCおよびシステムでのAppleシリコンへの移行をはじめ、私が在籍していた間に達成した全てのことを、この上なく誇りに思っています」と振り返り。そう述べつつ「アップルの同僚や友人たちと離れるのはとても寂しいですが、年明けに始まる次の旅を楽しみにしています。 これからもよろしくお願いします」とあいさつを語っています。

もともとウィルコックス氏は2010年~2013年にインテルにてPCチップセットの上級エンジニアを務めていたことがあり、今回の移籍は新天地というよりも古巣への復帰となります。そして「インテルの素晴らしいチームと一緒に、画期的なSoCの開発に携わることができ、これ以上の喜びはありません。素晴らしいことが待っています」という言葉は、Appleシリコン対抗SoC開発をリードすることを示唆しているとも憶測できます。

Mac搭載プロセッサがAppleシリコンに移行することで、最もダメージを受けると予想される企業はプロセッサの発注が大幅に減らされるインテルでした。

そのため最近のインテルはAppleシリコンを強烈に意識した行いが目立っており、「インテル製チップ採用のノートPCがM1 Macよりも優れている」というキャンペーンを展開したり、ノートPC向け第12世代Core i9がM1 Maxよりも優れた史上最速モバイルCPUだとアピールしたり、その一方でパット・ゲルシンガーCEOは「Appleシリコン製造を請け負いたい」と発言していたこともあります。ウィルコックス氏のインテル移籍も、その文脈を考えれば頷けるところではあります。

ここ2年ほど、アップルのチップ開発チームの主要エンジニアが離職することは珍しくはありませんでした。最も注目されたのはiPhoneのAシリーズチップ(A7~A12X)開発を主導した人物らがNuviaという半導体スタートアップを立ち上げたことです。Nuviaは最終的にクアルコムに買収され、そのチームがPC向けArmベースチップの開発を進めていることも発表されています

これら離職者の影響が、今後のAppleシリコンの進歩にどのような影を落とすかは不明です。ともあれ、インテルの次世代CoreプロセッサやクアルコムのArmベースSoCがAppleシリコンのように「省電力性能と処理速度の両立」を備えることになれば、WindowsノートPCでもバッテリーが長持ちして快速で動く新モデルが続々と出ると期待できるかもしれません。

(Source:LinkedIn。Via Toms’ HardwareEngadget日本版より転載)