新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に歯止めがかからない沖縄県で、医療提供体制が崩壊する危険が迫っている。患者の病床にはまだ余裕があるものの、医師や看護師らに感染が広がり、人手不足で診療が困難になっているのだ。すでに一部の病院は一般外来や救急診療を休止しており、県は対応に追われている。
「オミクロン株の感染力は驚異であり、爆発的だ」
県内の新規感染者数が初めて1千人を超えた7日、玉城デニー知事はこう述べて危機感をあらわにした。
県内では昨年12月中旬から新規感染者数が増加し、年明け後に加速、1日に52人、3日130人、4日225人、5日623人、6日981人、7日1414人-と激増し、8日は1759人に達した。
大半は20代の若者で症状も軽く、データ上の病床使用率は8日現在で36・0%だが、内情は深刻だ。「予測していなかった医療スタッフの欠勤増加で、思うように病床を確保できない」と県の担当者が打ち明ける。
県によると、新型コロナ患者を受け入れる県内の重点医療機関で、感染や濃厚接触などで欠勤している医師や看護師ら医療スタッフは8日で437人に上った。5日時点では122人だったが、6日220人、7日313人-と、こちらも急増している。
このため那覇市の沖縄赤十字病院では6日から救急診療の受け入れを停止した。那覇市立病院は11日から一般外来を休止する。ほかに複数の病院が診療を制限している。
離島はさらに深刻だ。宮古島市では8日、過去最多の133人が感染。直近1週間の10万人当たりの新規感染者数が全国最悪レベルの736人に達した。受け入れ機関である県立宮古病院でも医療スタッフの欠勤が相次いでおり、県に看護師20人の派遣を要請した。11日から当面の間、一般外来を休止する方針だ。
最も懸念されるのは、若者らの感染が、重症化リスクの高い高齢者らに広がることだ。8日の新規感染者のうち20代が5割超の903人を占めたが、60代以上も88人と着実に増えている。
厚生労働省に対策を助言する専門家組織に、県立中部病院感染症内科の高山義浩医師が提出した資料では、昨年12月からオミクロン株による米軍での大規模流行が発生していた▽年末年始に2年ぶりに親族が再会するなど、今年の正月は特別な濃密さがあった▽検査が無料化され、若年層が受けやすくなった-ことなどが感染者急増の要因とする見方が示された。県保健医療部の糸数公(とおる)医療技監は「3連休で家族内感染が増えれば医療体制はますます逼迫(ひっぱく)する」とし、感染防止の徹底を呼び掛けている。(川瀬弘至、川畑仁志)