自民党総裁選(17日告示、29日投開票)は、衆院選で「勝てる顔」を求める当選3回生以下の若手衆院議員がカギを握りそうだ。若手の締め付けをあきらめ、自主投票を視野に入れる派閥もある。
竹下派(52人)は6日、幹部らが都内に集まって総裁選対応を協議した。会合に先立ち、会長の竹下亘・元総務会長は幹部に「まとまって行動を」と伝えており、この日は結束した行動を確認するにとどめた。
会長代行の茂木外相は会合後、記者団に「状況は色々と変わる。(派の所属議員)それぞれの選挙区事情もある。丁寧に聞いて集約していきたい」と述べた。参院竹下派に影響力を残す青木幹雄・元参院議員会長も6日、面会した派内の議員に週内は意見集約に努めるよう指示した。
菅首相が不出馬となったこともあり、竹下派に限らず、ほとんどの派は様子見を決め込んでいる。党内7派閥中、岸田派(46人)が岸田文雄・前政調会長の支持を決めただけだ。
各派が態度決定に時間をかけるのは、選挙戦の構図が固まっていないことに加え、衆院選を直後に控えているという事情が大きい。党衆院議員275人(議長除く)のうち、当選3回以下は126人と、半分近くを占める。政権奪還を果たした2012年衆院選以来、逆風選挙を知らない議員が大半だ。
地盤の弱い若手は、所属派閥の意向よりも自分の選挙を優先する向きも少なくない。派が総裁選後の人事をにらんで意見集約を急げば、若手の造反で内紛が表面化する恐れがある。竹下派幹部は「最後は自主投票になるかもしれない」と語る。
最大派閥の細田派(96人)も例外ではない。派に影響力を持つ安倍前首相が高市早苗・前総務相への支持取りつけに動いているものの、ある若手は「世論調査の支持が高い別の候補者に投票したい」と明かす。
麻生派(53人)も難しい対応を迫られている。麻生副総理兼財務相が支持候補を明らかにしないうちに、派内から河野太郎行政・規制改革相が出馬の意向を固めた。河野氏は世論調査で高い支持を集め、ツイッターのフォロワー数は236万人超で発信力も折り紙付きだ。派内の若手は一定数が河野氏の支持に回るとみられる。
一方で、候補乱立と各派の統制弱体化で国会議員票が割れ、決選投票になるとの観測も出ている。3人以上が争い、1回目の投票で有効票の過半数を得た候補がいない場合、上位2人の決選投票になる。細田派参院議員は「決選投票を見据え、他派との協力関係を築いておく必要がある」とする。総裁選の展開次第では、派閥が存在感を示す局面もありうる。