2021年のトレンドとなったフルーツサンドやフルーツ大福をはじめ、過去にも“おにぎらず”や“沼サン”“ガトーインビシブル”など、断面の美しいフードが次々と流行しました。
店頭に並ぶ、見た目にも幸せな気持ちになれる“断面萌え”するスイーツを、自分の手で作るには?「フルーツサンド王子」の異名を持つイートデザイナーの西村隆ノ介さんに、手軽にできるふたつのスイーツの作り方を教えていただきました。
「萌え断」っていったい何?
食べ物をカットしたときに出る美しい断面を楽しむことを、「萌え断」といいます。インスタグラムのハッシュタグでは20万件以上の「#萌え断」がヒットし、カラフルな食材で作ったり、模様に凝ったりした美しい萌え断フードをたくさん見ることができます。
「フルーツサンドの流行とともに、トレンドが一気に加速したように思います。フルーツサンドはお店もたくさんありますが、材料はパンとクリームとフルーツなので、コツさえわかってしまえば、ご自宅でも簡単に作ることができるんですよ。今回作るフルーツサンドは、生クリームと白砂糖を使わず、甘酒とはちみつで甘みを出しています。自分で作ると、調味料や甘さの加減なども好みに合わせることができるので、おすすめです」(イートデザイナー・西村隆ノ介さん、以下同)
焦がした砂糖がつやつやでジューシーな「キャラメリゼみかんとチーズクリームのフルーツサンド」
作ったフルーツサンドにきび砂糖をまぶしてバーナーで炙る、なんとも香ばしいフルーツサンド。今まさに旬を迎えているみかんとクリームで、甘さと酸味のバランスもいいレシピです。
「甘酒とクリームチーズを合わせたクリームは、生クリームで作るよりもずっと軽やか。スイーツや生クリームが苦手な方にも食べていただきたくて考えました。男性のお客さまや、あんまり甘いものが得意じゃない、という方にも人気のフルーツサンドです」
【材料(1人分)】
食パン(8枚切り)……2枚
みかん(小)……2個
きび砂糖……適量
〈クリーム〉
クリームチーズ……100g
甘酒(濃縮タイプ)……80ml
はちみつ……大さじ2(甘いのが好きな方は多めに)
シナモンパウダー……小さじ1/8
ラム酒……数滴
〈耳用シロップ〉
ラム酒……数滴
きび砂糖……大さじ2
【作り方】
1.クリームの材料をハンドミキサーでよく混ぜる。
常温に戻しておいたクリームチーズを甘酒やはちみつでのばしていきます。
「甘さ控えめで作っていますが、もっと甘いのが好きな方は、はちみつの量を増やしてみてください」
クリームの硬さは、スプーンですくって線が描けるくらい。「ゆるすぎるとパンを切るときにクリームが流れてしまいますし、硬すぎると、塗りづらくなってしまいます。ただ、このあと冷やすので、クリームチーズが少し固まることも見越して、とろんとするくらいに調整しておきます」
2.食パンにクリームを塗る。
食パン2枚に、それぞれクリームを塗っていきましょう。「あまり薄くなりすぎてしまうと挟みづらいので、少し厚みが出るくらいに塗っていきます」
「食パンは完全な正方形ではありません。それに、パンの耳の形をよく見ると、少し窪んでいるところがあるんです。形を合わせてサンドしたいので、袋から出したままの状態で2枚を合わせるとうまくいきます。ちなみに食パンを選ぶときは、バターの風味がしっかりしているものや、それだけで食べておいしい柔らかめのものよりも、さっぱりとしたシンプルな食パンがおすすめです。フルーツとクリームとのバランスがよくなっておいしいですよ」
3.中央にクリームをのせる。
全面に塗れたら、中央にだけ少しクリームを足して厚みを出しておきます。「真ん中は一番厚みが出る部分になるので、フルーツとパンの隙間を埋めるために、少しだけクリームを足しておきます」
4.みかんの皮を剥き、ひとつは1/2に、もうひとつは1/4にカットする。
みかんは房で分けることもできますが、包丁でまっすぐに切ってカットします。「房で分けてしまうと、若干高さが違ってしまうんです。こうしてまっすぐに切った方が、断面がきれいに見えますよ」
5.一方の食パンにみかんを並べる。
断面を美しくするためのみかんに並べ方に注目。「まず中心部分にひとつ置くのですが、ここが1/4カットにするとき頂点に来る部分です。食パンの対角線で切っていくので、その線状にフルーツを置くことを意識してください。そこがまさに断面になります」
並べ終えたら、みかんの隙間にもクリームを落としていきます。「クリームのテクスチャーが少し固めなので、みかんの間に押し込むようにして入れていきます」
6.ラップで包み、冷蔵庫で30分~1時間ほど冷やす。
ラップを正方形に切り、中央にサンドイッチを斜めに置いて包んでいきます。「斜めに置くと、使うラップが少なくて済むんです」
パンを軽く押さえたら、ラップをきゅっと引っ張りながら包んでいくと、パンとクリームの馴染みがよくなるそう。
7.耳にシロップを塗り、カットする。
耳用のシロップの材料を合わせたら、耳の部分を湿らせるように小さなスプーンで少しずつ塗り、カットします。「シロップを塗ると、パサつきがちな耳までおいしく食べられるんですよ。塗り終わったら対角線上にカットしていきます。刃がギザギザしているパン切り包丁ではなく、一般的な文化包丁の方がまっすぐに切ることができます。あまりギコギコと包丁を動かさず、押すようにして一気に切りましょう」
8.断面にきび砂糖をまぶし、バーナーで焼く。
バットにきび砂糖を出しておき、断面に砂糖をつけていきます。「バーナーで炙ると香ばしくなり、みかんの表面が少し飴状になって、よりおいしくなります」
完成
ラム酒がほんのり香る、大人の味のフルーツサンドが出来上がりました。「お酒が苦手な方は、混ぜ合わせる前にラム酒を加熱してアルコールを飛ばしてから使いましょう。バーナーがない方は、もちろん焼かないでそのまま食べてもおいしいですよ。スイーツとしていただくほか、白ワインや日本酒などと合わせるのもおすすめです」
続いて、ゼラチンで固めてできる“萌え断”テリーヌを紹介していただきます。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
りんごの模様が上品な冷たいデザート「シャリシャリりんごのテリーヌ」
市販のアイスティーを使ったフルーツテリーヌは、りんごをたっぷり使ったスイーツ。旬のりんごのおいしさと、甘いゼリーの隠し味に使ったのは、カルダモンのパウダーです。
「カルダモンはスイーツにも肉料理にも使うスパイス。フルーツと、添えた生ハム両方に合うので、ぐっと品のよい味に仕上がります」
【材料(パウンド型1本分)】
アイスティー(砂糖入り)……300ml
粉ゼラチン……10g
りんご……1個
カルダモンパウダー……小さじ1/2
生ハム……2枚
黒こしょう……適量
【作り方】
1.アイスティーを温め、粉ゼラチンとカルダモンパウダーを入れる。
アイスティーをしっかり温めたら、粉ゼラチンを溶かしていきます。「ふつふつする程度になったら、粉ゼラチンを入れて、ダマにならないようによく混ぜます。よく溶けたら、カルダモンパウダーを入れましょう」
2.りんごをスライスして、パウンド型に並べる。
りんごは、皮を剥いて4等分にし、芯を取ったら2mm幅くらいの薄さに切ります。「後々並べやすいように、切ったらバラバラにせず、そのままの状態にして置いておきましょう」
このように少しずつ広げて型に入れていきます。
並べ方のコツは、なるべく型に立てかけるようにして空洞を作ること。互い違いになるように2層目を置いていきます。「その空洞の部分にゼリーを流し込むので、あまりびっちりとさせないことが大切です。底の部分やりんごを積み重ねるあたりにもゼリーを流し入れたいので、斜めに入れていきます」
3.1のゼリー液を流し入れて、冷蔵庫で2時間以上冷やす。
急いでいるときは、冷凍庫に30分ほど入れてから冷蔵庫に移したり、氷水と塩を入れたバットに入れて周りを急速に冷やしたりすると、早く固まります。「ゼラチンは20度以下で固まるので、温かい場所に出しておくとまた溶けていってしまうものです。暖房の効いた部屋に放置していると溶けてしまうので、気をつけてくださいね」
4.固まったら切り分けて生ハムを飾り、黒こしょうをかける。
ゼリーがしっかり固まったのが確認できたら、包丁でカットしましょう。「このときもフルーツサンドと同様に、あまり包丁を動かしすぎず、長い刃を利用して奥に押しながら一気に切ります」
生ハムはくるくると巻いて添えると、お花の形みたいでよりかわいらしく盛り付けることができます。
完成
斜めに立てかけたりんごが美しく仕上がりました。生ハムのしょっぱさで、テリーヌの甘さが一層引き立ちます。「パウンド型からテリーヌを取り外すとき、もしもうまく剥がれそうにない場合は、底の部分だけちょっと温かいお湯に5秒ほど浸けてみてください。横にはナイフを入れると、スムーズに取り外すことができますよ」
家でもこんなにかわいいスイーツが作れたら、気持ちも満足できそうですよね。季節に合わせて旬のフルーツでアレンジすると、また新しいおいしさに出会えます。
【プロフィール】
イートデザイナー / 西村隆ノ介
1989年熊本県出身。にしむー食堂主宰。広告制作会社にデザイナーとして勤めたのち、フリーランスとして、食にデザインとアートを掛け合わせた活動を始める。現在は東京渋谷・恵比寿にある6curryなどでフルーツサンドを提供している他、ケータリングやイベント主催、ファッション誌『GINZA』 の公式ウェブサイトではレシピつきエッセイの連載もしている。