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Nintendo(任天堂)は数十年来のシリーズを放置することができず、再発明をやめる意志はないようだ。しかし同社は、この「Metroid:Dread(メトロイド ドレッド)」で、良いものには手を付けないほうが本当にいいこともあると認めている。本ゲームの伝統的アプローチは、このジャンルを最近の人気作品のように前進させることができないかもしれないが、とにかくこれをプレイすることで最高に愉快なひとときを過ごすことができる。

10年以上のときを経て登場した最初の「本流」メトロイド「ドレッド」は「メトロイド フュージョン」直系の続編だが、ストーリーの要約は書かないでおこう。マリオやゼルダなどのタイトル同様、ストーリーはその時々の体験に付随するものだ。しかし、銀河最強の賞金稼ぎであるSamus Aran(サムス・アラン)が、捜査のために送りこまれた太陽系外惑星ZDRでに取り残され、不可解な「physical amnesia(肉体的記憶喪失)」に苦しめられ、我々の知る彼女のあらゆる能力が使えなくなっていることだけはいっておこう。

任天堂のレビューガイドラインの制約上書ける範囲で続きを話すと、人工的な環境や自然の中をいかにもメトロイドっぽいトンネルをはい回りながら新しい武器と能力を集めて新たな道を切り開き、新たなパワーと自信を身に付けていく。つまり1986年からあまり変わっていない。

スムーズな60FPS

「ドレッド」についてまず言っておかなくてはならないのが、サムスのコントロールとゲームプレイがすばららしく滑らかで反応がよいことだ。これは私にとって大きな心配事だった。なぜなら、メインキャラクターの操作感覚はこの種のゲームで最も重要な部分の1つだからだ。「Hollow Knight(ホロウナイト)」のキャラクターは軽快かつ正確に動く。「Blasphemous(ブラスフェマス)」の主人公は慎重で重厚だ。新参の「Death’s Door」はスムーズで操作しやすい。「メトロイド ドレッド」では、サムスは「高速」かつ「俊敏」だ。

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

安定した60FPS(フレーム毎秒)で動き、基本動作は、サムスが時折みせる落ち着いたジョギングではなくスプリントのようなスピード。このゲームであなたはハンターであると同時に獲物でもあり、すばやく動き、すばやく反応する必要があることは明らかだ。あらゆるアクションが高速で操作しやすく、このゲームはプレイヤーに、安全な場所でじっとしているのではなく、スピード感を持って敵を倒していくようなプレイを望んでいる。そこそこパワフルさも感じるが、最大の武器は敏捷性だ。

それは、無敵のハンターキラーロボット「E.M.M.I.」がサムスの足音に聞き耳を立て、その存在に気づくと執拗に追いかけてくる「ドレッド」の特徴的なエリアでは特に重要だ。高速で壁を登り狭い空間を這い回る能力を持つE.M.M.I.は、まるで映画「Alien(エイリアン)」のXenomorph(ゼノモーフ)のようで、彼らと同じく、一度捕まえられると正確なタイミングでカウンターを決めない限り一巻の終わりとなる。

Nintendo Switch版「メトロイド ドレッド」のスクリーンショット

この点はぜひはっきりさせておこう。「メトロイド ドレッド」では死ぬ、何度でも。おそらく半分の時間はE.M.M.I.が相手で、敵はあなたの目の前のシュートから這い出てパニックになったあなたを捕まえるか、安全な場所に隠れようとするあなたを追い詰める。残りの時間は、さまざまなボスたちの容赦ないパターンを学習することになるだろう。1つか2つエネルギータンクを持っていれば、オーバーワールドはそれほど脅威ではない。ただし、特殊なE.M.M.I.ゾーンの特別なドアに入ると(ありがたいことにこの時点でセーブされる)、あなたのストレスレベルは急上昇する。ゲームに入ってすぐ手に入れた遮蔽能力でさえ、捕獲を防ぐことにかけては驚くほど限界がある。彼らを確実に倒すためには、逆説的だが、持ち場を守る必要がある。それは逃げるよりも大変だ。

ほとんどの部分でゲームはタフだがフェアだ。「Demon’s Soul(デモンズソウル)」で無傷でいられるマゾレベルのゲーマーにとってはあまりチャレンジはないだろうが、一定水準の危険が訪れるので、セーブルームに到達するといつも安心する。私はゲームの最終場面までプレイしたが、そこに困難な罠と滑稽なほど難しいカウンターのタイミングがいくつもあることは明らかで、通常数回試してみれば、ゲームがあなたに何を求めているかを理解できるだろう。そうでなければラッキーだ。

ポーズ画面では、マップのチェックと新しいアイテムのチュートリアルを再確認するくらいしかすることがない。インベントリーやロードアウトはなく、すべてのアクションはボタンの組み合わせによって実行するが、これが少々厄介だ。左バンパーがFree Aim(フリーエイム)、右でグラップルを作動、左スティックで照準、ジャンプはBの後Yを押す、もしできるなら。

サーガ・オブ・サムス

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

先に書いたように、ストーリーは「メトロイド」の本質ではないが価値があるもので「ドレッド」のイベントは進行するサーガ(冒険物語)に興味深いアクセントと新事実を加える。最初のいくつかのエリア以外について話すことを許されていないが、個人的にお気に入りの「ホロウナイト」と比べて感情移入はあまりできない。「ホロウナイト」では、ビジュアルメインの物語と音楽の組み合わせは見ごたえがあるもので、訪れた場所が物語的で名高く悲劇的であることを感じさせた。「ドレッド」は、どちらかというとビデオゲームのレベルのようで、異なるフィーリングとテーマではあるものの「ダークソウル」の登場以来、ゲーム用語の1つとなっている「ineffable(筆舌に尽くしがたい)」の類ではない。

それに加えて、レベルデザイナーはこれらの場所をとても巧妙に設計していることが挙げられる。

最初のいくつかのエリアでは、場所を移動させたり、ループさせたりすることで、ほとんど直線的になっているにもかかわらず「あ、そういえば前に開けられなかったドアがあったな……あそこに戻ってみよう」と、あちこち見て回っているような気分になる。幸いなことに、スーツや武器のアップグレードは、特定のドアを開けるためのキーとして機能すること以外でも、必然的なものと感じられるだろう。

中にはあれこれ物事がオープンになるポイントもあるが、全体としてはZDRのガイド付きツアーの要素が強い。ときには制限がありすぎる、合理化されすぎだと感じることさえあるが、引き返す手段も用意されているが、
その多くは都合が良すぎる場所に設置されたテレポーターによって回避され、次に行くべき場所に正確に連れて行ってくれることが多い。このゲームでは、膨大な当て推量が必要で、それは良くもあり悪くもある。私は何度も「Metroidvanias(メトロイドヴァニア)」で苦しんだが、次に何をするべきかを見つけることもチャレンジの一部だ。

画像クレジット:Nintendo

マップは非常に良くできており、情報がありながらも多すぎることがない。ミサイルタンクへの秘密の経路を見つけるために地形を破壊する道中で休憩するたびに「something is around here(近くに何かがいる)」というメッセージが点滅する。特定の種類のドアやアイテムをすべて表示できることも、時間の節約に役立つ。

ここには水のエリアもある

1つのまとまりある世界にいるような雰囲気も良いものだが「ドレッド」はあまりそれがない。訪れるさまざまな場所にはそれぞれ独特の外観と雰囲気があるが、まったく調和していない。電車やエレベーターに乗ると、次の瞬間まったく新しいゾーンにいて、2つのゾーンにオーバーラップや秘密の通路はない。たとえば「Super Metroid(スーパーメトロイド)」では、秘密基地が隠された岩肌や、巨大な海に衝突する難破船がすべて燃えるコアの上にあり、その中を論理的に進んでいく。「ドレッド」では、岩の多いエリアやジャングルのようなエリアや灼熱のエリアなどがあるが、繋がっている感じはない。

そこに探索的な「je ne sais quoi(よくわからない何か)」はないかもしれないが、それぞれのエリア自体は美しく歩き回るのが楽しいため、あなたは繰り返しそこ訪れ、それまで存在すら想像しなかったまったく新しいセクションのキーを開けるだろう。さらに、ストーリーの展開やプレイヤーの能力の進化に合わせてエリアは変わっていき、その変化は巧妙かつ過度に制限的だ。

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

私の「ドレッド」の旅は8時間少々続き、最後のボスとの遭遇だと私が信じるところまで到達したが(まだ倒していない。かなり大変だ)、正直なところ大急ぎで進んだにもかかわらずもっと長く感じた。そしてもちろん、すべての「メトロイド」と同様、スキルを蓄積して複数回プレイする楽しみがある。大きく異なるエンディングがあるのかどうかは聞いたことがない。またメトロイドファンの間でメジャーな楽しみとなっているシーケンスブレイク(ボスをスキップしたり、エリアを違う順番で攻略したりすること)の機会もあまりなさそうだ。私が間違っているかもしれないが。

「メトロイド ドレッド」は、とことんメトロイドなゲームであり、近年の類似ゲームほどのスケールではないかもしれないが、その驚くほど流れるようなゲームプレイシステムと推進力は補って余りあるものだ。私は常にゲームを続けたくて、毎晩手を止めるのも大変で、レビューの締め切りが迫っていなければ時間をとることもできなかったに違いない。これはプレイしたくなるゲームであると同時に、最小限のパッド操作とコンスタントな前方移動によって、プレイヤーの時間を無駄にしない。壮大な作品ではない。しかしプレイヤーにとって時間とお金の価値があるゲームであるために、すべてのゲームがそうである必要はない。

画像クレジット:Nintendo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook