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『純烈ジャー』後上翔太「純烈と純グリーンはファンと共に成長していく」

いよいよ公開が迫る『スーパー戦闘 純烈ジャー』。ムード歌謡グループ「純烈」が温泉を守るスーパーヒーローに変身、本格的な特撮アクションを魅せる快作は、小林幸子さんが悪の女王役、前川清さんが温泉施設内の売店店長役で出演することも大きな話題を呼んでいる。

――『純烈ジャー』でいきなり特撮ヒーローの世界に入るだけでなく、主演扱いということで戸惑いも大きかったのではないですか。

後上 ここまで来ちゃうと「そうなんだよな」と思えるんですが、決まった当時はそれを直視しないようにしていましたね。

――どういうことですか?

後上 台本を読むと自分が大事な存在だということがわかるじゃないですか。その ”大事” を真正面から受け止めちゃうと、逆に「絶対ムリじゃん」となって動けなくなってしまうんですよ。なので、「1日、最低これくらいは頑張ります」というのを決めて、それを地道に積み上げていく感じでした。

スタッフさんが求めていたものに、実際僕がどれくらい応えられたかは客観的にはわからないですが、映画を観ると、僕がやれることはやった上で、足りない部分をすべてスタッフさんや他の共演者の方にすごくお力添えをいただいたな、という印象があります。

――今回の作品は「後上さんをヒーローにする」ことが前提だったということですが、それもプレッシャーですよね。

後上 「それを聞いた時、どう思われましたか」とよく聞かれるんですが、逆に何も思わなかったんですよ、実感がなさすぎて(笑)。「純烈主演で映画をやる、内容は戦隊ヒーローものでお前が変身する」って、立て続けにポンポンとこういう普通の会話の流れで来たわけですよ。情報量が多すぎて「はぁ……」って感じです。本当は気の利いたことを言いたいんですが、現実的にはポカン……でした。

――小林綾子さんとの共演場面が多かったですが、撮影の合間のやり取りなどで印象的なことはありますか。

後上 どういう方なのかいろいろとネットで調べてみると、「『おしん』で史上最高視聴率を記録」みたいな凄い情報がいっぱい書かれていたので、初顔合わせの時は「これはヤバい」とカチカチになったんです。そうしたら、「こないだの温泉の番組、観ましたよ」みたいにすごくナチュラルな感じで話しかけてくださって。カチカチに凍りついていた自分を、熱湯ではなく一番心地の良いぬるま湯のような優しい言葉で解きほぐされた感じでした。

――演技面では細かい指示などあったりしたのですか。

後上 いえ、それとは逆で「思った通りでやってください」と。最初は「それがわからないんだよ、くそーっ!」って思っていたんですが、途中からはわからないなら台本どおり、言われたとおりにやるしかない、という開き直りができるようになって。

――『純烈ジャー』の後上さんと実際の後上さんにつながる部分はありますか。

後上 う~ん……あちらはあくまで ”純烈の後上” という感じで、自分とはそんなにつながらないかもしれないですね。『純烈ジャー』の後上さんは、先生にしたこととかを引きずっていたり、自分を守るために辛く人に当たって悪態をついてしまうところもあるんですが、リアルな自分だったらそういう時、もっとクールに上手く躱しちゃうと思うんですよ。映画の自分は人間味があって、そこも素敵だなとは思います。

――今回は出口亜梨沙さんとも少し艶っぽいシーンもあったりしますね。

後上 出口さんはもうビジュアルの段階で色気たっぷりなんですが、お芝居も魅力的だから、もう素でほわ~っと引き込まれていきました。

――今回はギャル男っぽい感じのメイクもされていました。

後上 あ、その部分はリアルですね、昔ギャル男やってたので(笑)。

――演じる中で力が入った場面となると、どこになりますか。

後上 バーっと走って先生を追いかけるところですね。あそこ、ガチで走った後リアルにハアハアしながら演じたんですよ。今考えると、僕がよくない方向で力が入りそうなところは監督やスタッフの方が先回りして、自然に演じられるように手配してくださってるんですよね。

――素直に気持ちが繋げるように。

後上 はい、自然な流れで起きていることに対して素直に演じれば、上手く見えるような順番でやっていただいたんだと思います。

(C)2021東映ビデオ

――佛田洋監督の演出はいかがでしたか。

後上 めちゃくちゃ優しくて、その優しさが逆に骨にしみましたね。ダメだった時、「この下手くそ、ふざけんな! もう1回!」って言われたら「すみません!!!」っていう感じになるんですが、実際には「ああ、OK。良くなってきてるから、もう1回やってみよう」なんて言ってくれるんですよ。若ければ素直に受け止めますけれど、純烈として10年やってますと、そこら辺の空気感は……。

――理解できてしまうと(笑)。

後上 でも変に威圧するのではなく、その時々に合わせて、いろいろなボールを投げかけてくださったんです。そのお陰で落ち込むのではなく、割とフラットなままで「もう1回、お願いします!」という気持ちでいられたのはありがたかったです。

――かなりの名監督だったんですね。

後上 やっぱりご一緒するので、いろいろ調べましたけど、過去に手がけられた作品を見ていても第一人者じゃないですか。ただただ「凄いな」って思っていました。

――実際にヒーローになってみての感想はいかがでしたか。

後上 正直に言うと、まだ実感がない部分がありまして(笑)。他のメンバーはヒーローを1年間やり続けていたじゃないですか。でも僕、この映画の撮影中で言ったら多分カメリハとか合わせて20回くらい、しかも1~2日分の撮影しかやってないものですから。

――ああ、なるほど。

後上 でも先日『純烈ジャー』のムビチケを買ってくださった方との写真撮影会があったんですが、ちょいちょい「純烈ジャーの変身ポーズやってください」って言われて、そこが一番実感がわいた瞬間かもしれません。今まで「変身ポーズやってください」って言われたら、ガオブラック、カブトライジャー、仮面ライダーギルス、僕は東京理科大学なのでぼーっと立っている ”3人ヒーロー、ひとり地球人” がデフォだったものですから。映画だけでの変身だったら、もしかしたら実感がないままだったかもしれません。

――ファンの人達に認められて、初めてヒーローとしての自覚が持てた、と。

後上 かもしれないですね。でも、それって純烈らしいなって思うんです。自分の感想よりも、それを受けたお客さんのリアクションを感じていろいろ考えるという状態でやってきていますから。紅白出場の時もそうだったんですよ。知らせを受けたら勿論嬉しいし、グッとくるんですけれど、その知らせを持っていろいろなライブへ行くと、自分が思った以上の豊かな感情表現で喜んでくれる人が客席にいてくれて、その反応でだんだん実感がわいてきたところがあるんです。純烈に携わっている間はずっとそうだったので、今回のヒーローの実感も、その延長線上にある感じですね。

――映画公開後のさらなるお客さんの反応で、純グリーンがますます存在感を増していくことになりそうですね。

後上 はい、僕自身の中にもより深く入ってくるかなって思います。

――今回の『純烈ジャー』は、純グリーンの誕生編になります。もし今後パート2などの展開があるとしたら、例えばこういう活躍をしてみたい、といった野望みたいなものはありますか。

後上 どうなんですかね……野望っていうと、何か高みを目指すみたいな印象ですが、僕はポスターに書いてある「地球は頼んだ。温泉は任せろ。」これをずっと大事にしたいですね。世界を滅ぼす悪、そういうのは僕には全然無理なので、というスタイル、そこのアイデンティティが崩れないまま純烈ジャーは存在したいなって思います。

――あくまでも温泉を守る立場であると。

後上 そうですね。今回は営業でお世話になっているスーパー銭湯でのロケでしたけど、例えば「47都道府県純烈ジャー」って言って、全国の温泉で何かしらが起こる、みたいな。

――まるで『水戸黄門』ですね(笑)。

後上 そうです、そうです! 「●●温泉で○○が出たぞ」みたいな、そういう小さいことを面白くやれるのが純烈らしい部分だと思いますので。超一流のスタッフの皆さんが関わっているのに、1回1回を観てみるとすごくローカルなところでくだらないことをやってるっていうのが、らしくて楽しいんじゃないですか。

>>>後上翔太さんのソロショット、小林幸子さん演じる悪の女王フローデワルサ、ドキドキの『純烈ジャー』メイキング写真を見る(写真10点)

(C)2021東映ビデオ

撮影(後上翔太・純烈)/大山雅夫