私たちがZoom会議を利用し始めてから、「Zoom疲れ」というワードが飛び交うようになりました。。
その原因の1つは「カメラを通して常に自分の顔が映っていること(セルフビュー)」であると考えられています。
ところが、アメリカ・ワシントン州立大学(WSU)のカーソン・カレッジ・オブ・ビジネス(Carson College of Business)に所属するクリスティン・クーン氏は、新しい研究で「すべての人がセルフビューで疲れているわけではない」と報告。
Zoom会議を嫌ったり疲れたりする根本原因は、セルフビューというよりもユーザーの自意識にあったようです。
研究の詳細は、2021年11月27日付の学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されました。
目次
- Zoom疲れの原因の1つは自意識過剰な精神にあった
- 全ての人がZoom会議を嫌っているわけではなく、個人の特性の問題だった
Zoom疲れの原因の1つは自意識過剰な精神にあった
自意識(または自己意識)には2つの種類があると言われています。
1つは他者から自分がどう見られているかを気にする「公的自己意識」。
もう1つは自分がどう感じているかに注意を向ける「私的自己意識」です。
私たちの間でよく話題に上がるのは、公的自己意識の方でしょう。
この意識が高くなりすぎると、必要以上に自分がどう見られるか気になってしまいます。
例えば、髪型や服装が崩れていないか気になって頻繁に鏡を確認したり、SNSで自撮りを投稿する頻度が高くなったりするのです。
つまり公的自己意識が高すぎる人は、「自意識過剰」な人だと言えます。
いわゆるナルシスト程度であればそこまで問題になりませんが、自意識が過剰になりすぎると日常生活に支障をきたすようになります。
実際、人前で極度に緊張してしまったり、自分の容姿に全く自信をもてずにネガティブになってしまったりする人がいるのです。
そして新しい研究では、Zoom会議の好みや疲れの度合いには、この自意識が関係していたと判明しています。
全ての人がZoom会議を嫌っているわけではなく、個人の特性の問題だった
クーン氏は、Zoom会議に対する態度とセルフビューの関係を探るため、2020年の夏から秋にかけて調査を実施しました。
調査に参加したのはアメリカ各地に住んでいる80人以上のリモートワーカーとオンライン授業に移行した約350人の学生たちです。
参加者たちはZoom会議の内容や会議中の自分の感情についてさまざまな質問に答えました。
その結果、どちらのグループにおいても、自意識が高い人ほど自分の顔を見る頻度が高く、Zoom会議が嫌いだと判明。
逆に自意識が低い人ほど自分の顔を見ず、Zoom会議に対して前向きだと分かりました。
つまりセルフビューによって生じるWeb会議へのネガティブな感情は、すべての人が感じているものではなかったのです。
むしろ自意識過剰なことに原因があったようです。
一部の人々はセルフビューに映る自分の顔を気にしすぎて、疲れを増幅させていたのです。
とはいえ、これがZoom疲れの原因のすべてではありません。
またクーン氏によると、「Web会議の満足度に影響する要素はセルフビュー以外にもたくさんある」ようです。
例えば、カメラのオンオフのタイミングを自分でコントロールできる状況にあるかどうかも重要な要素となっていました。
さて、今回の新しい研究結果は、Web会議システムを利用する学校や会社にとって有益な情報となるでしょう。
Zoom会議に否定的な意見を述べる人はいるものの、それには個人の特性が大きく影響していたのです。
とはいえ、特性の違いによってひどく疲れる人がいるのも事実であり、これら個人差にどのように対応していくかが今後の課題となるでしょう。
参考文献
Not everybody hates looking at themselves on Zoom
https://news.wsu.edu/press-release/2022/01/03/not-everybody-hates-looking-at-themselves-on-zoom/
元論文
The constant mirror: Self-view and attitudes to virtual meetings
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563221004337#!