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【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第13回となる今回は?

 

第13話

 

 

ビック
BIC オレンジEG(左)
110円(税込)

1961年に誕生し、「オレンジBIC」の名で親しまれる油性ボールペン。手ごろな価格ながら、書き心地とデザイン性に優れ、“定番ボールペン”として世界中で愛されてきた。60周年を迎えた今年、廃番が決定。ファンの間に激震が走った。

 

↑後継モデル(110円・税込)の筆記距離は従来品より長い3.5km。インク残量が見やすいクリアボディだ

 

後継モデルでは拭えない淋しさから、いつか来るツールの“寿命”に思いを馳せた

「BIC オレンジEG」が廃番になると聞いて驚きました。OKB(お気に入りボールペン)総選挙を主催して10年間、様々な定番品がカタログから消えていくのを目の当たりにしてきましたが、これはさすがに大丈夫だろうとタカをくくっていたからです。なにせ1961年発売の大先輩。世界中で愛されている油性ボールペンの代名詞的な存在であり(欧米では特に)、それがまさか……いや、考えてみれば、まさにその巨大さゆえに、昨今のアナログ道具離れや、安価で高品質な日本製ボールペンの台頭のダメージを直に被っていたのかもしれません。

 

しかし、幸いにも後継となる「BIC クリスタルオリジナルファイン0.8 黒インク」がすぐに発表され、すでに市場に出回り始めています。こちらはその名のとおり綺麗なオレンジの透明軸で、筆記距離は1.75倍に伸び、環境への配慮も行き届いています。書き味はBICらしい重みと粘りがあり、旧ファンにも親しみやすいバランスになっているのは流石です。ただし、先代の“不透明軸ならではのレトロなキュートさ”は失われてしまいました———やはり、一抹の淋しさは拭いきれません。

 

いま、あなたが愛用しているそのツールだって、いつかきっとなくなる日が来る。そんなプロダクトの「寿命」に少しだけ思いを馳せてみると、目の前の風景が変わって見えてくるはずです。我々は別れから、残されたものの価値を知ることができるのです。

 

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