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画にプラス要素を。

画には法則があります。
それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。
永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。
そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。


TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(@Kai_ryu_Kai
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada


【+画 ONLINE】
vol.012:蝶/ディテールの追加
(CGWORLD Online Tutorials)の詳細・動画はこちら

自然のモチーフをとりいれる

今回は下記の2枚の絵のようなディテールアップ法を解説したいと思います。



蝶の3DCGも需要があるもののひとつですね。私のCG人生の中でも10回以上は仕事で作っていると思います。蝶、植物、動物などなど。人間の意志の通りにならないもの。都合がつかないもの。そういったものをコントールするのに3DCGはとても都合の良い道具ですね。

デザインのうえでは、蝶の模様というものはとても洗練されていて、幾何学模様のようです。数学的で美しいです。はっきり言って、その一部をなぞるだけで画として完成してしまいます。こういった自然のモチーフをとりいれていくデザイン手法を「バイオミミクリー」というそうです。ここではそこまで専門的な解説はしませんが、自然は常に私たちにとって学びになるとても大きな存在であることは間違いないでしょう。


蝶をつくるときにはいつもそれに付随すること、二次的なテーマを考えています。いずれ詳しく解説しますが、こちらはレイアウトにシンメトリを使ってます。なにかつまらないものでも全く同じものがミラー的に並んでいると不思議と目をひくものです。


こちらもシンメトリですね。左右対称はものを落ち着かせる効果もあります。安定です。


こちらはねじれを利用したレイアウトです。少しひねりを加えると画に躍動感がでます。


そして、これはガラスの表現。今はなきmental rayでの作品ですね。

さて、そろそろ今回の本題に入っていきましょう。


<画角の法則>
「観察眼」
「境界」

3DCGを3DCGたらしめているもののひとつには境界の見え方があると思います。完璧なまでに潔癖な3DCGは不純物を許しません。そのため、まるで無菌室で作業しているような空間です。これは物との関係をみてもよくわかります。完全に隔絶されています。

物と物との境界はラインで表しますが、これを極端に表すと二次元的な表現になっていきます。


例えば、このように単純なラインの囲いだと、二次元の表枠のようですね。これにリアルをもとめていくと……。



少し位置をずらしたり……。


歪みをいれたりします。ただやりすぎると余計に嘘くささが強調されてしまいます。


なので、あくまに自然にラインを調整していきます。

さて、続いて下記の画像を見てください。


ここまで紹介してきたラインの調整の仕方は、地面にラインを描く表現に応用できます。


ただラインをひいただけでは、真新しいペイントしたようなラインになってしまいますが……。



これに先ほどのランダムさや歪みを加えていくと、より自然な、何年か前にひかれたようなラインに加工していくことができます。これらエッジによる、ものの関係性を見極める力を身に付ける方法は、毎日の観察をおいてほかにありません。

Detail

今回はネオン管をモチーフにして、蝶の模様を描いてみました。しかし、蝶の羽の形にただネオン管を描いてみても、単なる白いマスクになってしまいます。


以前、生徒からの質問で「光らせているはずなのに、光りません!」というものがありました。これは物体の関係を理解していないとうまくいきません。なぜ、ものは光ってみえるのか? ものが光っているのではなく、周りに光ってることが伝わっているからですね。ネオン管と空気の関係を考えなくてはなりません。

現実世界ではネオン管に電源を入れればおのずと光ってくれます。しかし、CGソフト上でいかなる質感にライトの値を施しても白は白でしかありません。この蝶のラインの画もライトマテリアルを適用していますが、ただのマスク画像に見えます。


そこでちょっとフレアをのってけてみましょう。これだけでなんとなく光っている感じになります。これは空気と関係性をもったからですね。ネオン管ではなく、光っている波動が周りの空気に伝わっているのです。


さらに、土台となる羽も用意してみましょう。空間との関係に土台が加わって、ここに反射光が加わることにより、より現実味、密度のある光を感じることができるようになりました。


ただ光っているだけならいいのですが、今回はネオン管の質感も出したいので、見え方を調整しましょう。一定のディテールをネオン管に与えます。


そして、さらに空間にディテールを足し、存在感を高めます。大切なのはあくまでネオン管の表現で、今回の場合は蝶も羽もディテールもそれを補助するものだということです。


さて、ここからエッジの見え方についても解説します。このままだとただのマスクですが……。


同じものでもエッジのディテールを高めることによって、ものとものとの関係性を上げ、リアリティを高めることができます。これがエッジのコントロール。画のディテールを上げる方法のひとつです。

この後どのような作業をしているかはムービーの方に制作過程を収めましたので、興味のある方はぜひご覧ください。

Composite


フレームバッファ上でコントロールしていたので、やや飛びすぎたレンダリング結果になってしまいましたが、コンポジットで調整していきましょう。こういったときのためにビット数は高い方で保存しておき、様々なレイヤーも保存しておきましょう。


調整レイヤーで全体的に露出を下げました。本来ならこういった写真ものは光の部分は飛んでしまったほうがリアルですが、ここはディテールを出したいので、わざと調整します。


最後に微妙な味付けですが、反射、ライティングを少々強めてきらびやかな印象を強めます。このあたりは動画の場合はやりすぎるとくどくなってしまうかもしれませんね。静止画と動画ではコンポジットや見せ方もずいぶん変わってきます。

物と物との関係性は現実世界ではありますが、3DCGではないに等しいので、そこをつくってあげる必要があります。人間世界で修復できない関係も3DCGでは修復できないことはありません。

よく3DCGを始めて少し経ったころ、こわがって間違いやエラーで作業ができなくなってしまう人がいますが、恐れることはありません。どんどん新しいことにチャレンジしていきましょう!

本来の画を創る楽しさをいつまでも忘れずに。

【チュートリアル収録内容】

<画創の法則>
・観察眼
・ディテールの追加

<実際の制作過程メイキング>
モデリングからコンポジットまで
使用ソフト:3ds Max、After Effects

長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。ムービーの解説ではさらに詳しくないようをご説明しております。


【+画 ONLINE】
vol.012:蝶/ディテールの追加
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Information


  • 3ds Max『画龍点睛オンライン』講座

    文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。

    tutorials.cgworld.jp


  • 3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)

    CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。

    online.dhw.co.jp/course/3dcg

Profile

  • 早野海兵/Kaihei Hayano

    画龍 / Garyu

    ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
    #3dsMAX,#adobe aftereffects,#zbrush,#substancepainter

    <代表作>
    ゲーム『鬼武者』シリーズ

    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ

    『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 “STAR OF WISH”』

    著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ

    連載「+画」、「画龍点睛」

    早野海兵公式サイト:kaihei.net

    画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com

    Twitter:@Kai_ryu_Kai