AED(自動体外式除細動器)は、心停止した人に対して素早く応急処置できる優れた医療機器です。
現在、AEDはさまざまな公共施設に設置されていますが、それでも心停止するすべての人をカバーできるわけではありません。
こうした状況に対応するため、スウェーデンの企業「Everdrone」は、AEDを届けるドローンサービスを開始しています。
そして2021年12月には、自宅で心停止した男性のもとにAED搭載ドローンが駆けつけ、一命をとりとめることに成功しました。
目次
- 救急車では間に合わない場合も
- AED搭載ドローンが自宅で倒れた男性を救う
救急車では間に合わない場合も
病院以外の場所で心停止(院外心停止)する人は、私たちの想像以上に多いかもしれません。
実際、ヨーロッパでは毎年27万5000人以上、アメリカでは35万人以上が院外心停止していると言われています。
そしてそのうちの70%は、AEDのない個人宅で発生しているのです。
AEDが近くにない場合は、心臓マッサージなどの心肺蘇生法(CPR)を行って、あとは救急車の到着を待つしかありません。
しかし、心停止の状態で1分経過するごとに生存率は7~10%低下すると言われています。
日本の救急車は平均8分で現場に到着できると言われていますが、それでも間に合わない場合があるのです。
では、もっと素早く緊急蘇生措置を行うことはできないのでしょうか?
Everdrone社は、1人でも多くの人を救うため、近年さまざまな分野で活躍しているドローン技術を利用することにしました。
AEDを搭載したドローンを飛ばし、現場に素早く届けるサービスを開始したのです。
AED搭載ドローンが自宅で倒れた男性を救う
2021年12月、スウェーデンに住む71歳の男性は、自宅の外で雪かきをしていました。
ところが急に心臓発作を起こして倒れ、心停止してしまいました。
この現場に偶然通りかかったのが、出勤中のムスタファ・アリ氏であり、その時のことを次のように語っています。
「車の窓から外を見ると、私道で男性が倒れていました。
男性は心停止していたので、すぐに別の人に112番(スウェーデンの緊急電話番号)に電話するよう頼み、自分は心肺蘇生法を試すことにしました。
そしてほんの数分後、頭上に何かが飛んでいるのを見つけました。
それはAEDを搭載したドローンだったのです!」
アリ氏の迅速な対応とAEDが使用されたおかげで、心停止した男性の命は救われました。
病院に運ばれ、完全に回復した男性は次のように感謝しています。
「この新しいドローン技術と迅速な処置への感謝は言葉で言い表せません。
もしドローンが来なかったら、私はおそらくここにいなかったでしょう」
今回のことで、AED搭載ドローンが迅速な蘇生措置に役立つと実証されました。
ドローンはわずか3分で現場に到着できると言われており、救急車よりも素早くAEDを届けることができるのです。
現在、Everdrone社によるドローン救命サービスは、スウェーデンに住む20万人をカバーしており、2022年中にはヨーロッパ全域に拡大する予定です。
人々を救うドローンの革命は、今まさに始まったところです。
参考文献
A drone carrying a defibrillator saved the life of a heart-attack patient
A drone carrying a defibrillator saved the life of a heart-attack patient
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