ユービーアイソフトが2022年1月20日に発売予定の協力型タクティカルシューター「レインボーシックス エクストラクション」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One,以下,エクストラクション)。オンラインで開催されたメディア向けの先行体験会にて,PC版のプレビュービルドに触れる機会を得たので,その印象をお届けしよう。
なお,記事内で触れているすべての情報はプレビュービルドのものであり,ゲームの製品版とは異なる場合がある。その点をご了承いただきたい。
「レインボーシックス エクストラクション」とは?
「エクストラクション」は「レインボーシックス シージ」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)(以下,シージ)にて2018年の3月から約1か月間開催された,初となる協力プレイイベント「アウトブレイク」(関連記事)をベースに開発された新作タイトルだ。ニューメキシコへの隕石の落下が未知のアウトブレイクを引き起こし,事件の調査と収束を図るため,多国籍特殊部隊「レインボー」が投入される……。というのが「アウトブレイク」のあらすじだったが,今回発売となる「エクストラクション」では,その後日談となるストーリーが展開される。
ニューメキシコでのアウトブレイク後,米国各地で「キメラパラサイト」が突如出現。これらに対抗するため,先進テクノロジーと装備を備えた「Rainbow Exogenous Analysis & Containment Team」,通称「REACT」が組織された。プレイヤーは「REACT」のメンバーとなり,危険かつ未知の存在である「アーキエン」に立ち向かっていくことになる。
操作やUIは「シージ」を踏襲しており,ほぼ同じ感覚で操作できるので,シージプレイヤーであれば問題なくゲームのスタートラインに立てる。また,本作は記事タイトルにも書いた通り「協力型タクティカルシューター」であるため,協力プレイを前提とした難度になっていると感じた。詳細は後述するが,製品版の購入者がフレンドを一定時間招待可能なシステムを実装予定とのことなので,そちらも活用したいところだ。
最大3人でのパーティ編成後,マップと難度を選択すると,オペレーターが選択可能になる。それぞれのオペレーターが保有する「メインガジェット」は基本的に「シージ」を踏襲しているが,対人要素のない「エクストラクション」では方向性を維持しつつ,一部の性能に変化が加えられている。武器の選択や,「REACTテック」と呼ばれるステージを進めるうえで補助となるガジェットの選択などを終えれば,作戦開始となる。
選択したマップによって,それぞれ課されるミッションは異なり,VIPの救出や特定目標の殲滅など,3つのサブゾーンの目標を順番に達成していくことでマップクリアとなる。だが,体力や弾薬,ガジェットなどが不足している場合や,仲間のオペレーターが行動不能になったときなど,さらなる作戦の継続が難しい状況では,それぞれのサブゾーン内に設置された回収装置を使用して撤退を選択することもできる。
PvPをメインに置く「シージ」とは異なり,PvEである「エクストラクション」では「REACT進行状況」「オペレーターレベル」「体力」「MIA」の概念が導入されているのが特徴的だ。順に紹介していこう。
「REACT進行状況」は「組織としてのレベル」のようなもので,主に作戦を行うことで得られる経験値によってレベルアップしていく。これによって「新たなREACTテックの開発」「新たなオペレーターのアンロック」が行えるようで,テスト版では時間が限られていたこともあり「新たなオペレーターのアンロック」はできなかったが,「新たなREACTテックの開発」は行えた。
新たなREACTテックを入手するには「トークン」と呼ばれる物資が必要となるので,「一定レベルに到達→開発がアンロックされる→トークンを消費して入手」という流れになる。爆薬には扱いやすいインパクトグレネードや守りで効果を発揮するクレイモア,ギアには被ダメージを減少させるボディーアーマー,携行弾薬数が増加する弾薬バッグなどが存在し,アーキエンとの戦闘に大きな影響を与える。プレイスタイルと相談しながら開発を行いたい。
「オペレーターレベル」も新しく導入されたシステムだ。こちらも「REACT進行状況」と同様,作戦を行うことで得られる経験値によってレベルアップしていくが,使用したオペレーターのみに加算される点が異なる。レベルアップによって「メインガジェットの性能が向上する」「新たな武器がアンロックされる」「被ダメージが減少する」などの効果がある。特に難度が上がるにつれ,敵の攻撃力もどんどん高くなるため,「高難度に挑むにはレベルを上げる」ことがほぼ必須だ。
テストでは6レベル(最高は10レベル)のオペレーターを最初から使用できたのだが,FPS経験者のパーティプレイをもってしても,プレイできた中での最高難度「超高」では手も足も出ないレベルで苦戦を強いられたほど。「爽快殲滅シューター」ではなく,「レインボーシックス」らしい,しっかりと手応えのあるバランスに仕上がっている。
最後に「体力」と「MIA」について触れておこう。先述通り,3つのサブゾーンをクリアすることでマップクリアとなるが,道中の体力自動回復は一切ない。さらに,気をつけたいポイントとして「負ったダメージは回復しない」というものがある。ヒール効果を持つ「DOCのスティムピストル」「FINKAのアドレナリンサージ」「道中に回収した回復アイテム」などは「ブーストHP」として加算されるのだ。このブーストは通常のHPと同様に機能するが,時間経過で減少していくので,後述の理由と合わせ,そもそもの被弾を避けることが非常に重要になる。
作戦から無事に帰還したとしても,オペレーターが作戦中に負ったダメージは即座に回復せず,次の作戦に持ち越しとなる(ブースト分は含まれない)。HPが一定以上であれば続けての作戦実行も可能だが,他のオペレーターで作戦を行うことで,待機状態のオペレーター全員のHPが徐々に回復する仕様となっているので,レベルアップも兼ねて「様々なオペレーターでガンガン回していく」のがオススメだ。
作戦中にHPが0となり,行動不能になると,オペレーターは「ステイシスフォーム」と呼ばれるゲルのようなもので覆われ,身動きができなくなる。パーティでプレイしている場合,他のプレイヤーがフォーム状態のプレイヤーを回収地点まで移送できれば,該当オペレーターは「負傷状態」となって治療を受け,後に戦線へ復帰することが可能だ。
だが,回収が行えずステージ内に置き去りにしたり,パーティが全滅したりした場合などは「MIA」(Missing In Action,作戦中行方不明)となり,そのオペレーターは使用不可能になってしまう。再びオペレーターを使用可能とするためには,MIAとなったマップを他のオペレーターでプレイすると出現する「救出作戦」をクリアしなくてはならないので,貴重な要員の安定確保のためにも無理矢理の侵攻は控えたほうが賢明だろう。
多種多様なアーキエンに仲間と戦略で挑め
「エクストラクション」には様々なアーキエン(敵NPC)が存在し,「アウトブレイク」から引き続き登場する「グラント」(近接攻撃を行ってくるアーキエン)や,本作から登場する新タイプが容赦なくREACTの行く手を阻む。アーキエンは視覚だけでなく,発砲音などにも敏感に反応して襲いかかって来るため,サプレッサーによる消音効果が大きいと感じた。また,発見さえされていなければ,近接攻撃による一撃キルのテイクダウンも行えるので,状況に応じて判断したい。
携行弾薬数は「シージ」と比較すれば遥かに多いものの,調子に乗ってぶっ放していると弾薬切れをすぐに起こすため,節約の意味でヘッドショットキル,弱点を狙ったキルは非常に重要になる。だが,中にはヘッドショットが有効打にならない敵も存在し,これらの敵は胴体や足などを狙って攻撃する必要があった。前述の通り,サプレッサーは非常に重要だが,「シージ」よりもサプレッサーを装着した場合のダメージ減少が大きいため,「メインかサブ,どちらかにのみサプレッサーを装着する」といった対応も考える必要がある。
さらに「アウトブレイク」では回復アイテムや弾薬箱がそれなりに置かれていたが,本作では数が少ない。特に難度の上昇と共に,弾薬箱のスポーンは目に見えて減少し,体験できた中での最高難度「超高」では,「1つのサブゾーンクリアで,いずれかのアイテムがスポーンするかしないか」といったレベルにまで減少した。パーティ全員分はスポーンしないので「誰に使用させるか」の選択も迫られる。難度を上げるほど「エイムでゴリ押し」はかなり厳しく,時間制限もあるので「ゆっくりステルス」なプレイも難しい。
ミッションの内容を判断し,適切なオペレーターやREACTテックの選択が要求される,非常に高い戦略性と難度を両立しているPvEシューターというのが筆者の体感だ。
「クリアだけで終わらない」豊富なゲームボリューム
ここまで大まかにシステムを紹介してきたが,「レベルの存在」「ゴリ押しできない難度」と,本作は周回を前提とした構成となっているのは明白である。そのため,「自らを強化して高難度に挑む系」のゲームが好きなゲーマー,特にシューターが好きなゲーマーであれば非常に楽しめると思う。だが,中には「やり込んだ後のさらに次のステップ」を欲するゲーマーも少なくないのではないだろう。筆者もその1人だが,そんな欲張りなプレイヤーにも「エクストラクション」はしっかり応えてくれる。
本作のエンドコンテンツに位置するのが「メイルストロム・プロトコル」だ。ランク制のウィークリーチャレンジとなり,通常は3つのサブゾーンが9つに増加し,進むごとに難度が上昇していく非常に手応えのある仕様になっている。今回のテストでは時間の関係でプレイできなかったが,「一部の選抜されたオペレーターのみ使用可能」「通常モード内の最高難度を上回る敵が出現する」とのこと。クリア時のスコアによってランク評価され,ダイヤモンドクラスにまで到達できれば限定リワードが獲得できる。腕に自信のあるプレイヤーは挑戦してほしい。
この「メイルストロム・プロトコル」の他にも,新コンテンツを含む期間限定イベントの「クライシス・イベント」,ルールが週替わりとなる「アサインメント」など,無料の追加コンテンツでゲームを存分に楽しめる。
また,本作は協力プレイをメインとしていることもあり,製品版の購入者は「バディパストークン」が2つ付属し,購入していないプレイヤー2名と共にパーティを組んでのプレイが可能となっている。期間は14日間のみ,「メイルストロム・プロトコル」がプレイできないなどの制限はあるが,基本は製品版と変わらないとのこと。フレンドとプレイし,気に入ったら購入してもらうのは良い選択肢だろう。クロスプレイに完全対応しているので,異なるプラットフォーム間のフレンドとも協力プレイが可能な点も非常に大きな魅力と言える。
絶妙なバランスのプレイフィールを味わえる意欲作
総じて,「シージ」のアクションに,RPGのような要素が加わり,新たな体験がプレイヤーを待っている。1度でも戦闘が始まればあらゆる方向からアーキエンは襲ってくるが,その中で目標とリソースを考え,冷静に対応しなくてはならない「冷静と焦りの狭間」が常に入り乱れるフィールは非常に新鮮で楽しい。正直,筆者も「カウンターテロ部隊のレインボーがバケモノと戦うってどうなの……?」とプレイ前は感じていたが,シリアスな世界観やビジュアル,「レインボーシックス」の名に恥じないシビアなゲームシステムを体感すると「これはこれでアリ」と思ったことは伝えておきたい。
熟練のシージプレイヤーにも,「シージは気になるけどPvPはちょっと……」というような人にもオススメできる作品(もちろん,高難度のPvEシューターが好きな人にも)なので,気になった人はぜひチェックしてほしい。