いよいよ9月10日(金)に公開が迫る『スーパー戦闘 純烈ジャー』。ムード歌謡グループ「純烈」が温泉を守るスーパーヒーローに変身、本格的な特撮アクションを魅せる快作は、小林幸子さんが悪の女王役、前川清さんが温泉施設内の売店店長役で出演することも大きな話題を呼んでいる。
――今回久々に特撮ヒーローの世界へと帰還という感じになりましたが、改めて『純烈ジャー』に参加することになった時のお気持ちをお聞かせいただけますか。
白川 僕が初めて戦隊ヒーローをやらせてもらったのはもう20年くらい前です。あの時にできていたものができなくなったり、画面を通してのフレッシュさとか、どうしても現役の方たちには勝てない部分っていうのがたくさんあると思うんですよ。だから『純烈ジャー』の話をもらった時、当時観てくださっていた方に楽しんでいたける作品になるのか、そんな不安というか心配がありました。
――それはヒーローの経験があるからこその不安ですね。
白川 はい、あの時小さかった子たちが持ってくれているヒーローのイメージを、大切に持っていてほしいと思っているんです。今回出たことで、「あれ? こんなものだったっけ」みたいに崩したくないなって。
――『純烈ジャー』は実在する純烈の裏の顔という設定で、その辺りも面白い部分だと思ったのですが。
白川 「地球は頼んだ。温泉は任せろ。」なんて、ふざけた宣伝文句だなって思いますよね(笑)。でも、平均年齢40歳を超えている僕たち4人が銭湯を守るという緩い感じは、まさに純烈にしかできないヒーロー像だと思うんです。そういったものはお客さんにものすごく楽しんでいただける要素だったりすると思うんですね。
――温泉の女神と合体して変身するという設定も実にユニークです。
白川 もしかしたらあの場面、純烈ファンのマダムたちがちょっと違う方向で想像してくれるところもあるのかな、なんて思っちゃいますね。
――自分たちも温泉の女神かもしれない、と。
白川 そうそう、「私こそが純烈の女神なのよ」みたいな。でも、それは間違っていないと思いますから。
――先ほどアクションに対して不安があったというお話をされていましたが、本編を観ると白川さんは完全にアクション担当でした。
白川 そうですね。『(忍風戦隊)ハリケンジャー』の5人って本当に身体を動かすことが好きだったんですよ。時間があればトランポリンを休憩時間に踏ませてもらったり、バク転や蹴り、パンチのやり方を教えてもらっていたんです。そういうところを当時のアクション監督、そして今回のアクション監督でもある竹田道弘さんがずっと見ててくれていたんです。自分で言うのも何なのですが、もしかしたらそういうところを信頼してくれてアクションを任せてくれたんじゃないかと。
――それはまた凄い話ですね。
白川 あの人は照れ屋なので、多分聞いても「そんなことないよ、馬鹿野郎」みたいな感じで返されると思うんですね。でも本当にそういう信頼関係の中で1年間作品を作ってきたので、僕の手癖なんかも多分わかってくださっているんですよ。なのに、あの時は左肩を怪我して、思うように動けなくて。
――撮影中はまだ手術前ですものね。
白川 久々の現場だし、やっぱり竹田さんの思っている立ち回りの像に少しでも近づきたい思いがすごく強かったんですよ。でも、なかなか難しくて……。
――観ているこちらは、そういうハンデ的な部分はまるで感じませんでした。
白川 竹田さんは左肩を使う立ち回りを避けるなどして、自分を光らせてくれるアクションシーンを作ってくれましたし、それをきれいに撮って編集していただいていますから。でも竹田さんの表情からは、「お前、もうちょっとできるんじゃないか?」っていうむず痒いものを感じたんですね。そしたら、去年左肩の手術の後に連絡がきて、「ごめんな。あの時、本当に痛かったんだな」って(笑)。全然信用していなかったらしいです。
――逆に言うと、白川さんがすごく動けていたからそう思われたのでは。
白川 どうなんでしょう……でも自分の中でも過去の動きの残像が目に焼き付いているもので、「あの時はこのくらい動けてた」「これくらい足が上がってた」みたいな記憶があるものですから、本編を観た時に軽くショックを受けましたね。
(C)2021東映ビデオ
――白川さんがフローデワルサのアジトへ後上さんを助けに行く場面は、小林幸子さんも現場にいる中でのアクションとなりましたが、それってドキドキものじゃないですか。
白川 そうなんですよ、小林さんの近くでジャンプしたり、ポーズをキメるシーンもあったんですが、特に小林さんのドレスがすごく長いものですから、これを踏んだたら絶対に小林さんを巻き込むことになると思って、そこは神経を使いました。
――先ほど『ハリケンジャー』の話も出ていましたが、ハリケンイエローこと山本康平さんとも旧交を温めることになりましたね。
白川 康平はすごく人に好かれるタイプで、彼が来ることで現場の雰囲気がものすごく柔らかくなるんですよ。今回彼がいてくれて、ものすごくやりやすかったです。ちょっと心が休まるオアシス的な存在でしたね。
――今回山本さんが演じたキャラクターも、場を和ませる存在でした。
白川 ただ、お芝居をすると途端に人柄が変わっちゃって……要は緊張しちゃうんです。あいつ、ワンポイントでそんなに出てこないんですけど、1シーンだけちょっとした長台詞があって、それが全然言えなくて何回もNG出したんですよ。それを見ていた前川(清)さんに呼ばれて「もうちょっとね、リラックスして。大きく言ったほうがいいよ」ってアドバイスされていました。その後やった演技も、全然変わってなかったですが(笑)。
――佛田洋監督の印象はいかがですか。
白川 初めて佛田さんに会った時のイメージは ”イケイケ” って感じだったんですが、そこからあまり変わってないですね。あと、これは勝手なイメージなんですが「カナブンみたい」ってずっと思っていて(笑)。
――茶髪とかアロハシャツの印象とかですかね、何となくわかります(笑)。
白川 だけど今回こうして『純烈ジャー』の監督をやっていただいて、改めて佛田ワールドを感じさせてもらいました。おそらくすべて計算づくだとは思うんですが、本当にくだらないことをくだけた感じで観られるのが凄いですよね。現場自体もピリピリせず、僕自身もニヤニヤしながら安心して演じさせてもらいましたね。
――佛田監督の場合、俳優の演技はお任せなんですか、それともきっちり演出する感じ?
白川 台本を読みこんで自分が提供したお芝居が監督のビジョンに合わないものだったら、「もうちょっとすんなり言ってみて」などと訂正してもらう感じです。とは言っても台本遵守というわけではなくて、読んだ時に言いづらい台詞とか「自分だったらこういう風には言わないな」っていう部分があったりすると、「言いやすいように変えていいよ」と臨機応変に対応していただいたので、ものすごくやりやすかったですね。
――実際に映画をご覧になっての感想はいかがですか。
白川 やっぱり小林幸子さんや前川清さん――ムード歌謡、演歌歌謡界の大先輩が快く出演を引き受けてくださって、ものすごく楽しんで演じてくれていたのが、本当によかったと思います。あと純烈を結成して十数年、最初の目標だった「夢は紅白!親孝行!」からたくさんの夢を叶えさせていただきましたが、主演で映画を作らせてもらうのも一つの夢でした。その一方で様々な紆余曲折や、メンバーがいなくなるなど本当にいろいろなことがありました。なので、エンドロールでスタッフさんが愛情を込めて写真で純烈の歩みをまとめてくださったのを見て、いろいろな思いがこみ上げてきました。
まだまだ「純烈って何だよ、コイツらふざけてるな」って思われている方もたくさんいらっしゃると思うんですが、この作品を通して「意外に憎めない奴らだな」みたいなものも感じさせてもらえる作品でもあるので。こういった大変な時期ではありますが、一度観ていただけたらありがたいですね。
――もしパート2が作られたとしたら、今度はどんな内容を期待しますか。
白川 シリーズものって1作目は面白いのに後が……みたいなものが結構あったりするので、そこだけは避けたいですね(笑)。
――2作目はもっとすごいアクションをやってやるぞ、みたいなところは?
白川 実は僕、そのために少しずつですが鍛え始めているんですよ。 ”継続は力なり” じゃないですが、そういったことをコツコツやっていって、もし竹田さんにまたやって頂けるなら、少しでもその要求や期待に応えられるように頑張っていきたいと思います。
>>>小林幸子さんがロングドレスで演じるフローデワルサほか『純烈ジャー』場面&メイキング写真を見る(写真10点)
純烈(じゅんれつ)
白川裕二郎
(C)2021東映ビデオ