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「美味しいお酒は熱燗にしない」という言い方もあると思うんですけど、冬の熱燗はやっぱり格別だと僕は思います。

冬の厳しい寒さの中、足先から鼻のてっぺんまで冷え切って、「寒い寒い」と言って居酒屋に入って熱燗を頼む。つきだしを口に入れてから、じんわりと飲んでいく熱燗は、身体を芯から温めてくれます。

加えて、良い熱燗ほど食材の良さを引き出してくれるメリットがあります。燻製系のおつまみに旨味の強い日本酒を合わせるのが本当に好きで、ベストマッチに出会った時は感動すら覚えます。

本ページでは、そんな熱燗についてまとめていきたいと思います。最後に、個人的におすすめしたい熱燗向きの日本酒についてご紹介します。

熱燗の歴史

いきなり堅い話になりますが、せっかく勉強したのでまずは熱燗の歴史の話からまとめてみたいと思います。

手始めにWikipediaによれば、庶民が燗酒を年間通して飲むようになったのは16世紀後半(織田信長や豊臣秀吉の時代ですね)に清酒が発明された頃からと記載されています。

同時代に信長や秀吉と交流のあった、宣教師のルイス・フロイスが、著書の『日欧文化比較』にて「日本人はほとんど一年中酒を温めて飲む」と記載しているそうです。

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通年飲むのはこの時代からだとしても、では秋冬の寒い時期に温めて飲んでいたのはどの時代なのか。これは永山久夫さんの『日本の酒うんちく百科』という本に記載がありました。

平安時代中期の法令集『延喜式』の中には、お酒を温める鍋を意味する「土熬鍋(どごうなべ)」という言葉が記載されているそうで、永山さんは「平安時代には既に”燗鍋”の風習が出来上がっていたのは確か」とされています。

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別の『貞順故実聞書条々』という記録には「酒の燗は九月九日から翌年の三月二日までたるべし」と書かれているそう。9月9日から3月2日、ただしこれは恐らく旧暦なので、今の暦にすると10月後半から4月中旬でしょうか?

たしかに熱燗が美味しくなる季節で、納得です。

ちなみに、永山久夫さんの『日本の酒うんちく百科』という本が、日本酒のことを知る上でめちゃくちゃ面白いので紹介しときます。

色んな熱燗

ひとくちに「熱燗」と言っても、実は色んな温度帯の熱燗があります。

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細かいことを言えば「熱燗」というのは50度で飲むことを言います。それより更に熱く(55度)して飲むことを「飛びきり燗」と言います。逆に熱燗より低く45度で飲むことを「上燗」といいます。そして40度で「ぬる燗」、35度で「人肌燗」、30度で「日向燗」というのです。

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ちなみに、それ以下の常温(20度〜25度くらい)を「冷や」と良い、15度で「涼冷え(すずひえ)」、10度で「花冷え(はなびえ)」、5度で「雪冷え(ゆきひえ)」となっていきます。

更に、全く別の熱燗についてもご紹介しましょう。

大名燗(だいみょうかん)」と「あんどん燗

普通、熱燗をつけるときは鍋などにお湯を張って、その中に徳利やちろりに入れたお酒を入れてじっくり温めていきます。

しかしこの鍋に、お湯ではなくお酒を張って、その中で器に入れたお酒を温めるというなんとも無駄に思える贅沢な行為をして熱燗を飲むことを「大名燗」と言います。その名の通り、かつての大名のようなお金持ちにしかできない飲み方だったことは言うまでもありません。

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それから、昔は「あんどん燗」というのもあったそうです。あんどん(行燈)というのは、昔使われていた、日を使った室内の照明のこと。このあんどんの火の上にお酒を置いておき、じっくりじっくり時間をかけて低温でお酒を温め、寝る前にしっぽり飲むのが「あんどん燗」なのだそう。

「大名燗」「あんどん燗」に関しては、ともに前述の『日本の酒うんちく百科』にて紹介されていました。

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熱燗の付け方

さて、色んな熱燗を紹介する過程で一風変わった熱燗の付け方について先にご紹介してしまい、順番は逆になりましたが、ここで熱燗を付ける方法についていくつかご紹介しましょう。もし、ご両親などに熱燗酒をプレゼントされようとしていらっしゃる場合などには、心得ておくと良いでしょう!

1. 湯せん

最もオーソドックスなのが湯せんです。まずは鍋にお水を張ります。このときの高さは、徳利が7〜8割浸かる程度です。その状態でお湯を沸騰させます(徳利は入れない状態で沸騰です)

そしてお湯が沸騰したら、徳利を入れます。温度を測り、好みに応じて、あるいは前述の目安に従いつつ、徳利を引き上げます。この方法が最もオーソドックスにお酒を温められます。

2. 専用の酒燗器を使う

熱燗を作るのに便利なグッズも沢山販売されています。

まずはちろりを使う方法です。「ちろり」とは熱伝導性の高い金属製の容器で、その中にお酒を入れて容器ごと湯せんすると、より早く簡単に熱燗をつけることができます。錫(すず)製のものが高級ですが、銅やアルミで作られたものもあります。

徳利のまま、箱の中で湯煎することで熱燗を楽しむことが出来る、コンパクトサイズの『燗たのし』という商品もあります。場所も取らないし、取っ手付きで食卓まで持っていきやすい形状なので、これもとても便利そうです。

3. 電子レンジで熱燗する

電子レンジで熱燗を付ける方法もあります。最も簡単な方法ですが、正直僕はなんとなく美味しくない感じがしちゃうし、あんまりオススメではないです。ちゃんとやろうと思うと、何度も蓋を空けて温度確認をしないといけないので、面倒だし。

でも、お酒にこだわりのない居酒屋とか、大量に人をさばくお店では、電子レンジで熱燗を提供することも少なくないのだと思います(まだ大学生の頃に働いていたバイト先がそうでした)

熱燗向きのおすすめ日本酒

最後に、熱燗で飲んで「うまーーーっ」と感じたお酒を3つご紹介します。熱燗の美味しさって特に、その時の感覚(寒かった、お腹が空いていた、一緒に食べたものが美味しかったなど)に凄く影響されると思うので、参考程度にご覧ください。

福光屋 黒帯 飄々 古々酒 純米吟醸

『加賀鳶(かがとび)』というお酒で有名な石川県の福光屋さんの『黒帯』ブランドで提供されている『飄々』というお酒がまずひとつめです。

寒い冬におでんとかなんだか色んな料理と合わせて熱燗を頂いた中で、特に美味しかったのがこのお酒でした。おすすめする熱燗酒全部に言えるのですが、じんわりと体を温めてくれて、「うまいな〜幸せだな〜」と心から感じるような良さがあります。

神亀酒造 新亀(しんかめ) 純米酒

熱燗酒を特に推している『新亀』の純米酒です。酒造として熱燗を全力推ししていて、僕の中では、この華やかな日本酒が全盛の時代に「熱燗」と言ったら新亀かな〜と思っているようなブランドなんですけど、やっぱりさすがに新亀を熱燗で飲むのは美味しいです。

味噌料理が美味しいお店で寒い日にこのお酒をいただいたんですけど、味噌みたいな味の濃い料理とも合う合う。お酒と料理がマリアージュして、両方を高めてくれます。口の中で料理の風味が広がるのを、お酒が助けてくれるんですよね。良いお酒の特徴です。

車多酒造 天狗舞(てんぐまい) 旨醇

最後は天狗舞の旨醇。全体的に評価の高い車多酒造さんですが、天狗舞を冷やして飲むのはどうも僕には合わないみたいで、全ての天狗舞を飲んだわけではないものの、どうしても辛すぎて苦手という印象があります。ただし、熱燗は別!

これも寒い日におでん料理と一緒にいただきましたが、料理の味をを引き立ててくれる本当に美味しいお酒です。コスパも非常に高いと思います!

参考:
燗酒 – Wikipedia