【ワシントン=坂口幸裕、モスクワ=石川陽平】バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は7日、オンライン形式で2時間協議した。焦点だったウクライナ情勢を巡り、バイデン氏はロシアが軍事侵攻すれば欧州の同盟国と「強力な経済措置で対抗する」と伝えた。プーチン氏は「北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を排除する信頼ある法的に定められた保証」を求めた。
主要議題は緊迫するウクライナ情勢だった。米欧はロシアが隣国ウクライナとの国境付近に軍を集結し、2014年に続いて再び侵攻するとの警戒を強める。米ロ首脳の主張は平行線をたどったもようで、緊張緩和へ対話を続ける見通しだ。
バイデン氏、侵攻なら「ロシアに強力な措置」
バイデン氏は7日の協議で、最近のロシア軍の動向について深い懸念を表明した。ロシアが軍事行動をエスカレートさせれば「米国と欧州の同盟国は強力な経済的措置などで対抗する」と伝えた。一方でウクライナを含む外交による事態収拾も促した。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日の記者会見で、ウクライナへの武器供与を加速させるほか、NATOに加盟するバルト3国やルーマニア、ポーランドの軍事力強化を支援する可能性に触れた。ウクライナに侵攻すれば「東方戦線のパートナーは自国の安全に懸念を強めるだろう。米国は積極的に対応したい」と語った。
米国は経済制裁の一環としてロシアのガスパイプライン「ノルドストリーム2」を稼働させないようドイツに迫る。ロシアとドイツをつなぐ計画で、プーチン氏はドイツに早期稼働を認めるよう求める。サリバン氏は「ガスが流れるのを望んでいるなら、プーチン氏はウクライナ侵攻のリスクを取りたくないかもしれない」とくぎを刺した。
プーチン氏「NATOの東方拡大排除を」
ロシア大統領府の発表によると、プーチン氏は「NATOの東方拡大を排除する信頼ある法的に定められた保証」を求めると伝えた。ロシアはウクライナがNATOに加盟すれば、勢力圏を大きくそがれ、対立する米欧中心のNATO軍がロシアに接近して自国の安全保障が損なわれると懸念する。
ウクライナのNATO非加盟要求に加え、攻撃兵器をロシアの隣接地域に配備しないことも「保証」に盛るよう要求した。
ロシアがウクライナとの国境近くで軍事行動を活発にしているとの欧米からの批判については「ロシアに責任を転嫁すべきではない」と反発。NATOが武器の供与などを通じてウクライナへの関与を強めていることを「危険な試みだ」と主張した。
両首脳が話すのは7月の電話協議以来。米側は今回の首脳協議を受け「世界がより安全になったかどうかの最終的な基準はロシアの行動次第だ」(サリバン氏)と評価する。サイバー問題を巡る両国の対話やイラン核合意の再建なども議題になった。
プーチン氏との協議を踏まえ、バイデン氏は7日に英国、フランス、ドイツ、イタリア各国首脳と電話し、協議内容を報告した。軍事的緊張の緩和と外交復帰の重要性を確認した。米欧で足並みをそろえてロシアにウクライナ侵攻を思いとどまるよう圧力をかける。
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