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石油・ガス大手BPの投資部門であるBP Venturesは、ドイツの車内デジタル決済プロバイダーであるRyd(ライド)に1000万ユーロ(約13億円)を出資すると発表した。声明によると、この新たな資金は、Rydが国外の市場に参入し、提供するサービスを充実するために使用する。

Rydのサービスでは、同社のアプリやスマートカーシステムと統合すると、ユーザーは燃料の購入、EV充電、洗車などのサービスの対価をオンラインで一括して支払うことができる。BPはすでに英国とオランダで、BPmeアプリを通じてデジタル決済の選択肢を提供している。BPは、Rydへの出資と同社との提携により、Rydの安全で柔軟なデジタル決済サービスに学びつつ、自社のデジタルサービスを拡大していきたいと考えている。Rydは、同社の技術を欧州全体のBPの顧客に提供することで、利益を得ることができる。

「車内デジタル決済は、顧客が当社の小売店に期待するシームレスで便利な体験に不可欠な要素です」とBPの欧州・南アフリカ地域のモビリティ&コンビニエンス担当上級副社長であるAlex Jensen(アレックス・ジェンセン)氏は話す。「Rydの技術は、まさにそれを実現するのに役立ち、しかも増えつつあるサービスの幅にも対応しています」。

これは、BPがスマートビークル分野で行う最初の投資ではない。そして、おそらく最後の投資になる可能性も低い。6月には、IoTechaに700万ドル(約7億7000万円)を投資した。IoTechaは、IoTを利用して充電器を電力網に接続し、充電料金の支払いを自動化するスマートEV充電会社だ。こうした戦略的な投資は、最終的にBP Venturesのエコシステムを強化することになる。このエコシステムは、BPが総合エネルギー企業として生まれ変わる力になるとともに、二酸化炭素排出量の削減にも貢献する狙いがある。

Rydは現在、7カ国3000カ所の提携サービスステーションで利用可能だ。また、140万人の直接の顧客に加え、Mastercard(マスターカード)や複数の自動車メーカーとの提携により、最大1億人の顧客にアクセスできる。コネクテッドカーのデータ市場は、2030年までに世界全体で190億ドル(約2兆900億円)に達し、また、燃料以外の小売市場は同年までに世界全体で2850億ドル(約31兆3500億円)に達すると予想されていることから、同社は現在、より多くの車に同社の技術を組み込む戦略に力を入れている。

「Rydは、手間がかからず安全な自動車とのインタラクションを実現したいと考えています」とRydの創業者で会長のOliver Goetz(オリバー・ゴエス)氏は声明で述べた。「BPは、私たちにとってパズルの最後のピースであり、金融、自動車、エネルギーのすべての事業分野における強力な戦略的パートナーとともに、私たちのエコシステムを完成させてくれます。BPは、数千万人のドライバーが、自動車のデータとガソリンスタンドなどの決済システムの両方に接続されたダイレクトデジタル決済システムに移行すると予想しています。この新しい決済方法は、より速く、より簡単で、より快適です。Rydは、欧州におけるこの動きをリードしていきます」。

RydのCEOであるSandra Dax(サンドラ・ダックス)氏によると、同社は2021年第4四半期にBPのガソリンスタンドで初の稼働を見込んでいる。

画像クレジット:REUTERS/Arnd Wiegmann

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi