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2019年にAmazon(アマゾン)は、Sidewalkネットワーク発表した。それは、小型のデバイスを接続するための、長距離ワイヤレスのプロトコルおよびネットワークで、たとえば自分のWi-Fiネットワークがダウンしても近隣のネットワークに便乗して接続を維持する。2021年以降、Amazonは同社のEchoデバイスをSidewalkのブリッジにして、RingやTileのデバイスの一部がこのネットワークにアクセスできるようにしている。そしてAmazonは初めて、大学のキャンパスや公園のような広い範囲をカバーするプロフェッショナルグレードのSidewalkデバイスをローンチする。

新しいデバイスの正式名称は「Amazon Sidewalk Bridge Pro by Ring」という。屋内にも設置可能だが、主に屋外に設置することを想定しており、理想的には高い場所に設置することで、最大5マイル(約8km)先まで数百台のデバイスをカバーできる(もちろん、地域の事情によるが)。

このデバイスをテストするために、アマゾンはアリゾナ州立大学と提携し、テンピのキャンパス内の電柱にこのSidewalk bridgeを設置することになる。大学の技術室では、太陽光や温度センサー、CO2検出器、粒子カウンターなどを接続する計画となっておる、概念実証として使用する予定だ。

画像クレジット:Amazon

Amazonは、環境のモニタリングを専門とするIoT企業Thingyとも提携して、同社の大気質モニタリングツールを据え付け、山火事の可能性をファーストレスポンダーに警告する。

「Amazon Sidewalk Bridge Proは、観測機器は広い範囲に数置く設置される場合に力を発揮し、AWSの既存アプリケーションと簡単に統合でき、デバイスとアプリケーションに信頼できるセキュリティを提供してくれます。Amazon Sidewalkと協力して、当社のセンサーで大気質や山火事を測定し、これらの重要なアプリケーションの接続性の課題を解決できることを大変うれしく思います」と、ThingyのCEO兼共同創業者のScott Waller(スコット・ウォーラー)氏は述べている。

しかしながら、最も重要なことは、デバイスそのものよりもAmazonがSidewalkのエコシステムに投資を続けているという事実だ。

Amazon SidewalkのディレクターであるStefano Landis(ステファノ・ランディス)氏は、次のように語る。「私たちはネットワークを構築して、関係者たちがIoT産業を支えられるようにしています。結局のところ、スマートでコネクテッドなデバイスをあらゆる場所で普及させたければば、そのための適切なネットワークが必要です。今日のIoT開発者たちと話をすると、確かに選択肢はとても多いが、接続がセルネットワークに比べて非常に高価だったり、範囲が狭すぎたり、バッテリーがすぐに空になったり、開発サイクルの全体が複雑すぎたりしています。そのため私たちは、IoTのコミュニティが、消費者、エンタープライズ、公共セクターなど、どのようなタイプのアプリケーションでも開発できるようなネットワークを可能にするための投資を継続しなければならないのです」。

ランディス氏によると、ネットワークのローンチからまだ数カ月しか経っていないが、すでに米国において100以上の広域都市圏の居住地区を強力にカバーしているという。それは米国の家庭にはすでに大量のEchoデバイスが普及し、その最新モデルがデフォルトでSidewalkを有効にしているからでもある。しかし、それを快く思わない人もいるため、Amazonはそのネットワークがプライバシーファーストで、ビデオのフィードを送るRingのカメラなどと違ってアラートを送るだけであるため多くの帯域を使わないと主張している。そもそも、Sidewalkのことなど知らないユーザーがほとんどだろう。

しかし、話は大都市圏の居住地区をカバーしているだけで終わらない。Sidewalk Bridge Proを使えば今や企業が、その所有するすべての土地をカバーしてセンサーを設置できるだろう。ランディス氏は、ネットワークの商用ユースケースについてすでに「数千社以上の企業から引き合いがある」と述べていたため需要はあるようだ。その引き合いの多くは、AmazonのクラウドベースのマネージドIoTサービスであるAWS IoT関連のものだ。ランディス氏によると、関心の多くはスマートシティサービスを軸とする、公共セクターのソリューションの構築を志向する企業からのものだという。

「Sidewalk Bridge Proは、居住地区の外でのデプロイに適したプロフェッショナルグレードのブリッジです。現状、あらゆるところがカバー範囲になっています。商業センターや公園、都市公園、州立公園、国立公園、野生保護地区、都市計画上の商業地区など、すべてをカバーできます。遍在的なネットワークの接続があれば、どのようなところでも必要なソリューションを構築できるでしょう」とランディス氏は説明する。

さらにランディス氏は、ユーザーの多くはBridgeを屋外に設置すると思いますが、倉庫や大型店などの屋内でも利用できるという。名前に「Pro」が付いているが、今後消費者向けの「ノンプロ」バージョンをローンチすることはない。EchoやRingのデバイスが、まさに消費者製品なのだから。

画像クレジット:Amazon

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)