東京ゲームショウ2021のコナミブースにて展示された『遊戯王マスターデュエル』は、一見すれば『遊☆戯☆王』のカードゲームをビデオゲームに落とし込んだ最新作にうつるでしょう。ところが本作は、20年以上を越える歴史のなかで新しいアプローチを取った作品となっています。それは、初めてカード自体の世界観や物語をフィーチャーしていることです。
1996年に少年ジャンプにて連載された漫画『遊☆戯☆王』にて、初めてカードゲームが出てきたのは連載の初期からでした。当初は『マジック・ザ・ギャザリング』をモデルとした『マジック&ウィザーズ』という名前のカードゲームでしたが、連載が進むにつれ『デュエルモンスターズ』と公式に名付けられることになります。
実に初登場から25年以上が経過しているのですが、その間、実は『デュエルモンスターズ』ではカードゲーム自体が描いている世界観やストーリー自体の物語が描かれることはほぼありませんでした。もともとの『遊☆戯☆王』自体のストーリーが、主人公の武藤遊戯や海馬瀬人といったプレイヤーの物語が主だったこともあります。
では、『遊戯王マスターデュエル』によって、カードの物語が描かれることでどのような体験になっているでしょうか? 今回のプレイレポではその点を紹介しましょう。
カードにまつわる様々な物語と世界
さて “カードにまつわる物語 ”とはどのようなものが用意されているのでしょうか? カードゲームではたとえば似た属性や種族のカードから、なんらかのキャラクターの人間関係や、世界観が垣間見えるものでしょう。『遊戯王マスターデュエル』では、そうした近い種族のカードから浮かび上がる世界観や人間関係にフィーチャーしたストーリー表現を行っているのです。
今回の試遊では、カードのテーマに合わせたいくつかの大きなシナリオが用意。「星遺物に選ばれしもの」というシナリオでは「聖杯」シリーズを元にした物語が描かれ、機械生命体による地球との統治を巡り、戦士と巫女たちが戦いを繰り広げる物語が展開されます。
シナリオでは冒頭に大きな世界観が提示され、主要登場人物となるカードが紹介されたのちに、実際のカードバトルに繋がっていくという構成によって物語を浮かび上がらせる手法を取っています。ここではバトルシーンの中で「聖杯」シリーズならではの連続リンク召喚という、リンク1のカードから、リンク2、リンク3とステップアップし、連続して召喚するスタイルについて学びながら、物語を追いかけていく形となっているのです。
ある意味、今のソーシャルゲームのようなストーリー表現かもしれない
『遊戯王マスターデュエル』をひと通り試遊して感じたのは「これは現代のソーシャルゲームが持つストーリーのスタイルにも近いのではないか」とも感じられました。ソーシャルゲームにおいて、ガチャで入手できる個々のキャラクター自体は独立しても、何か世界観や人間関係に関わること情報を知ったときに、点と線が結ばれるかたち物語が見えてくる性質があります。
ソーシャルゲームにおいてはメインストーリーやサブストーリーにて、そんな独立したキャラクターの点と線を広げ、大きい物語を感じさせる手法が取られているのを振り返ると、『遊戯王マスターデュエル』は『デュエルモンスターズ』自体の世界観を近い手法で広げようとしているのではないか、と思いました。
そもそものソーシャルゲームが2010年代に拡大するに当たって、ある意味ではトレーディングカードゲームの影響も少なくはなかったことを考えると、時を経てソーシャルゲームがストーリーの表現を強化し、その手法がいま『遊戯王マスターデュエル』にも関係しているようにも見え、興味深いものがありました。
『遊戯王マスターデュエル』は基本プレイ無料で、今冬のリリースを予定。はじめて遊戯や海馬といったカードプレイヤー自体の物語ではなく、カードに描かれた世界の物語をフォーカスした内容は、注目に値するでしょう。