教育基本法に抵触のおそれ
※視聴しました。最下部に感想を追記しました。
- 香川県立高校で衆院議員のドキュメンタリー映画を上映
- 立憲民主党小川淳也の「なぜ君は総理大臣になれないのか」
- 教育基本法に定める教員の政治的中立性に違反のおそれ
- 選挙前じゃなくても教育基本法・公職選挙法上の問題は生じ得る
- ※追記:視聴した結果⇒学校教育の課程で見せるような代物ではない
香川県立高校で衆院議員のドキュメンタリー映画を上映
【独自】出馬予定の衆院議員ドキュメント、選挙区内の県立高授業で上映…選挙権ある生徒も : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン
9月に高松市内の香川県立高校で行われた3年生の授業で、10月19日公示、31日投開票の日程で実施予定の衆院選に出馬を表明している特定の衆院議員のドキュメンタリー映画を上映していたことが、県教育委員会への取材でわかった。同校は衆院議員が出馬する選挙区内にあり、選挙権がある生徒もいる。読売新聞の取材に対し、県教委は「教材として不適切だった可能性がある」としている。
高松市内の香川県立高校で衆院議員のドキュメンタリー映画を上映したことが報道。
立憲民主党小川淳也の「なぜ君は総理大臣になれないのか」
映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」上映会のご案内 https://archive.is/0MVix
映画「なぜ君は総理⼤⾂になれないのか」上映規定 2020.9 版(魚拓)
「衆院議員のドキュメンタリー映画」「議員が出馬する選挙区内の香川県立高校」
この時点で、立憲民主党の香川1区から出馬して比例復活で当選した小川淳也議員のドキュメンタリー「なぜ君は総理大臣になれないのか」しかありえない。
実際、上映したことが地元紙で掲載されていました。
7~9月と幅の広い時期が示されていますが、読売の記事と合わせると7月に1回、9月中旬に1回、選挙権のある18歳以上も含まれる高校3年生のクラス2クラスの計70人程度に対し上映されていたようです。
なお、「小川氏の書籍に関しても、岡山・香川の民放局に対して今年8月ごろ、CM放送の依頼があった」とあるように、宣伝に力が入れられていたのが分かります。
教育基本法に定める教員の政治的中立性に違反のおそれ
教育基本法
(政治教育)
第十四条 省略
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
本件は高校での話でしたが、義務教育課程においては以下の法律もあります。
義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法
第3条 何人も、教育を利用し、特定の政党その他の政治的団体(以下「特定の政党等」という。)の政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて、学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体(その団体を主たる構成員とする団体を含む。)の組織又は活動を利用し、義務教育諸学校に勤務する教育職員に対し、これらの者が、義務教育諸学校の児童又は生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。
高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知):文部科学省
教育基本法に基づく文科省通知では以下書かれています。
5.教員は、公職選挙法第137条及び日本国憲法の改正手続に関する法律(平成19年法律第51号)第103条第2項においてその地位を利用した選挙運動及び国民投票運動が禁止されており、また、その言動が生徒の人格形成に与える影響が極めて大きいことに留意し、学校の内外を問わずその地位を利用して特定の政治的立場に立って生徒に接することのないよう、また不用意に地位を利用した結果とならないようにすること。
公職選挙法
(教育者の地位利用の選挙運動の禁止)
第百三十七条 教育者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。
日本国憲法の改正手続に関する法律
(公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止)
第百三条
2 教育者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない。
読売の記事中の『「特定の政党の情報だけを生徒に配ると、公職選挙法に違反する恐れがある』と注意喚起」とはこの部分。
教育基本法上の通知では「不用意に地位を利用した結果」になることも避けるよう求められています。
選挙前じゃなくても教育基本法・公職選挙法上の問題は生じ得る
監督は以下言っていますが…
こちらの件、我々に連絡がなく寝耳に水。選挙前の上映は問題だったと思いますが、政治を学ぶ機会が乏しい教育現場において、先生が良かれと思って紹介したのでしょう。
それにしても四国新聞は私に一切取材をしておらず、この書き方は極めて不誠実です。対応を検討します。https://t.co/b5o7wUWMze— 大島新 (ドキュメンタリー監督) (@oshimaarata) 2021年10月6日
選挙前(選挙が差し迫った時期)だったことは行為の結果の悪性を重く見る事情になるが、選挙前ではなかったからといって問題ではないとは言えないでしょう。
なぜ小川淳也を撮り続けたのか 監督 : 大島 新
これは、⻑期にわたって見つめた一人の政治家の苦闘と挫折のドキュメンタリーである。
- 小川淳也議員は衆院選に出馬をする意思を表明していた
- 衆院選が令和3年10月19日に公示されることは
- 公示されなくとも現衆院議員の任期が10月21日に満了することは確定事実
こうした状況下で小川淳也議員の選挙区内の香川の県立高校で当該議員のドキュメンタリー映画を上映するというのは不要ではないでしょうか。
今回の上映行為が選挙運動になるかは映画の内容次第ですが、監督映画の説明を見る限り、少なくとも教育基本法上の問題は生じるものと言えるでしょう。
個人的には野党議員の周辺事情をまとめた非常に面白い内容だと伺えるので見てみるのもいいと思いますが、学校教育の場面でやるのは視聴前の今の段階でも避けるべきだろうと思います。
※追記:視聴した結果⇒学校教育の課程で見せるような代物ではない
- 冒頭から最後まで小川議員に焦点が当たっている
国会質疑・後援会での演説・家族へのインタビュー、飲み会の席での会話、私生活の場面描写、映画監督による本人への度重なるインタビューを何度も挟み込む、秘書の見解を聞き出す…など - 小川議員の政策内容の紹介や選挙中の演説のシーンが映されている
- 他の議員の活動について取材したシーンは全く存在しない
※平井卓也議員の街頭演説シーンを数秒映すなどの扱いしかない - そのため基本的には政権与党への批判的な言説がベースになる(表立って強調されていたわけではないが)
小川議員がどういう考えを持っていて活動されているのかという点は分かりましたけど、これが政治家のスタンダードだということが映画で伺えるようなものではなく、専ら個人の視点に終始しており、「政治的中立性」とは真逆の内容でした。
したがって、教員がこの映画を教育と称して見せたことには底意を疑ってしまいます。無邪気に「勉強になるから」と思っていたならあまりに不注意でしょう。
なお、(立憲)民主党に対して蓮舫議員の国籍問題や安倍政権批判に終始して政策を語らないことについて批判的な発言をしているシーンもありましたが、是非とも「実行」に移して頂きたいなという感想です。
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